眼球の観る夢

Scene.006

 眼球の観る夢


 複雑な構造の脳に人格が宿っているのであれば、肉体を入れ替えたとしても、その物体は個人のアイデンティティを保持しているのだろうか。

 それが最初の疑問だった。

 人間の脳を、人工的に生成したCSFに浸し、神経系を電極に繋いで、自由に意思の伝達が可能な状態にした場合、その機械と人間の混合種キメラは、果たして人間だと認識して良いのだろうか。

 様々な機械に繋がれ、透明なガラスの容器の中に脳が浮かぶ光景は、想像の中でさえ、何とも美しい。そんなものが実際に目の前に存在したのならば……、手元のスイッチひとつで目の前の“それ”に死を与えることができるという圧倒的な優越感が味わえる。

 この非現実的な夢が目の前に具現化するのであれば、私は神になりたいと願った。

 目が覚めて、紅茶を淹れる。ソファに座って、私は“それ”に声をかけた。

「おはよう」


 これにて、了。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る