第109話 古代文字
爆発が起きた場所は、辺り一面が焦土と化していた。
燃えた草花。
近くにいた人間は無事では済まないだろう。
そんな中――
立ち込めている黒煙の中で動く人影があった。
それも3人。
ケホケホと2人の声が煙の中から聞こえてくる。
そして、風で煙が晴れると、エアリスと静香を庇うように立っている琉海がいた。
琉海の背後には爆発が届かなかったのか、地面には青々しく草花が風に揺られていた。
「逃げたか」
琉海は辺りを見てそう呟く。
琉海の後方以外は悲惨なことになっていた。
熱風を伴う爆発が草花を燃やしたのだろう。
琉海が武器強化した剣で横に薙ぐのが遅れていたら、無事では済まなかったかもしれない。
まだ、焦げ臭さが残る中、ルイは地面にキラリと光るものを見つけた。
持ち上げてみると、微かに煤を被った銀のリングだった。
腕に嵌めることのできそうなリング。
これがアクセサリならブレスレットかもしれない。
軽く汚れを拭いてみると、破損はなく無傷のようだった。
「これは……?」
ブレスレットの周りには読めない文字が無数に刻まれている。
びっしりと刻まれた文字はただの模様には見えない。
何か理由があって刻まれたものに思えた。
琉海がブレスレットを眺めていると、エアリスが近づいてくる。
エアリスにはマナを渡しており、服や傷はすでに癒えていた。
「ねえ、それ貸してみて」
「ああ、ほら」
琉海はエアリスにブレスレットを渡す。
エアリスはじっくりとそれを見て、息を吐いた。
「これのせいね。私が粒子化できなかったのは」
「なんなんだ。それ?」
「ここに刻まれているのは、
「古代文字?」
琉海が聞き返すと説明してくれた。
古代文字は、まだ、人間が精霊と密接に繋がりを持ち、マナを扱うことのできた時代。
武器や防具に刻むことで、強力な武器を使うことができたようだ。
しかし、次第に人間は精霊の力を必要とせず、独自の力で魔法を生み出した。
精霊術を扱える者は減り、古代文字も使う者はいなくなった。
「ここに刻まれているのは、精霊の能力を制限するものみたいね」
「制限……それで、粒子化できなかったのか」
「ええ。でも、古代文字なんて久しぶりに見たわ。誰がこんなものを作ったのかし
ら」
「さあな。あいつを捕まえることができていたら、聞けただろうけど」
琉海はそう言って、辺り一帯に痕跡がないか見るが、何もなかった。
もし、残していても、さっきの爆発で全て吹き飛ばされているだろう。
琉海は静華のほうに視線を向けた。
「静華先輩は大丈夫でしたか?」
「え、ええ。大丈夫よ」
しかし、静華は立てずにいるようだ。
琉海は心配になって近づくと――
「そ、それ以上、近づかないで!」
静華が手を前にして制止するよう促す。
「い、今来られると、抑えつけられなくなる……」
静華は誰にも聞こえないほどの小声で呟く。
「…………? 本当に大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だから。ちょっと落ち着いたら立ち上がるから」
静華はそう言って深呼吸をした。
様子の可笑しい静華に首を傾げる琉海。
(大丈夫って言っているし、様子からして怪我もなさそうか)
心配しなくても大丈夫だろうと判断し、静華が落ち着くまで待って三人で王都に帰
った。
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