第108話 避難民
塀の上で巡回する警備兵が塀の外で起きた爆発に驚く。
近くでの爆発。
熱を伴った爆風が顔面を叩く。
「な、何が起きた!?」
大きな爆発音に他の兵士たちも何事だと集まり出す。
塀の上にいる者だけでなく、避難中の王都の住民たちにも聞こえていた。
塀に遮られていても、空に立ち昇る黒煙が塀越しから見えており、外で何かあったんじゃないかと避難民たちが不安に包まれる。
避難中にも関わらず足を止める者も発生する始末。
内側にはドラゴン。
外側では謎の大爆発。
内側と外側で様々なことが起きて住民たちはパニックになっていた。
「狼狽えないでください」
そんな中、毅然とした態度で避難中の民を一喝する者がいた。
貴族の少女。
公爵家令嬢のティニア・スタント。
後ろにアンジュを従えて混乱している者たちの正気を保たせる。
「私たちの代わりに戦ってくれている人たちがいるんです。私たちはその人たちの迷惑にならないように速やかに避難する必要があります。不安に思うのも仕方ありませんが、今は――今だけは、避難することだけを考えましょう」
ティニアはそう言って避難民を先導する。
戦っている人が誰とは言わなかったが、ティニアの頭の中には、ひとりの少年が思い浮かんでいたことだろう。
避難場所は貴族住宅区画のとある場所。
そこには地下への道があり、そこから王都の外へ出ることができる。
ティニアはそこへの誘導者として平民たちを導いていた。
ティニア自身もさっきの爆発音は気になっているが、今は避難することに集中するようにした。
できるだけ、戦う人たちの足枷とならないように。
アンジュの傍に一人の兵が近づてきて何事かを話している。
少しの会話を終えると兵はすぐに離れていった。
「ティニア様、闘技場で姿を現したドラゴンは先ほど討伐されたことを確認したようです」
「ルイ様が討伐したのかしら」
「はい。おそらくそうであるかと思われます」
「ルイ様は無事なのよね」
「ドラゴンの死体の傍にはグランゾアのみがいたようで、グランゾアの話では、ルイ様はどこかへ行ってしまったようで」
アンジュからの情報から琉海が無事であることいティニアは内心で安堵した。
そして、自分ができること即座に判断する。
「わかったわ。無事なら、いいわ。追撃がないとも限らないから、私たちはこちらを速やかに終わらせましょう」
「はい。承知しました」
ティニアとアンジュは住民たちの避難を迅速に終わらせるために貴族区画への誘導を行った。
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