VOL.5 底知れぬ実力


「鉱山内はコウモリのような黒く見づらい動物や魔物が出ますので私が先行しますね」

「まかせた。俺ではそういうのは対応しきれないだろうからな」

「はい、任されました。では探査魔法(ソナー)を使いながら行きますので動く物が見つかったら声を掛けますね」

「そんな魔法が使えるのか。では頼む。俺は壁に埋まっている金属や宝石を見つけることに尽力しよう」


 エリーのおかげで魔物の奇襲もほぼなくなることになり、俺はミスリル探索に精を出すことにする。

 ただ鉱山内の金属や宝石がどこにあるのか分からないので、少々癪だが竹田の知識を拝借する事にしよう。

 どうやら宝石類は1度見つかった場所に固まっている事が多いとか。ならば1度掘られた場所を見つけ、そこを再度掘る事にしてみようか。


「少々薄暗いな。所々このランタンみたいのはあるが、よくこれで作業をしているものだ」

「そうですね。ただずっと暗い所にいると夜目が効く様になるので、坑夫達は気にならないのかもしれません」

「そうか。なら俺達も慣れるまで待つか」

「はい。ただ実は光魔法を使えるので明かりにする事は出来ます。でもそれだとハリスの為にならないので、今はこの明るさのままいきましょう」


 どうやらエリーは俺の為に光魔法で明かりを出す事をしないでくれていたようだ。確かにこういった場所での作業や戦いを経験しなければ後々厳しくなるだろう。そういった意味も込めて俺の成長の為に魔法を使わずにいたようだ。

 随分と出来た相棒だな。最初は僕(しもべ)としか見ていなかったが、今では立派な相棒である。俺の分身が入っているのだ。どちらが上とかはないであろうが、それでも最初は下に見ていた。だが実際にエリーと行動を共にしていると、やはりこの世界の知識を持った存在と言うのはこの上なく心強い存在だ。

 本当にエリーの体を手に入れてよかったと思える。これが竹田のような奴だったら速攻殺しているだろう――おっと、そんな奴の事はどうでもいいか。今はミスリル探しに全力を注ごう。


「ここなんかはどうだ? 1度掘られた場所からまた出やすいらしいが」

「そうですね。では掘ってみましょうか。私がやりますか?」

「いや、最初は俺がやろう」


 魔法でやれば早いのだろうが俺も色々と経験を積まないとダメだろう。ならば今回は俺が壁を掘る事にする。

 まずは右腕を変形させる。もはや俺の体になっているミスリルの腕だ。形を変えることなど造作も無い。

 徐々に右腕を変形させスコップのように形作っていく。そしてその先端を刀のように鋭く土や岩さえも切り裂くほどに尖らせていく。

 そして準備が出来たら壁に向かって打ち据えるように叩きつけていく。


 それはまるでプリン――とは行かないが、それでも土や岩の感触では無いほど軽々と掘り進めて行く事が出来る。成果は上々のようである。

 だが金属ならばいいが宝石を切り裂いてしまっては意味がないので大胆であるようでより繊細に掘り進めて行く必要がある。


「なかなか出ないものだな。かれこれ数十分は掘っているぞ」


 そう、掘り進めるのは楽なのだが、全くと言っていいほど成果が上がらない。出てきたのは宝石だかなんだか分からないような小さな欠片1つのみだ。


「そりゃそうですよ。そう簡単に出てきたらそこら中に坑夫がいるはずでしょう」

「確かにな。ならば根気勝負といったところか。どのくらい鉱山内にいる事が出来るのだ?」

「そうですね。確か3日ほどだったと思います。その頃にまた馬車が来るようです」

「ならば坑道内で寝食をしながら3日間ミスリルを取り続けようか」

「はい、食料もポーチにたんまり入っていますので、そうしましょう」


 次の馬車が来るまで坑道内で金属類や宝石類を掘り続ける事に決定し、また違う場所へ向かっていく。


 これをかれこれ10時間以上は続けただろうか。

 もはや体がクタクタになり、ミスリルの右腕がかなり重く感じている。歩くのも困難になってきた。


「そろそろ夜食にしましょうか。結構掘りましたからね」

「そうするか。もう右腕が重くてかなわん。少し休憩だ」


 そう言い、少し休もうとしていると何かを切り裂く音がした。すかさず右腕を盾のように薄く広く伸ばす。その瞬間、――カン―― と、軽い音がした。

 足元を見てみると、どうやらコウモリのようだ。敵意はなくただ飛び去ろうと思ったのだろうが、運悪く俺の腕に当たったといった所か。


「メシが向こうからやってきたな。これは食えるのだろう?」

「ええ、寄生虫やウィルスを除去すれば焼いて食べる事が出来ます」

「やはりこちらの世界もそうか。ハリスがいた地球では、コウモリはSARSとか言う病の病原体を持っているのではないかと言われてたな」

「こちらの世界も原因不明の病や不治の病といった物が多数ありますので、そこら辺は気をつけたほうがいいでしょう」

「そうか。ではこのコウモリはどうやって処理するのだ?」

「はい、私の光魔法で消毒してから食べましょう」


 光魔法で有害なウィルスや毒素、そして寄生虫といった物を粗方(あらかた)除去できるという。あとは加熱処理をすれば問題なく食べられるとか。

 結局食べるのねと思いながら、いざという時はエリーが何とかしてくれると他力本願に思いつつ夜食を食べていく。

 思いのほか疲れていたのか、あまり量は食べられなかったが、野生の動物や昆虫は栄養素が高く、少量でも事足りるのでコウモリを食べたのは正解だっただろう。


 こうして夜食も終わり一休みする為、エリーが結界を張り、2日目に入るのだった。

 残りは今日と明日。その間になんとしてもミスリルが欲しい所だ。



「おはようございます。疲れは取れましたか?」

「ああ、おはよう。どのくらい寝ていた? 8割方は回復したのではないかな」

「そうですね、4時間から5時間ほどでしょうか」

「そうか。もう動けるからそろそろ行くか?」

「ええ、朝食はサンドウィッチです。歩きながら食べましょうか」


 エリーに起こされ朝食を渡される。よく出来た奴だ。

 まだ疲れは残っているが大した事はないので、さっそく朝食を歩きながら食べる。昨日の成果はちっぽけな黒っぽい宝石の欠片1つだけだ。

 今日はもっと取ると気合を入れ慎重に坑道の壁を目を皿のようにして見ていく。

 所々、堀りながらなんにも見つかる事なく数時間。ようやく数個ほど一気に宝石が出てきた。


「丸一日半探してようやく出てきたな」

「そうですね。これが貴重な宝石だと良いのですが」

「そうだな。ここら辺はまだ出そうだ。もう少し探してみるか」

「はい、そうですね」


 2日目に入ってからは2人で一緒に掘り進めるか、別々の場所を探す事にしている。

 敵がいないわけではないので、あまり離れないようにしながら、離れていて敵が出た場合は心話で意思疎通を図りながら対処していく。

 そうしてようやく出た宝石だが、透明で輝いている為、一瞬ダイヤっぽく見えたが、なんだか偽物のダイヤっぽい輝きだ。期待できるかは分からないが一応持っていくとしよう。


 また数個出たがこれ以上は期待出来ない為、場所を移しまた壁を掘り進めて行く。

 ああ、そうだ。エリーはどうやって掘っているかというと、土魔法が使えるので壁を砂のようにしながら掘っている。それを風魔法で軽い砂を飛ばしながら、残った物を見ているようだ。宝石や金属は砂よりは重いからな。意外と頭を使っているようだ。

 だが成果は思わしくなくほとんど空振りに終わっている。


「ほんとに廃坑前って感じの鉱山だな。ほとんど何も出ない」

「ええ、ほんとうに…… 廃坑になりそうなのも頷けます」


 二人で愚痴りあいながらも手は動かし続ける。

 だが大した成果もなく2日目も終わろうとしている。


「そろそろ休むか。今日も大した成果が出なかったな」

「ええ、この依頼失敗だったかもしれませんね。最後の1日に掛けるしかないでしょう」


 まだ失敗だとは思いたくないが、心の底では明日もまた……なんて思っているが、やるべき事はやろう。それで失敗であれば仕方ない。

 そう思いつつ寝床につくことにする。


 翌朝、と言っても坑道の中にいる為、陽の光は無いが、ずっと薄暗い所にいると気分が滅入る為に、エリーが光魔法を使って自分達の周りだけを明るくする。

 それだけでもだいぶ気分が違うな。


「では行きましょう。今日は少し奥まで行って広範囲に魔法を使ってみます」

「ああ、やり過ぎないように注意しろよ。あとは帰る時間も考えないとな」

「ええ、そこは抜かりなく」


 ふと疑問が出たが、まぁエリーの事だ。大丈夫だろう。

 こうして最終日の発掘作業が開始された。




「ようやく金属が出てきたな。直径5cmほどの丸っこいが小さい物だな。これはなんだ? 綺麗な銀色をしている。まぁ売るときに聞いてみるか。ミスリルではないだろうが、もし魔力を吸収する性質を持っていたら売らないでおこう」


 こちらの成果は昨日よりはマシだ。だがエリーはどうだろう。先ほど坑道の奥底へ行った時は音が聞こえていたが、今は全く聞こえなくなっている。

 まぁ何かあれば心話で何か伝えてくるだろう。気にしないでこちらも掘削に集中するか。


 昼食はマジックポーチに入っているので取り出して食べる。簡単な物だが黒パンに焼いたチキンのような肉、それにレタスのような野菜にドレッシングが掛かっている簡素なものだ。少し甘酸っぱいドレッシングだな。

 パンが固くパサついているので少し水に浸(ひた)してから食べる。こうするとあまり美味しくはないのだが仕方ない。喉が乾いてしまうので味よりは体調を整える事を優先したい。


「あともう一踏ん張りだな。右腕以外は金属融合も何もしていないので、さすがに疲れてきたな。ただ右腕だけは疲れない。魔力があるおかげだろうか? まぁ、あと数時間で馬車が来るだろう。ならば休んでいる暇はないな」


 昼食をすぐ食べ終え、また新たな場所へ掘削しに行った。あまり納得のいく成果は出てないが気落ちしている暇はない。そう思いながら体の疲れを無視しながら、また酷使していく。

 だが疲れからか集中力が落ちてきた所でエリーから心話が入った。


「(ハリス、聞こえますか?)」

「(ああ、聞こえている。どうした?)」

「(そろそろ時間かと思いますのでこちらに来て貰えますか?)」

「(ん? なぜわざわざ深い所へ行くのだ? 帰るのだろう?)」

「(ええ、帰りますのでこちらへ来てください)」

「(何するか分からんがわかった。そちらへ行く)」

「(はい、今ハリスのいる場所から奥へ行けばいいだけですので。明かりを点けておきますから分かると思います。)」


 なぜ入り口から遠ざかるのかと思ったが、まぁいけば分かるか。考えても仕方ない。もうそろそろ体も動くのが限界に来ている。入り口に行くよりかは近いから余計な事を考えずさっさとエリーの場所へ向かうとするか。



「エリー、来たぞ」

「お待ちしてました。そちらの成果はどうですか?」

「ああ、あまり良い結果とは言い難いな」

「そうですか。私もあまり良くはないですね」

「そうか」


 数十分ほど歩き、エリーの元へ辿り着いた時は疲れ果てていた。そしてお互いの成果を聞き、どちらも似たような物といった感じのようだ。

 それよりこれから一体どうやって馬車のある所まで行くというのだろうか?


「では帰りましょうか」

「帰るのはいいが一体どうやって帰るというのだ?」

「はい、こうやって帰ります」


 そう言うと魔法を使い始めた。

 それは土魔法。壁に向かい使うと斜め上へ向けて人一人が通れるほどの穴が見えなくなるまで出来ていく。

 まさかこんな方法で地上へ帰るとはな。随分と大胆なやり方だ。まだ魔法の使えない俺からすると考え付かなかった方法だ。


「では帰りましょうか」


 かなりの魔力を使ったであろうに、事も無げにそう言ってきた。

 それを聞いてみると「魔力量が倍になったので」と何でもないことのように言い放った。

 俺はこの世界の魔力の事をあまり知らないので何とも言えないが、単純にB級の冒険者だった者がいきなり魔力が倍になるってのは、相当凄い事ではないのだろうか? ただ俺の分身と呼べるものがエリーの体に入って、エリーの眠っていた力が覚醒したと言っていたから本当の事だろう。


「しかし倍になるか…… どれだけの才能があったのだろうな」

「はい? 疲れましたか?」

「ああ、疲れた。だがもう少しくらい動けるさ」

「ええ、もう5分も行けば地上に出られますよ」


 小さく口から言葉が出ていたようだが聞き取れなかったようで、エリーの問いにそのまま答えておいた。改めて聞く事でもないからな。


 そして鉱山へは上から入り下へ下へと進んでいたから今度は上りになる。なので上る方が疲れるが、あと5分ほどならなんとかなるだろう。

 しかし硬いはずの坑道の壁を事も無げに穴を開け続けるのはまだ分かる。

 だが開けた穴をまた塞いでいるのは何とも言葉が出ないな。これ魔力消費が半端ではないだろうに。

 理由を聞くと穴を戻さないと崩れる可能性があるので戻しているとの事。

 ほんとどれだけのポテンシャルがあるんだかと思わずにはいられない。

 まぁメリットしかないんだ。深く考えても仕方ないな。


 そう思っていると、ふいにエリーの足が止まる。

 どうしたのかと思っていると俺の目でも何かがいるのが見えてきた。


「どうやらトカゲのような魔物を起こしてしまったようですね」

「ああ、なんだあの魔物は?」

「わかりません。ただそこそこ強いようですね」


 エリーがそこそこ強いという。ならば俺が命を掛けるほど強いという事だ。ここは暗く狭い。仕方ないのでエリーに任せるとするか。

 と思っていたがそれはエリーも承知の上だったらしく、すでに攻撃を開始していた。


 それは人の倍はあろう、全長4mほどの大きなトカゲ、その顔を水の球で覆っていく魔法だ。

 その先制魔法にトカゲは苦しそうに暴れるが、顔に吸着しているその水球は一向に離れる様子はない。

 なんだ、あっけないなと思っていると、その水球が少し膨れ上がった。

 ――と思った瞬間、俺たちの目の前の坑道の穴が真っ赤に染まった。


 ――やばいっ!――


 そう思ったがエリーは落ち着いたものだった。


「ただ炎を吐いただけですか。芸のないことで」


 そう言うや否や、こちらも負けじと水の息とでもいうような水流で、炎の息を押し返しその勢いのまま、トカゲの魔物を吹き飛ばしていく。

 そしてその水をトカゲに纏わり付かせ大きな水球となる。


「随分とすごいものだな」

「これくらいならどうという事はありません。魔力消費が少し多い程度ですね」


 そう言うとトカゲをこちらへ引き戻してくる。

 一体どうするのかと思っていたら、手を目の前にかざした。

 すると水の中で暴れていたトカゲが急に苦しみだした。呼吸が苦しいという暴れ方ではない。何か締め付けられるような……と見ていたら綺麗だった水球が急に朱い色で染まった。


「何をしたんだ?」

「ただ水球を小さくしてるだけですよ」


 それは水球を押し潰しているというのか?

 ならその中にいる者がどうなるか、想像に難くないな。


 その想像通りに全長4m近くはあろう大きなトカゲの体が所々裂けてきている。そこから染み出した血で水球が赤く染まっているのだろう。

 そこからは見るも無残なほどの光景だ。


 ただでかいだけのトカゲはまた炎を吐く事も出来ずにその体を半分程まで縮めた所で真っ赤に染まった水球からようやく解放された。

 もちろん解放されたという事はすでに事切れているという事だ。

 そしてその水球を何やら操作しているエリーに向けて疑問を投げかけた。


「その血の入った水球をどうするつもりだ?」

「ええ、これはドラゴンの血なので売れるかと思いまして」

「……今なんと言った?」

「え? 売れるかなと思いまして」

「その前だ、その前」


 何を言ってるのでしょう? とエリーが小首を傾げる。

 いや、こっちが何を言っているのかと言いたい。

 こいつドラゴンと言ったのではないか? 何でもないことのようにドラゴンと言いやがったぞ。

 あのでかいトカゲはドラゴンという事か。数十メートルもあるわけじゃないがドラゴンはドラゴンだろう。それを焦りもせず(めんどうな……)てな具合にあっさり瞬殺するのか……


 一体エリーの強さはどのくらいなのだろうな…… 俺では想像もつかん。


「とりあえずドラゴンは低級でも素材はそこそこの値段で売れますので、剥ぎ取っていきましょうか」

「ああ、ドラゴンだもんな。そりゃ売れるだろう」


 少し皮肉で返してみたが全く通じていなく、飄々(ひょうひょう)としている。

 大した奴だよほんとに。


 トカゲ、もとい、この低級だが立派なドラゴンは、ある程度縮んでしまったので、肉や骨がボロボロになっていたが、革と牙や爪が高く売れるから問題ないらしい。むしろ肉は美味しいので自分達で食べようと言って来た。

 肉もほんとうはそこそこの値段がするようだが、3日も坑道に籠(こも)っていて、あまり美味しくない食事をしていた為、自分達で食べようという提案に一も二もなく頷いた。


 それからドラゴンの素材を剥ぎ取りある程度処理が完了したら、また地上へ向けて歩いていく。

 しかしこのドラゴンは赤かったのだな。暗かったので良く分からなかったが革の色が真っ赤だった。水球に捕らえられていた時はそこまで色がわからず、血で染まっていったのでさらにドラゴンの色が分からなかったが、なんとも綺麗な色をしている。

 低級のドラゴンのようだが、この革は需要があるだろうと思わせるくらいにはいい質感と色だ。正直使いたいが使い道がないので売ることにしよう。


 そう考えて歩いている内に上のほうから光が見えてきた。今までは足元を照らす程度の明かりだけだったが、今では外から光が漏れてきている。


「邪魔な者が居ましたがなんとか夕方までに出て来れましたね。牛車はすぐ近くへ来るでしょう、管理者の所へは私が行って来ますね」

「ああ、よろしく頼む。俺は体がそろそろ限界だ」

「こちらへ来てまだ数日ですからね。これから魔力で身体強化も覚えていきましょう」

「そうだな。まずは帰ったらミスリルを買い込み体中を少し作り変えるか」


 息切れもないエリーは自分にブースト・アップを掛けていたからこのくらい何ともないと言った感じで元気いっぱいだ。

 しかし俺はそんなもの使えず、ブースト・アップを掛けてもらったが一定時間経つと効果が切れてしまうので、今度からは自分で出来るようにしなければな。


 それに今回の目的であるミスリルは全く取れなかったが、多少なりとも宝石や金属類が取れたのでそれを売って資金にし、ミスリルを買う予定だ。


 そして少し待ってエリーが来るのを確認しつつ牛車がいつ来るのかと一緒に待つことにする。管理者にはドラゴンの事を伝えなかったとか。滅多に出るわけではないので、もういないだろうから大げさにすることも無いだろうとの事。

 俺にはもう出るか出ないか分からないので口を出す事ではないな。


 そして待っている時間を使ってお互いの成果を見せ合うことにした。先ほどは口で伝えただけなのでどのくらいかは正確には分かっていなかった。まぁミスリルが取れてないことは知っていたが。


「私の成果はこのくらいですね」


 それは俺の数倍、いや数十倍はあるだろう様々な宝石や金属類が出てきた。

 なんだその量は……と絶句したが素晴らしい成果じゃないか。これを売ればある程度のミスリルを買う事が出来るだろう。実に楽しみだ。


「俺よりかなりの量があるな。大したものだ」

「ありがとうございます。ですが価値が高いかどうかは私ではわからないので、どれだけ期待できるかは分かりません」

「まぁそれは後のお楽しみでいいだろう。これだけあればそれなりに期待できるだろうしな」


 俺も成果を見せたがエリーが気になるのは黒っぽい小さな宝石だとか。俺には何の価値もなさそうに見えるな。

 それより牛車がそろそろ来そうだとエリーが伝えてきた。探索魔法(ソナー)で捉えたのだろうか? 俺も使えたら便利なので帰ったら練習してみようか。


 ようやく牛車が到着して2人で乗り込み、移動1日、鉱山の警備1日、そして鉱山内の掘削を3日と、約5日の旅は終わりを告げた。

 ただここからまた半日以上も牛車に乗るのは気が滅入るな。これは何らかの移動方法が欲しい物だ。魔法を扱えるようになったら色々と考えてみるか。


 こうして約6日ぶりにラフレイトへと戻ってきたが、すぐに宿へ行きゆっくりと休むことにしたのである。

 起きたら取ってきた物を売りに行こう。どのくらいになるのか楽しみだ。期待が膨らむのを抑えながら俺はゆっくりとベッドに身を任すのであった。

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