第19話 恐ろしい笑顔

急いで辺りを見渡した。自分の周りにはいない。


遠くを見渡した。そして見つけた……男の後ろに。


「テッ……」


声を出そうとしたが即座に辞めた。まずい、男に気づかれてしまう。テルイと目が合った。俺は必死に目で訴えた。だが、それは意味がなかった。


「パパーーー!」

「!?」

「!?」


男は後ろを振り返った。そして俺の方を見た。テルイが俺の方に向かって言っていることを確認した男は、選ばれた人狼以外に、人狼国の人間がいることの奇妙な点に気を取られずに、片方の口角を思いっ切り上げて、恐ろしい笑顔で俺を見てきた。まずいっ!! 俺はテルイが殺されると悟った。


「テルイ!!! 逃げろろろろっっっ!!!!!!!」

「え?」


少し戸惑ってからテルイは手に何かを抱えたままおぼつかなく走り出した。何かを抱えているせいで上手く走れていない。男はテルイの後を追い始めた。そして俺も後を追い始めた。三人が去った場所には小さい女の子の声だけが響いていた。




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