第2話


 低い音が回る朝には、電気の通った天井に影が生まれる。待ち焦がれていた時間のモチーフは、いつの間にか繭の内へと変わっていた。繊維に見える空が重くて、右手で触れた熱に溶かす思い出を、掬ったきりの今日。文字の今日、雨上がりに散らされた草木の映りが、水の声を呼び覚ましてしまうから。その日に忘れる書物を抱いて、棚の隙間を埋めてゆく。一日は長い砂時計のように、消えてしまう物が価値を担っている。残る本ばかりを数える指に、柔らかな文集が落とした霧の悔しさ。小さい塔と、谷のある町。忘れようとする私の視界が、見下ろしていた白い風景。

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