第15話 出発
時間が迫る中、俺はテルイを家に残すことに少しためらいを感じていた。妻が病気で亡くなってから二人で暮らしているわけだが、妻―サーナが残してくれたテルイ《たからもの》を生前、俺は一生守り抜くと誓った。だから一人で家に残して、勝手に火を触ったりして、何かあったら、俺は絶対、一生後悔すると思った。だが、あの鉄製のはしごは、選ばれた人狼しか上ることが出来ないのは分かっていたため、なおさら、葛藤を繰り返したのだった。
用意したリュックを玄関に置いてから俺は寝室に向かった。
「おーい、テルイー?」
返事はなかった。ドアを開けると、白い布団が小さく盛り上がっていた。今日はもう寝たのか。今日は一段と訓練、張り切ってやっていたからな。自分のようになろうと息子が頑張っていると思うと、俺は嬉しかった。
「おやすみ」
小さくそう言ってドアを閉めると、俺は気を引き締めてからリュックを背負い、家を出た。壁に現れたはしごを上って、俺は人狼国へと足を踏み入れた。
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