第12話 アンリ

「ねえ、この村には何で来たの?」


 アンリは後ろを歩く琉海に問いかけた。


「なんでと言われてもね。たまたま近くに村があったから、立ち寄ったって感じかな」


「ふーん。でも、こんな村じゃなくてもよかったんじゃない。三、四日歩けばもっと大きな町があったのに」


「へえ、そうなんだ」


 琉海はいい情報を手に入れたと思う。


「その町はどの辺にあるのかな」


「西の方にまっすぐよ。それにしても、あなたってこの国の出身じゃないの?」


「ま、まあね。この国の出身じゃないかな」


「ふーん、そうなんだ」


 話をしていると、目的の部屋に着いたのか、アンリが足を止める。


「ここが客室。好きに使っていいわよ」


 アンリがそう言って扉を開けた。


 十畳ぐらいはある部屋だった。


 和式の部屋で、田舎のおばあちゃんの家を思い出す内装だった。


「何か必要なものがあったら言って、用意できるものならするから」


「ああ、ありがとう」


「それじゃ、私は仕事に戻るね」


 アンリはそう言って去ろうとしたが、


「ああ、そうだ。自己紹介してなかったね。私はアンリ。よろしくね」


 アンリが手を琉海の前に出す。


「俺はルイ。よろしく」


 琉海はそう言ってアンリと握手した。

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