第37話 禁断の恋
若い女の人は、小さな女の子を自分の後ろに隠しながら、剣を持っていた。身を縮こまらせ、顔が引きつっていたから、とてつもなく俺を怖がっているのは分かった。だけれど、それでも……俺は話したかった。
「あ、あの……」
「っっ!!」
「俺、あなたに一目惚れしました! あなたと話したいです」
「!? こ、来ないで!!」
一歩踏み出すと、若い女の人は剣を構えなおして、後ずさりをした。すると、
「ワンワン!!」
彼女の後ろから、あの小さい女の子が、俺の耳を指さしていた。俺は、四つん這いになって、腕を足の間に隠すようにいれて、顎と足で体を支えて、何も危害を加えないことを示した。すると、
「ワンワン! ワンワン!!」
彼女の後ろから、小さい女の子が飛び出してきた。
「だ、だめ!! リアナ!!!」
小さい女の子は、俺に興味津々なようで、俺の耳やしっぽを楽しそうに触っていた。
「あ、あぁ……」
彼女は今にも、気絶しそうだった。
「俺は、何も危害を加えない。ただ、あなたと話したいだけなんだ」
「あなたの演技には騙されないわ!!」
「お願いだから……お願いします」
俺は、そのまま顔を下げた。小さな女の子は、まだ俺の耳を触っていた。
「……っ」
「……」
「何を話したいの……?」
「わあ! ありがとうございます!!」
そして、俺は、彼女と満足するまで話した。年は偶然同じで、そのおかげもあって、話や趣味が合った。俺は彼女にどんどん惹かれていった。
「あの……俺と付き合ってください」
「!?!?」
「変なこと、言っているのは分かっているんです。俺は人狼だし」
「……」
彼女はしばらく考えていた。
怖いけど、さっき話していて、私も少しあなたのことを知りたいって思った。
「お友達からなら……」
「それでもいいです! やった!!」
そして、俺は隠れて、人間国に住みながら、彼女との関係を深めていった。その日、誰も殺されなかったことで、人間国の人間たちは不思議に思っていた。もしかしたら、人狼国のやつらは俺が死んだと思っているかな?
俺は、幸せな日々を過ごしていって、そして、男の子が生まれたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます