踵、踏んづけて
Scene.020
踵、踏んづけて
冷たい空気が朝を飾る。夜明け前の薄暗い街。鳥の声も聞こえぬ朝。聞こえるのはアスファルトを蹴る靴音のみ。
何処までも続く下り坂を二人の男が駆け抜ける。両脇には千紫万紅の屋根が並んでいた。息を荒げ、彼らの双眸は、この坂の下へ。タン、と大地を蹴って。トン、と着地する。
海を臨む街の、真ん中、下り坂。その向こうには暗い海。ひたすら遠くへ遠くへ、と。二人の男は足を出す。地面を強く蹴って高く跳ぶ。大気に包まれる時間が長くて、飛んでいるような感覚を二人は覚えた。風に靡く髪も、開けるシャツも、解けた靴紐も気にせずに、もっと高くと更に強く蹴る。
「何処まで行くんだ!?」
「行けるとこまで!」
履き古しのスニーカー、踵踏んづけて。
これにて、了。
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