華鳥風月雪月花
Scene.014
華鳥風月雪月花
春雨から、五月雨、梅雨へと。水滴が落ち、揺らす水面。幾重の波紋を描き右往左往。忙しく水鏡を渡る。瓦を叩く雨音に瞳を閉じ、女は三味線を鳴らした。静寂に溶け込む旋律。黙々と。蝋燭の焔はゆらゆらと。
漆黒の単衣に咲く八重桜。艶色椿は何処へ、と。
鳥に訊くも答は返らず、騒がしく囀るのみ。響く三味線、儚く雨の音。
諸行無常の響きは何か、と。風に揺れる木立はざわめく。
風に訊け、と瞳を伏せ、鳴らす三味線。さめざめと雨の音。
月の出ない夜はこんなにも退屈なのか、と臥待ち眠る。
ならば、せめて雪でも、と。想いを馳せる夏模様。しかし、天に願いは届かない。障子窓の外は雨。宵闇に濡れる紫陽花、首を揺らして。
雨音の中に響く三味線、宵闇へ。
これにて、了。
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