九月の花嫁
Scene.012
九月の花嫁
本当に。
「本当に綺麗だよ」
光に溢れたチャペルの中、純白に染まったウェディングドレスを纏う彼女を見つめて感嘆の吐息を漏らす。
最高傑作だった。
同時に、長年の研究が身を結んだ結果だった。彼女の白い肌に映える葉脈じみた青い血管も、みずみずしい葉の様な黒い髪も、形の良い枝の様な白い指先も。来る日も、来る日も、植木鉢の中の彼女に語ってきた、彼の夢の、それはまさに生き写しなのだ。
「さあ、僕の花嫁。行こう」
花嫁に手を差し出す。にこやかに、彼女は応えた。
はっ、と。彼は背後に気配を感じた。振り返る。誰もいない。
不意に耳元で声がした。
「また知らない子のこと家族って言った」
ケタケタと女が笑いはじめた。
これにて、了。
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