第11話 村の存在

 琉海たちが部屋を出たあと、残された村長と男はまだその部屋に残っていた。


 二人の視線は扉を見つめていた。


 琉海たちの足音が聞こえなくなってから男が口を開いた。


「この家に泊めてよかったんですか」


「別に問題なかろう。ルイは、選ばれた少年じゃろうて」


「ですが、本当とは限りません。たまたま、祠の結界が破れているのを見かけて、この村にやってきた浮浪者の可能性もあります」


「それは、ないじゃろう。あの少年の服は、清潔感のあるものじゃった。貴族の着る服と遜色がないほどにじゃ。そんな少年が、わざわざこんな何もない村に来るわけがないじゃろ」


 村長に言われ、何も言い返すことのできない男。


「まあ、ここで一緒に生活すれば、何かわかるじゃろ。儂たちの役目は終わったのじゃ。あとはルイを送り出すのみじゃな」


 村長は憑き物が落ちたかのような表情でふうとため息を吐いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る