第209話 策略の裏側
ルデアから締め出された者たちが散り散りに離れていった後、ひとりだけ倒れている者がいた。
彼は最初に反抗して矢で射抜かれた犠牲者だ。
その犠牲者にギードが近づく。
「もう、いいですよ」
ギードが声をかけると倒れている男は上体を起こした。
「こんな感じでよかったですか?」
「ええ、十分です。これで状況が帝都へ拡散されるでしょう」
ギードは満足そうに頷いた。
「それは良かった。いろいろと紛れ込ませたかいがあったってもんです」
男はそう言って自分の胸に刺さっている矢を一本ずつ抜いていく。
「腹に鉄板を入れてたけど、まあまあの衝撃でしたよ。それと、もう少し狙いは正確にしてほしかったですね。いてて……」
「それはすみません。これでも弓に自信のある者たちに任せたんですけどね」
男の腕には何かで切られたかのように服が破れ、そこから血が滲んでいた。
外した何本かの矢の内1本がかすったのだろう。
「頭に当たらなかっただけ良かったと思ってください」
「へいへい。よいしょっと……。ああ、そういえば、冒険者たちにはルデアが占拠されたことを広めるように頼んでおきましたけど、それで良かったんですよね」
「ええ、それで問題ないです」
「俺がやられたと思ったから実行してくれるかどうかわからないですけどね」
ギードたち反乱軍は各地の冒険者にも事前に仲間たちを紛れ込ませていた。
そして、決行日にルデアへ到着できる依頼を重点的に受けてもらっていた。
悲鳴を上げて逃げていく者の中にも冒険者として仲間が入り込んでいたのだ。
逃げる人間が出れば、それに追随する者が出てくる。
それが呼び水となってほとんどが逃走を選ぶだろうと考えていた。
ちなみに、行商人の会頭の積荷を警護してきた者たちもギードたちの仲間だったりする。
邪魔されたときの防御策としても用意していたのだが、思っていたよりも抵抗は少なかった。
そのおかげで、仲間が紛れ込んでいた事実は誰も知る由もない。
「あとはここに兵が集まるのを待つだけですね」
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