第3話 : 心の温もり
燃え盛る炎の中、ある女の人が俺にささやく。
『紡、あなただけでも生きて、私達の分まで....お願い..ね?』
「え?」
突然の出来事でわからなかったけど、焼けの原になってしまった街の中、血だらけで話かけて来ているのは俺の母さんだった。
遠くなる意識の中俺は懸命に叫ぶ。
「母さん?母さん!」
———
俺は体を起こしてすぐに辺りを見回す。
カーテンを開けて部屋の外を見回すと基地の明かりが消えていて、基地内時間ではもう夜中だった。
「夢...か。本当に、嫌な夢だな。」
そう言って汗をかいて水を求めている体を満足させようと水を飲むために、ベットから出ようとした時、ふと、左手が握られていることに気がついた。
ベットの横を見るとシルフィールドが俺の左手を握ったまま眠っていた。
普段は英雄って感じの凛々しい面構えなのに寝ている所を見るとやっぱり女の子なんだなと感じる。
起こすわけにもいかないし、しばらくこうしておくか。
しばらくして、シルフィールドは目を覚ました。
「よっ、おはよう。」
「あ...紡、おはよう...って私寝ちゃってた?!」
寝ぼけていたシルフィードは、俺に挨拶した後、急に慌て始じめた。
「ごめんな、突然倒れて。それと診ててくれてありがとう。」
「い、いいんだよ別に!寝てしまうのは想定外だったけど」
「ああ、ありがとう。ところで、手離してもらってもいい?」
「え?」
シルフィードの目線の先にはしっかりと俺の左手を握っている右手があった。
それを見てシルフィールドは顔を赤らめた。
「これは、君がうなされていたから...。」
「お前も、焦ったりそんな顔するんだな。」
そんなシルフィールドを見ながら俺が笑いながらそういうとは驚いた顔で俺を見て
「紡が私といて笑ったの初めてなんじゃない?」
そう言われて、俺自身驚いた。
確かに俺は、笑っていなかった。
家族が死んだあの日から、笑っていなかったのだ。
そして、同時に俺の目からは涙が出ていた。
「紡?どうしたんだ?大丈夫?」
「何でだろ、こんなこと初めてだ。でももう大丈夫だ。」
俺が涙を袖で拭った後
シルフィードが俺をじっと見つめてきた。
「なんだよ、もう涙出てないだろ?」
何も答えないシルフィールドは大きく息を吸って覚悟を決めたような目をして口を開いた。
「紡、ずっと1人だったからね。寂しかったこととかあるんじゃない?自分が死んでも誰も悲しまないとか考えたことない?」
確かにシルフィールドが言ったことは図星だった。
「ないよ、大丈夫だって。」
それでも俺は強がった。
もし、今そのことを話せば俺がダメになってしまうと思ったから。
「本当に?」
「本当に。」
..........。
数秒の沈黙の後、答えは出た。
「わかった。今は聞かない。」
以外とすんなり諦めたことに少し驚いたが
玄関を出る前にシルフィードは。
「全ての人に強がる必要なんてない、そんなことしていたら君が壊れてしまうよ。だからいつか、わたしには話してほしいな。」
彼女はそう言い残して部屋を出て行った。
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