第147話 侵入者

 日中の間、琉海は属性を扱った精霊術の練習をし続けた。


 熱中していたせいか、時間が経つのは早かった。


 気が付いたら日は沈み、夜になっていた。


 夕食を済ませ、そろそろ寝ようかと思っていると、チリンチリンと鈴が鳴る音が家中に鳴り響く。


「鈴の音?」


 琉海は鳴り止まない音に首を傾げた。


 呑気に首を傾げている琉海に、リーリアが叫ぶ。


「侵入者よ!」


 ルイにそう言い放ってリーリアは家の外へ飛び出した。


「リーリア! 待ちなさい!」


 マルティアがリーリアに制止するように言うが、聞く耳も持たず、走り去ってしまった。


「本当にどうしようもないね」


 マルティアはやれやれと首を左右に振った。


「ルイ様たちはここにいてください。私はリーリアを連れ戻してきます」


 琉海たちにここで待つように言って、マルティアは玄関に向かおうとしたが――


「リーリアを連れ戻すのなら、俺たちがやりますよ。マルティアさんは、迎撃の準備をしてください」


「ですが……」


「大丈夫ですよ。必ず連れ戻してきますから。行こう、エアリス」


 琉海はエアリスを連れて家屋の外へと出た。


 マルティアは今回の侵入者の数は多いことを予想していた。


 相手の数はわからずとも、今までの対応では数の力に押し負けると推測し、それを補うために起動魔法陣を作成したらしい。


 ただ、その魔法を起動させるには時間がかかるようで、リーリアを連れ戻しに行っていたら、魔法陣の起動が遅れる可能性があった。


 できるだけリスクは下げる必要がある。


(リーリアももう少し考えて動いて欲しいものだ)


 琉海はそんなことを思いつつも家屋の外から見える森に視線を向けた。


「さて、どこに向かったのやら」


 琉海が視線を巡らせているとエアリスが指を差した。


「あっちにいるみたいよ」


 エアリスが指し示す方向は森林。


 目を凝らしてもなんの痕跡も見当たらない。


「へえ、良く分かったな」


「微精霊が教えてくれたわよ」


 エアリスの近くにはふわふわと漂う微粒子が複数視えた。


「なるほど」


 上位精霊のエアリスが微精霊たちに聞いたようだ。


 この森は微精霊が多い。


 微精霊を味方に付ければ、情報戦はかなり有利になるだろう。


「それと、もうすぐリーリアが侵入者とぶつかるみたいよ」


「それは急いだほうがよさそうだな」


 琉海は精霊術で身体強化を施し駆け出した。

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