悪魔の唇
Scene.080
悪魔の唇
「何にする?」
「アールグレイ。冷たいやつ」
「あら、珍しい。ピューリタンに改宗でもしたの?」
「気がついたんだ」
「ポリフェノールの素晴らしさに?」
「いや、楽に大量殺人ができる方法さ」
航空管制官という職業は、実に多くの人間の人生に指示を与えている。上昇か下降か、右旋回か左旋回か、待機か、着陸か。
では、彼らが故意に間違った指示をしたらどうなるだろう? 空港周辺の過密空域で旅客機同士が空中衝突したら? 住宅街に降り注ぐ機材と人体の残骸、それはもう大惨事だ。ユーバーリンゲンでは六十九人、ニューデリーでは三百四十九人、テネリフェでは五百八十三人……。
「あなたがその席に座ってなくて心底良かったと思うわ」
「同感だ。僕は悪魔に勝てない」
悪戯っぽく笑って、彼はグラスを持ち上げた。
これにて、了。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます