ぼくらは万有のうちへと旅する夢を見る

Scene.018

 ぼくらは万有のうちへと旅する夢を見る


 「僕は世界の真相を知っているんだ」

 神妙な顔で、深刻そうに彼は語り出した。

 僕たちの『居る』世界は、こうして――彼は包帯の巻かれた手首を見せながら――、痛みも実感も質量も感じられるくらいリアルだけれど、本当の僕たちの世界は、『此処』よりも発展していて無機的なんだ。そこがあまりにも殺風景になりすぎて仕舞ったから、僕たちは有機的な夢の中に、旧時代的な、人間的な生活を求めた。

 じゃあ、本当の僕たちが『在る』世界はどんな世界だろう?

 そこには、生命維持装置みたいな色んな管が生えている機械に繋がれた生首が、ずらり、と並んでいるのさ。個性的で無表情な彼らが、幾つも、幾つもね。

「君は見たのかい?」

「ああ。だから、ここにいる」

 ――ところで万有とは、ぼくらのうちに在るのではないだろうか。


 これにて、了。

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