ジャック・ザ・クラウン

Scene.015

 ジャック・ザ・クラウン


 三面鏡の前に立ち、ゆっくりと僕はリボルバーの撃鉄を起こした。

「早まるなよ、ジャック」

 細身の男が嘲笑する。「そうだよ、スタンリー」

 引き金に架けた指が震え始めた。骨みたく細く白い指が、カタカタと。そして、糸の切れた操り人形の様に男が膝を折り、床に手をつく。

「黙ってくれ。頼むから。今は黙ってくれ」

 彼を見て、二人が大声で嗤った。

「意気地なし」

 口々に罵る。「オカマ野郎」「間抜け」

 二回、銃声が響いた。嘆くように男は頭を抱えた。

「何だこれは!」

 その日から彼らは人を殺し続けている。幾人も、幾人も、殺し続けている。彼らの顔を浮かべ続けている。真相は向かい合わせの鏡の中。白い皮膚と赤い鼻に覆われている。


 これにて、了。

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