静かの海
Scene.017
静かの海
香水の匂いと、煙草の煙と、酒臭い息で散らかった雑多なナイトショーのステージに彼は立った。そこで彼はお得意のロックの神様の真似をする。勿論、口パクだ。客は彼のことなんかお構いなしにぬるいビールを飲んでいるか、ぶよぶよのソーセージを切っているか。彼の芸なんて前座のジャズバンドの演奏と相違ないものだった。
今、この国はベトナムの泥沼を這い回る数十万の息子たちよりも、月面に居るたった二人の男のことを心配しているんだ。
どれだけ騒いだってラスベガスの喧騒も、ブロードウェイのスポットライトも、ここまでやって来ない。そもそも、それそのものが虚構で、彼らはインチキをするのが少し巧いだけなんだ。
「くだらない人生だろう?」
――でも、みんな同じさ。
これにて、了。
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