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蝉が急き立てるように啼いている。

怖いくらい真っ青な空を背景に、彼は窓枠に座って笑って言う。

「僕が死ぬのを見ていてくれないか?」

またこの夢か。案の定、足は根が張ったように動かず、彼を止める事は出来なかった。

重力のままに窓枠から落ちてゆく彼を見て__グシャァと鈍い音と共に目を覚ます。


布団から出て普段着に着替えて彼のいる病院へと向かい、いつもの日課を繰り返す。

初めのうちは夏休み何日目だとか数えていたけれど、毎日同じことの繰り返しでは数えるのも飽きてくる。

今がいったい夏休み何日目で、あと何日で夏休みが終わるのかすら分からない。

「おはよう」

「やあおはよう」

病室のドアを開くと変わらずベットに横になっている彼と挨拶を交し、他愛のない話を繰り広げる。


突如会話の途中で

「顔色が悪い」

彼にそう言われ思わず動揺する。

別にやましいことがある訳では無いが__顔色が悪いと言われて思いつく原因は彼の夢しかない。

「課題が終わらないとか?」

「…いや、終わるよ」

じゃあ何?と首を傾げる彼。

いつ死んでもおかしくないという彼に

「君が死ぬ夢をみる」

と言うのは不謹慎がすぎるだろう。黙っていると彼は不安げに眉を顰めて聞いてきた。

「何か悩み事でもあるのか」

「…大したことじゃない」

「つれないなぁ。君が体調を崩してここに来れなくなったら僕が半日暇をすることになるんだぞ」

少ない余生の楽しみなのに、と彼はため息をついて、不服そうに顔を顰めた。

そこまで言われ、そうも不満げにされると言わざるを得なくなってくる。

念のために

「…あまり、言いやすい話ではないんだ」

と確認をし「構わない。気にせず話してくれ」と彼の許しを得て、その話を始めた。


「君の夢を見るんだ。君が死ぬ夢。

君が“死ぬのを見ていて欲しい”と言って目の前で死んでいく夢なんだ」

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