第18話 心臓

若い女の人は横たわって死んでいた。俺は女の子ではなく若い女の人の心臓をもらうことにした。腰を抜かして座り込み、再び泣き出した女の子を横目に、俺は若い女の人の左胸に爪を立てるようにして手を押し当てた。


「やめろろろろろろろろっっっっ!!!!!!!!!」


男がそう叫ぶ声は、耳に入っておらず、俺はそのまま皮膚を突っ切って心臓を掴むと、勢いよく引っ張り、取り出した。


「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」


血が宙に飛び散った。


ブウォンッ


俺は心臓を片手に、こちらに走ってきて、男が、鈍い音を立てながら振り回した剣を避けた。そしてある程度距離を取った後、男を警戒しながら、俺は、中に入れていた袋に心臓を入れようと、かばんのふたを開けた。


「テルイ……?」


そこに、テルイはいなかった。

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