ボヘミアの醜聞

Scene.013

 ボヘミアの醜聞


 近頃、ローティーンの少女が殺される事件多くない?

 座るや否や、彼は注文もせずに訊いた。

「オーダーは?」

 ああ、と思い出したように彼は言って、「コーヒー、アメリカン、アイスで」

 彼が語るには、彼女たちはタイムスリップしてきた“元カレ”に殺されているらしい。自分の恥ずかしい過去を抹消したいのだろう、とわらう彼に、「経験があるの?」と訊く。

 ああ、と彼は頷いて、「小さい女の子を殺すと癖になるんだ。かわいいし、やわらかいし、身体も小さいから扱いやすい。始めは復讐心に駆られていただけの“元カレ”達も、いつしか少女を殺す快楽に抗えなくなる。そして、繰り返す」

「私も気をつけなくっちゃ」

「君は……、大丈夫だと思うよ。彼女たちから見ればオバサンだ」

 苦笑して、カップに口付けした。

 意外と、失礼な奴だ。


 これにて、了。

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