第29話 一緒

そして……僕は自殺した。鋭い爪で、喉を掻っ切った。なんでかって言われたら……。


僕は、仇を取ったつもりだった、そして、それは、ムールイさんに喜んでもらうためでもあったんだ。けれど、結果的にムールイさんを泣かせてしまった。

良いと思ってやったことで、さらに悲しませた。テルイと同じくらい、僕を大事にしてくれていたムールイさんが、その優しさゆえに、僕に謝った。


僕は、疲れてしまったんだ。そして、もう「テルイがいないこと」に耐えられなかったんだ。


「僕は、ずっと一緒だよ、テルイ」

「うん、ガムーシュイ」


僕は、テルイと一緒にいるから。テルイと二人で、ここから、ずっとムールイさんを見守り続けるんだ。



ガムーシュイが亡くなったことを聞いて、もう一人のを失ったように感じたムールイは、また悲しみに暮れた。あの時、泣いて、ガムーシュイを抱きしめたことが、この結果を招いた……? 俺は、ガムーシュイの勇気を、優しさを踏みにじったのか……? そう考えると、ムールイは、また自分を責めて、精神をボロボロにしてしまったのだった。だが、【真の人狼】として、人狼国のリーダーであることが、ムールイに「生きて、人狼国をまとめないといけない」という使命感を感じさせ、僅かながら、生きる気力を与えていたのだった。

なお、またムールイを悲しませてしまったことを、ガムーシュイは知らない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る