第13話 これから
アンリが部屋から出ていき、扉が閉まる。
アンリが離れたとわかると疲れが押し寄せてきて琉海は大きく息を吐いた。
正直、どうなることかと思っていたからだ。
下手したら、捕まって殺されてもおかしくなかった。
まだ、ここが日本と勘違いしている自分がいることを自覚した。
琉海が冷や汗をかいていると――
「なんか、時間かかりそうね」
エアリスは床に転がって足をパタパタさせていた。
早くも寛いでいるようだ。
琉海はこっちの気も知らないでと思いつつも返答した。
「まあ、時間はかかるだろうな」
何もわからない状態で手探り状態だ。
行き当たりばったいは仕方がないだろう。
「そう。なら、私は少し休ませてもらうわ。何かあったら呼んでちょうだい」
琉海の返事を聞くと、エアリスは光の粒子になって消えた。
「ちょ、おい!」
突然消えたエアリスを見て焦る琉海。
『大丈夫よ。ルイの体に入って休ませてもらっているだけだから。用事があるときは、念じれば出てくるわよ』
頭の中に直接声が聞こえてきたが、それ以降は無言になってしまった。
寝てしまったのだろうかと、自分の体を眺めてみた。
「はあ、精霊って結構なんでもありなのか」
琉海はそう呟いてから今後のことを考えることにした。
この世界で生きていくためには、知らないことが多すぎる。
情報の参考となりえるのは、この村とエアリスのいた森だけ。
この村の家屋や外観を見た感じだと、日本の戦後ぐらいと同じ生活水準だろうか。
精霊がいたり、魔法のようなものがあったりするような世界だから、日本の生活水準なんて当てにならないかもしれないけど。
現在、唯一の情報源となりえるエアリスは三〇〇年前の知識しかない。
これもアテにはできない。
知っておかなければならないことを優先的に聞いておかないと、この村を出た後に路頭に迷いかねない。
頭の中で考えられる最悪のパターンを何個かピックアップし、その回避策や対策となる情報が何かを考えていく。
その中で順位付けを行い、必要な情報として優先順位を付けていく。
その中で最も重要なのは金銭についてだろうか。
この世界は物々交換なのか。
それとも、共通する通貨が存在するのか。
何をするにしても金は必要だろう。
ある程度のことは金で解決できる。
それは世界が変わっても変わらないだろう。
(まあ、物々交換なら話は別だが)
金の稼ぎ方と通貨の単位は知っておきたい。
琉海は聞いておきたいことを頭の中で整理する。
こんな時、メモいらずの琉海の完全記憶能力は便利だった。
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