君、ノートを

Scene.081

 君、ノートを


 茹だるように暑い日だった。

 全てを灼き尽くす陽射しに曝されたグラウンド。渇き切った砂。一面の青空。汗に塗れながら蹴り出すボール。それは綺麗な放物線を描き、空のゴールネットへと。

 茹だるように暑い日だった。

 蒸し風呂のような午後の教室。カーテンを揺らす風。溢れる様々な音たち。汗と戯れながら吹くフルート。それは綺麗な音色を響かせ、開け放たれた窓へと。

 茹だるように暑い日だった。

 グラウンドに響く声。学舎に響く音。互いに励まし合い、明日へと繋がっていく。揺れるゴールネットが、振動する大気が、躍動する鼓動が、それら全てが夏だった。

 ――ガンバレ。

 その言葉に僕らは夢を奏でた。それは叶わね夢でも、あの頃は、いつか叶うと信じていた。


 これにて、了。

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