第20話 木の実泥棒
テルイは手に抱えた木の実を落としながら走っていた。そして、落とした木の実を踏んでバランスを崩し、手に持っていたたくさんの木の実をぶちまけながら思いっ切り前に転んだ。
「うわぁっ! 痛っ…………。 !?」
恐ろしい笑顔の男の人が、顔を上げたテルイを覗いていた。一瞬にして体が硬直した。
「恨むんだったらパパを恨むんだーよ? この木・の・実泥棒がああぁぁっ!!」
「やめろろろろろろろっっっっっ!!!!!」
グシャッ
「かっは……」
俺は武器を避けてから男を掴んで、遠くに投げ飛ばした。男が持っていた血だらけの剣は宙に舞って落ちた。
「あぁ、ぁぁ…………」
テルイの姿に唖然とした俺は、テルイの傍に力なく座った。うつぶせのテルイを仰向けにして自分の左腕に頭を乗せ、ひざの上に寝かせた。
「テルイ……」
返事はなかった。木の実の好きなテルイは、きっとかばんの中で木の実のなっている木を見つけて、いつの間にか飛び出していたのだろう。神経を研ぎ澄ませて、集中していた俺はそれに気づかずに……。お腹から血がどんどん溢れてきて俺の服を染めた。お腹を触って手についた血は、テルイのまぶたを閉じると、赤い線を真っすぐ、顔に付けた。悔しい思いが俺を支配した。生前、一生守り抜くと誓ったのに……。ごめん、テルイ……。ごめんな、サーナ……。まだあたたかいテルイを抱きしめて、顔をうずめながら、俺は泣いた。
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