神託

Scene.022

 神託


 花占い。

 なんてロマンチックな響きでしょうか。とても無邪気で、少し残酷だけれど、その儚さこそが子どもらしさを引き立たせている。

 あの頃の私たちは、どうして意味もなく、毎日ワクワクしていたのだろう。

 いつしか、その時の感動は失われて、無意味な時を生きて仕舞う。そう、大抵の人間は十年間の同じ人生を送って仕舞う。そんな変わり映えのない時の経過なんて、楽しいのだろうかと私は嘆いた。

 では、十分後の未来に、全てを……、そう、自らの生き死にを賭ける人生は、なんと刺激的でしょうか――

 その女は、牡丹一華アネモネの花弁をひとつひとつ抜き取りながら呟き続ける。

 彼女の目の前には、椅子に縛られた女の姿。

 ――この花片が全て無くなるまで、どうか楽しんでください。

 この世界に、命を賭けることほど、刺激的なことはもう残されていないのですから。


 これにて、了。

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