八話 火山の観光 IN泡

魔王城〜


シュン


「ラゴル〜、今帰ってきたぜ〜」


「お、カース。どうだ、温泉街の周りは?」


「そりゃあ楽しい旅行だぜ。でも、ヴァースをぶっ飛ばした奴らの特徴に似た奴らもいたな」


「ほう、そいつらは何処に?」


「奴らの仲間の一人に発信器を付けておいたから確認できるはずだ」


「それは、でかした!今日はゆっくり休むと良い」


「やった、久々の長時間睡眠ができる」


「そうそう、最近ラジオの配信を始めようと計画をしているんだ。カースも暇な時間があれば企画の提案をしてもらっても構わない。詳しいことはヴァースに聞いてくれ」


「え、ヴァース生きてんの!?」


「アイツの体の一部がいるんだ。遺伝子だけ保存しておいたんだよ」


「へ〜、遺伝子があれば分身を作れるんだな。まあ一旦寝るわ。おやすみぃ!」


「ああ、おやすみ」




一方、ヴァース達は…


「企画、どうしよう。全然良い感じのが浮かばない…」


「私が深夜の方だけシフト入ろうかな?」


「え、何をする予定なんだ?」


「ASMR。私それやってみたかったのよ〜」


「え、あの囁いたりして耳に癒しを与えるあれか?」


「そうそう、それそれ〜」


「まあ、一回目の配信でやってみて好評ならそこは任せるとしよう」


「じゃあ、深夜帯の一部は私が入るの決定ね」


「余った枠は、他の魔王軍の方々にも聞いてみるか…」




温泉街 夜〜


「着いた。ここだぞ〜」


カーマが言った通り、街並み全体が見える天文台ようなところに来た。


「わ〜、街全体の明かりがついていて綺麗ですね〜」


ヒュ〜


「あっ、花火ですよ!」


ドッカーン!


「赤に青に緑、それに紫…まるでアタシ達みたいね(笑)」


「フッ、言われてみればそうだな(笑)」


『アハハハハハ!』


(これは、ライキにも見せたかったなあ…)


「あっ、そうだ!私達も後で花火しませんか?オリジナルの花火を作るんです♪」


「それ、やってみるのも面白そうね!でも、明日の方が良いよね、多分…」


「そうですよね。流石に皆、疲れてますし」


「じゃあ明日、ライキもいる時にやろう。ライキも雷で面白そうな花火作りそうだし」


「その花火は個人個人で競う感じで良いんでしょうか?」


「そうだな〜、どっちが良い?協力して一つの花火を作るか、競ってそれぞれの花火を作るか…」


「沢山あった方が面白い気がするけどね」


「そうですね、それぞれの個性が出て面白いと思いますよ」


「そうだな、そうするか!」




ホテル室内〜


「すー…」


カナはすぐに寝落ちした。


「明日は山登りでしたっけ?」


「そうね、マグマドラゴンもいるみたいだし。会えると良いなあ」


「まあ、明日になってからのお楽しみってことで。じゃあ電気消すぞ〜」


「おやす〜」


「おやす〜です」




翌日〜


「起きて〜朝だよ〜」


「はぇ?もう朝ですか?」


カナは寝ぼけた顔をしている。


「おはよう、カナ。ちゃんと眠れた?」


「ソニア、おはようございます。まだ、もう少し寝たいです…おやすみなさい!」


バサッ!


「なんで布団に潜り直すの!?」


バサッ!


「嫌です、もう少しだけ〜!」 


「ダメよ、今日は山登りするんだから…」


「それならまず、ユウを起こした方がぁ!」


「今日は珍しくリナさんも起きてるんだから、ささっと布団から出なさいよ」


「ちょ、ちょっと!珍しいってどういうことですか!?」


「で、後はユウとライキね…ちょっとユウを起こすの任せていい?」


「まあ、良いですけど…」


「ライキ〜!そろそろ起きなさーい!」


思いっきり体を揺らして起こしているようだ。


「起こし方が強引ですけど効果はあるみたいですね」


「どうしますか?私も手伝いましょうか?」


「なら…」




「ふわぁ〜、起こし方が強引すぎるぜ…」


「どうやっても起きないし、一番早寝して遅起きって…」


「眠たい時ぐらいはオイラでもあるだろ…」


「そうね、悪かったわ。でも今日、山登りに行くから早めに起こしたのよ」


「なるほどね、それでユウは?」


「カナ達が起こしてると思うんだけど…」


「ギャー!」


「えっ?」




「ちょっと、一体何して…えっ?」


「や、やめろー!浮遊魔法で何をする気だー!」


ニコッ


二人はお互いに微笑んだ後…


「そーれー!」


「わわわわ、ユウが飛ばされてる!」


「うわああ!」


シュン!


「あ、危ない…ねー!そんなにしなくても良いのに!」


「えっ?」


「わわわわ、ぶつかる!」


ドーン!


「あちゃー…」




「気絶しちゃってるじゃないの、リナさんもなんでこの方法にしたのよ」


「ちょっと興味本位で釣られて…すみません!」


「カーマ〜」


「ん、どうした?」


「復活魔法をお願い」


「しゃーねーな〜、ほいっ」


「…ハッ」


「目覚めたか?」


「俺、気絶して…あっ!お前ら…」


『……』


二人とも下を向いてしまった。


「気をつけろよ…」


「はい…」




「さて、皆準備はできた?」


「勿論!」


「大丈夫だ!」


「準備万端です」


「じゃあ、山登りに行こう!」


『お〜!』




ヴォルケ山の麓〜


「瞬間移動を一回使ってしまったけど…大丈夫かな?」


「ちゃんと道があるわね、ワイヤーとかはいらないの?」


「ここの山はしっかり整備されてるから大丈夫…なんだその格好?」


「山登りって言ってたから装備マシマシで来たんだけど…」


「大丈夫か?足が震えてるけど…」


「こんなのどうだってことないわ…よ」


明らかに装備が重いのが分かる。


「まあ、試しに歩いてみたらどうだ?」


「分かったわ。まずは一歩…」


カシャン、バタッ


「やっぱり…」


「誰か〜起こして〜」


足をバタつかせている。


「しょーがないな〜皆、手伝って」




30分後〜


「はあ〜、重すぎたわ…」


「汗だくじゃないか…」


「まあ、あれだけの装備をしていたら暑いでしょう。水分はしっかり摂らないといけませんから…はい、水です」


「ありがとう」


「待てよ、浮遊魔法で山頂まで行けたんじゃ…」


「ここで私のおふざけ魔法が役に立つ時がくるとは…」


「じゃあ、プラン変更。浮遊魔法で景色を見ながら山頂まで行こう」


「なら、まず浮遊魔法をかけますね」


フワッ


「そこに私の魔法で作った泡の中に入ってもらえれば…」


「お〜、浮き始めたぜ〜」


「正確に言いますと、浮遊魔法は人を浮かせるのではなく、体重を空気より軽くさせているんです。なので…」


ヒュー


「風には弱いんです」


「進行方向とは逆に進んでる〜!」


「おい、カナ。風魔法が得意なんだろ?追い風とかは出せないのか?」


「追い風ですか?出せないことはないですけど…ライキ、天候を雨に出来ますか?」


「まあ、可能っちゃ可能だけど…どうするんだ?」


「ひとまず、お願いします」


「分かった。えい!」


ゴロゴロ…ザー…


「雨だわ」


一瞬にして雨雲が広がり雨が降った。


「一応降らせたけど結局のところ何するんだ?」


「こうするんですよ、えい!」


風の方向が変わり皆の入った水泡をヴォルケ山の山頂付近まで飛ばした。


「わ〜、速いです!どうですか?自作の風アトラクションは!」


「速すぎる〜!もう少し遅くはできないのか!?」


「これが楽しいんじゃないですか〜ほら、皆楽しんでますよ」


「これは、良い案だぜ。ヒャッホ〜」


「空中でこの速さは少し怖いですけど、楽しいですね〜」


「大丈夫かな、割れたりとかはしないよね…」


「まあ、ソニアはちょっと怖がってますけど…」


「おい、ユウ。お前一人だけ置いてかれても知らねえぞ。先に行くぜ〜」


「おい、カーマまで。どうやって操縦するんだ?」


「操縦するも何も、平泳ぎする感じで移動すれば良いんですよ」


「こ、こうか?」


「そうです、そうです。では、慣れてきたのであれば加速しますよ〜!」


「やったぜ!」


「速いのは慣れてるから良いけど…」


「私の浮遊魔法も強くしますね〜」


「では、いきますよ〜!」


「えっ?」


「そーれー!」


ビューン!


「速い、速い!」


「これもまた面白いな〜」


「わわわわ!そんなに勢いよく飛ばさないで〜!」


「てか、なんで雨なんか降らしたんだ?」


「これがしたいっていうのもありましたけど、私の風魔法は天気が雨の方が操りやすくて最適なんです。風の量も多いですからね」


「へ〜…あ、あんなところに人がいるぞ!」


火山の火口の縁に立っている人がいた。


「あれ、危なくねえか!?」


「行ってみましょう!」




「よーし、今からマグマ風呂でも楽しむとするか…」


「待ってくれ〜!」


「ん?」


(オレが昨日の発信器をつけた鬼少年!都合が良い)


「なあ、ここで何してるんだ?そんな泡の中に入って」


「ちと、自作のアトラクションを…」


「自作のアトラクションか、それは面白そうじゃないか!」


「ていうか、お前は何しにここにいるんだ?」


「あ〜、オレはここの火口で体を癒しているんだ。どうしてもこの肩にある二つの切り傷が治らなくてな…」


「もしかして、あなたは人間ではなくてまた別の種族なんですか?」


「まあ、そういうことになるな。見た目の通りオレは炎を操る悪魔だ」


「悪魔!?」


「ああ。かといって悪く見るんじゃないぞ」


「いや、悪魔と話すのは初めてなもので…」


「まあ、悪魔の数が元から少ないので、出会えるのも珍しいそうですよ」


「あっ…ウン!」


悪魔は少し言いかけたが途中で言うのをやめた。


(まずいまずい、よく見たらリナじゃないか…気づかれないように早めに撤退しよう)


「じゃあ、オレはちと火口に用事があるからな。さらばだ!」


バサッ!


翼が生えた。


ヒュー…


悪魔は火口内に向かって急降下した。


「いや、まさかの悪魔だったとは」


「驚きね〜」


「うーん…思い出せない…」


「リナさんどうかした?」


「いや、あの悪魔何処かで見たことがあるんですが…」


「思い出せないのか?」


「はい…」


「あっ、天気を解除するの忘れてた!」


「でも、私達ずっと雨の中話してたけど悪魔の周りだけは晴れていたような…」


「あの悪魔、天候を晴れに変化させる能力が…」


「ひとまず、解除するぜ」


「お、晴れた」


「あっ、見て見て!下の方の景色!」


雨が上がった途端現れたその景色は今までに見たことないほどの絶景だった。


「……」


「どうしたの?ユウ」


「いや、初めてこんなに綺麗な景色を見て見惚れてしまった」


「しばらくこの位置でいたいわね…でも晴れてしまったから風の操作ができなくなったんでしょ?じゃあそろそろ降りないと…」


「なら、そろそろ降りましょうか。ソニアの言う通り、風が吹くとまた振り出しに戻っちゃいますので」


「そうだな」


「では少しずつ浮遊魔法を解除していきますね〜」




コポコポ…


「は〜、マグマ風呂っていうのは最高だな…てか、ひとまずあのリナをどうにかしないと…」




魔王城〜


「戻ったぞ」


「お帰りラゴル。どこ行ってたの?」


「セラ、お前ASMRするんだってな。だからこれをプレゼントしようと思って買ってきた」


「えっ、これ最新のマイクじゃないの!?」


「そうだ」


「そんな高いものどこで買ってきたのよ!?」


「秘密だ、このマイクさえあればラジオに接続する機器などはいらない。他の幹部の奴らにもそれぞれのマイクを買ってきた」


「なんと、ワシの分まで!」


「こんな高いもの受け取っちゃって良いの?」


「ああ、」


「残り五つのマイクが残ってるが…カースに届けてくれる奴はいないか?」


「私達、日に当たるととんでもないことになるんだから無理でしょ。カースの周りはずっと晴れなんだから…」


「そうだな…帰ってくるのを待つしかないか」


「帰ったわよ〜」


「お、ちょうど良いやつが帰ってきたじゃないか」


「ん、なんかアタイになんか用?」


「カースにこのマイクを届けて欲しいんだ。勿論、お前の分もあるから。ほい」


「ありがと。じゃ、こっちのマイクを届けたら良いのね?」


「そうだ、頼んだぞ」


「じゃあ我が弟子のところに行ってきやーす!」











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