2話 冒険の始まりと戻り
「あああ~~~~~~!!!! っっと?」
目の前が真っ暗になって空から落ちるような感覚になったから、しぬーーーっと思ってたら、普通に大地に立っておりました。
大声出して恥ずかしい……
気絶して目覚めたわけでもなさそうだしなぁ、転移だから一瞬でここにパッと移動した感じかな?
「しっかしここどこだ~? 辺り一面が麦畑みたいだな」
普通って言っちゃなんだが草原とかに降り立つのかと思ったら、周りは俺の身長(180cm)くらいある麦? だらけの所に降り立ったみたいだな
「麦? だらけで周りがなんも見えねぇな、てかでけぇなこの麦っぽいのは」
日本でここまででかい麦は見たことないな、トウモロコシとかなら身長超えるくらいになるんだろうけど。
「とりあえずこっから出るか、どこ行きゃいいのこれ……」
周りが一切見えないもんだから麦を掻き分け掻き分け脱出を図る。
「すんごい邪魔なんだけどこれーー! いつまで続くんだよ……」
かれこれもう10分以上掻き分け歩き続けてる気がするぞまったく……
と思ったら、一気に麦がなくなったぞ。
「おっ? ようやく抜けたか~……つっかれた~~!」
普通に歩くんじゃなく掻き分けて歩くのがこんなに疲れるとは思わなかったわ。
さて、ここはどこなんだ? 辺りを見回しても麦畑、しかもどこまでも地平線の如く麦畑が続いている。
「おいおい神様よ、普通は近くに町か村があるとこに転移しないかい……?」
場 所も方角もわからずどうするか悩んでると、
「お~い、無事着いたようじゃな」
「うお!? ラウル様!?」
「うむ、創造神のラウルじゃよ」
いきなり目の前に創造神のラウル様が現れた、あれ? でもなんか存在というか実体が無い感じだな、まぁいいや。
それより・・・
「ちょっとラウル様! どこに転移させてんですか!」
「いやすまんすまん、ちょいとな、急いで飛ばしたもんだから地理確認しとらんかったわ、ワッハッハッ」
こ、こいつ……ぶん殴ってやろうかしら……
「怖いこと考えるんじゃない! まったく……」
「あなたがそうさせてんでしょうに」
「悪かった悪かった、それでじゃ、ちょいとそこの世界の知識を与えるの忘れてたんでな、教えようと思うてのう」
「え? まだ教えてもらってなかったんですか?」
「うむ、まだだったんじゃ」
このじじいめ……
「ええのかな? そんなこと言ってしまって?」
ナチュラルに頭の中覗いてるし、脅してくるし……こんなのが最高神でいいのかしら……
「ええんじゃよ、ワシの部下たちは優秀じゃからのう、まぁ髭(ひげ)を引っ張ってくるやつもおるんじゃがな」
「え? 髭(ひげ)?」
「なんでもない、なんでもないぞい」
「はぁ……まぁ聞かないでおきますよ」
「うむ、それがよいぞ、それでじゃ、その世界の何が知りたいんじゃ?」
「え? いちいちこっちから聞くんですか?」
「そりゃそうじゃ、その世界の知識全部やったら何でも出来てしまうじゃろ」
「いや、別に全部教えろとは言ってませんよ」
「そりゃそうじゃ、しかし一部だけ教えても足りなかったりしたら二度手間じゃからな」
「まぁそうですけど……」
一般常識だけ教えてくれりゃいいんじゃないのかこれ?
めんどいな、いちいち聞くのって。
「じゃあ面倒くさいので、今いる国と近くの町か村の名前と、あとは通貨と、あとは……あ! 魔法が使えるかどうか教えてください」
「うむ、よかろう、まずはそこの国の名前じゃな。その国はランディクル王国じゃ、一番近いのはリュッベルソン村じゃな。ここから北に位置しておるぞ、国としての大きさは1番人口が多いはずじゃ。そして村とは言っても町と言ってもいい位の大きさがあるぞい」
ほうほう、周りが麦畑だらけでど田舎っぽかったから、いい情報聞けたなこりゃ。
「それとここは人間が多い国じゃ、この世界のいい所は種族間の差別があまり無いとこじゃな。まぁ仲が悪い国々もあるが、それは種族どうこうよりも欲の問題じゃな」
「なるほど、差別が無いのはいい事ですね」
「そうじゃのう、めんどうな問題が少ないのはいい事じゃ、次は通貨の話じゃな」
と、通貨の話をしてくれた。
通貨の価値としては、
龍金貨=100,000,000ゴルド(1億)
白金貨=10,000,000ゴルド (千万)
大金貨=1,000,000ゴルド (百万)
金貨 =100,000ゴルド (十万)
大銀貨=10,000ゴルド (1万)
銀貨 =1,000ゴルド
大銅貨=100ゴルド
銅貨 =10ゴルド
小銅貨=1ゴルド
となっているらしい。
龍金貨とか、一生見なさそう……とか言ってるとフラグになるから言わないでおくか。
ちなみに、通貨と物価の価値は日本と大差ないらしい、今抜けてきた麦畑の麦10kgの値段が、銀貨1枚|(千ゴルド)から2枚、りんごっぽいのが 1個、銅貨5枚から大銅貨1枚|(百ゴルド)らしい。
うん、わかりやすくていいな、物価が違うと高いか安いかわからないからな。
「あとはじゃな、お主の魔法の素質じゃが、 はっきり言ってないわい」
「…………は?」
「じゃから、ないんじゃよ、才能が」
「え!? じゃあ魔法一切使えないんですか!?」
「いや、無属性魔法は使えるのう、魔力はちゃんとそれなりにあるからの」
「え~……火魔法とか雷魔法とか使えないのかよ~……」
すんごいがっかりだ、まぁそんなに魔法使いたいと思ってなかったけど、一切使えないとか……ないわぁ~……
「そりゃそうじゃろ、お主がワシの授ける力をいらないと言ったんじゃからな」
「いや、まさか才能無しなんて思わなかったから……」
「考えてみよ、そもそも魔法自体なかった世界の者が、違う世界行ったら魔法使えるとかおかしいと思わんか?」
「ん~……まぁそりゃそうなんだけどさ、それはお約束ってことじゃないですか?」
「なんの約束かわからんが、お主は才能は無い、だがまぁ魔力自体はあるのじゃ、それが不思議じゃのう」
まぁ確かに、魔力のない世界から来て魔力持ってるとかおかしいわな。
「なんとか使える方法ないんですか?」
「あるぞい」
「え!? あるんですか!?」
こりゃびっくりした、一生手からファイアー! なんてのができないと思ってたから、いい事聞いたぞ!
「どうやるんですか!」
「落ち着けいまったく……簡単じゃ、魔導具を使えばいいんじゃよ」
「魔導具?」
あの剣に力を付与したり、明かりを点けられる道具だろうか?
「うむ、それで合っておるぞい」
「へぇー、じゃあ悲観することもないのかな」
「そうじゃのう、そもそも魔法とは、というか属性魔法とはどうやって使うかわかるか?」
「ぜーんぜんわかりません!」
無駄に踏ん反り返ってみた。
「何を威張っておるんじゃまったく……属性魔法とはの、生まれつき魔力を外に放出すると勝手に変換されるのじゃよ」
「へ~、じゃあ持ってない才能は魔導具無しじゃ一生使えないって事ですか?」
「頭ええのう、そういうことじゃ、じゃから魔力を体の外に魔力のまま出せるのは無属性だけじゃな」
「へぇー、それって良いことあるんですか?」
「あんまりないの、そこは自分で試してみるがよい、ちなみに属性の才能は1つから2つが平均的じゃの」
「そうですか、てか属性2つ使える人いるのか、属性っていくつあるんですか?」
「全部で7種ほどじゃの、火 水 土 風 光 闇 時 この7種じゃ」
おー、意外と多い? いや、少ないのか?雷とか音とかはどこに属するんだ?
「雷は風に属されるみたいじゃの、音もそうじゃ。まぁそこら辺は考え方次第で変わるみたいじゃぞ、使っとる奴が風と言えば風らしいのう。結構適当なんじゃろうな、使えりゃいいみたいでの」
「へぇ~、適当なんですね、そこは要検証ってことですか。てか無属性魔法がその中に入ってませんけどなんでですか?」
「そりゃ当然じゃ、体の外に出した魔力で魔法を使う事ができんのじゃから」
「あ~、魔力をそのまま出しても魔法にはならないってことか」
「そういう事じゃな、なので無属性魔法とは言うとるが、魔法ではないと考えられとるんじゃな、この世界では」
なんちゅう無属性魔法の不遇さだ……
じゃあ俺には魔導具必須ってことか。
「ちなみに魔導具の値段っていくらですか?」
「ピンキリじゃのう、安いのじゃと銀貨1枚(1万)から高いのじゃと龍金貨数枚(数億)から数十枚(数十億)必要じゃ」
「へぇー、高いのは無理だけど、安いのだと買えそうだな、意外とすぐ魔法使えそうでよかった」
銀貨1枚程度だと初級魔法とかしか使えないんだろうけど、まぁ使えるだけマシか、よかったよかった。
「あとは何か質問あるかの?」
「ん~、あ、身分証明証みたいのあるんですか?」
「あるぞい、各々の町で発行される物や各ギルドで発行されるカードがそうじゃの」
「へぇー、それってステータスとか見れるんですか?」
「見れるぞい、カードが違ってもステータスは見れる。町で発行されるカードはステータスのみじゃ。他のカードとの違いは、冒険者ギルドカードならランクや功績等が追加されたり、商人ギルドカードは自分の持ってる店の名前や商会名等が載るようじゃな。後はそれぞれ違うカード持っててもいいが、無くしたり年間の更新料もそれなりに高いから、大抵は1枚しか持たんようじゃの」
結構詳しく教えてくれたな、全部のカード取ろうかと思ったけどやめとこっと。
「町カードから冒険者カード、冒険者カードから商人カードに移行する場合でも、それまでに得た功績はランク等はそのまま移せるようじゃぞ、中々便利じゃのう」
「へぇー、じゃあ町カードだけでも問題ないんですね」
「そうじゃの、まずは村ならだいじょぶじゃが町になるとカードが無いと強制的に作らされるぞい」
なるほどねぇ、身元がわからないやつはだめということか。
あれ? ちょっと気になった。
「犯罪を犯したらカードにすぐさま反映されるとかは、ないんですか?」
「あるわけなかろう、どうやってわかるんじゃ?」
「いや、それは魔法で何かするんじゃ?」
「そんな魔法あったら犯罪者なぞみな駆逐されとるわ」
「え~、なんか水晶に手をかざしたりとかで」
「どうやって犯罪かどうかわかるんじゃ、故意じゃなくても人を殺したらそれだけで犯罪者じゃぞ、たとえ自分の作った罠に勝手に掛かったとしてもな」
「まぁ……そこらへんは魔法で……」
「んな便利な魔法なぞないわい、精々が過去に犯した罪や指名手配犯かどうかが見れるくらいじゃ」
あれま……地球と同じように、捕まらなければわからないのって結構痛いなぁ、こっちの世界は結構命が軽いかも知れないから、気をつけないとやばいかもしれん。
「後は何かあるかの?」
「ん~、後は特にないかなぁ?」
「そうか、それじゃそろそろ行くとするかの、お主もがんばってこの世界で生きていくのじゃぞ」
「はい、わかりました、ありがとうございます」
そう言ってラウル様が消えていった……が、唐突にまた現れた。
「どうしたんです?」
「忘れとったわい、お主が最初にいた場所に、生活費の数か月分を布袋に入れて置いたぞい、感謝して使うがよかろう」
そう満足げに言い残して消えていった。
「は? 最初いた場所って麦畑の中? はぁ~~~!? またあそこまで行くの!? 場所わからんぞおい!」
それは転移した時か、その前に言っとくもんだろ~~!!
あんのじじいめ! ……またあそこに戻るかと思うとうんざりするわ……
てか、どこが最初にいた場所なんだよ……もう取りに行かないで行っちゃおうかな……
とか思ってたら、方角すらもわからないわ、あれ? 詰んだこれ……?
「こっから北に村があるとか言ってたけど、北ってどっちよ・・・太陽って地球と同じく東から昇んの?」
う~わ~、一番大事な事聞いてなかったわ……やっちまったい……
はぁ……お金取りに行くか……金さえありゃ通行人から何か買えるだろ……はぁ。
こうして異世界への第一歩はお金を取りに戻る所から始まったのであった。
とか言って気分上げていこう! じゃないと沈むわ!
お金いくら入ってんのかなぁ、てか現物見てないからどれがどれだかわからなかったりして……まぁ、見た目で色とか大きさでわかるだろ。
こう思うと後から後から聞きたいこと出てくるなぁ、だから頭に一般常識入れといてくれたらいいのに。
などとぶつくさ言いながらお金を取って村を目指し始めた。
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