第182話 作戦の把握
翌日の午前中に〝剣帝〟の部隊が町を出発した。
町内でもその話がされており、なぜこの町に来たのかという話題に広がっていた。
娯楽の少ないこの世界では妄想に花を咲かせるのは良くあることらしく、これもひとつの娯楽なのだろう。
琉海達が朝食を食べに行った食事処でも同じ話題で持ち切りだった。
「これだけ話が出ていれば、わかりやすいな。作戦は決行するのかな」
「正午に行けばわかるわよ」
リーリアがテーブルに肘を突いて掌に顎を乗せて言う。
「とりあえず、障害がひとつ無くなって一安心か」
まだどういった作戦なのかわからないが、それも正午になればわかることだろう。
レオンスに言われた通り、琉海たちは正午に指定の店へ向かった。
扉を開けて店の中に入ると、棚に統一性のない様々な物が陳列されていた。
雑貨店なのだろうか。
棚の中には紫色の謎の液体が入った試験管も置かれていた。
「いらっしゃい」
奥から男性の声が聞こえてきた。
声の元へ向かうと小太りの男がいた。
この店の店主だろうか。
「何のようだ?」
仏頂面で聞いてくる店主。
「これを見せればわかるって言われたんだが……」
琉海が懐から出したのはレオンスから受け取ったライオンの木彫りの板だった。
店主はそれを受け取り、軽く確認した。
「ちょっと待ってろ」
店主は木彫りを琉海へ返すと奥へ引っ込んだ。
少し待つと、筒状になった羊皮紙を持って現れる。
机の上でその羊皮紙を広げて見せるが、中身は白紙だった。
「いまから、この羊皮紙に魔力を通すと文字が浮かぶから、読め。時間が経てば消えるから、もたもたするなよ」
琉海の返答を待たず、店主は魔力を羊皮紙に流した。
すると、文字が浮かび上がった。
「これって魔道具ね」
リーリアは興味深そうに羊皮紙を見ている。
(なるほど、羊皮紙の魔道具か。おっと、それよりも読まないとな)
魔道具の話題に釣られそうになったが、意識を羊皮紙の文字へと戻す。
羊皮紙に書かれている文字を流し読みしていく。
主に書かれているのは作戦開始時間と攻撃目標。それと注意点だった。
読み終える頃には、次第に文字が薄れ始めた。
完全に文字が消えると、店主は羊皮紙を丸めてしまう。
「わかったか?」
店主が確認を取ってくるが、再度見せる気はないように思える。
まあ、一度見れば覚えられるから問題はない。
「ええ、大丈夫です。行こうか」
リーリアとエアリスに促して店を出た。
作戦決行の時間は日没だったので、それまで町観光で時間を潰した。
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