五話 ゆっくりと、のーんびり…
〜ギルド〜
(強敵モンスタームーンウルフを倒すことができた。それでその報酬を受け取っているんだが…えっ、あの後どうなったかって?それは…)
【「おい、ユウ!しっかりしろー!」
「口から泡吹いてるわよ!どうするのよ!」
「ここは俺の出番だな。任せとけって」
キュイーン
「よし、これで良い」
「カーマって、復活魔法使えるの!?」
「ああ。まあ、回復能力は無いけどな。でも、ユウがHP1だから回復魔法がなくても別に良いんだよ」
「ユウって凄くハイリスクなのね。でも、カーマのおかげで助かったよ」
「私がユウに心配をかけたせいですね…下敷きにしてしまいましたし…」
「カナは何も悪くないわよ。今回は着地したところが悪かっただけ。誰のせいでもないわ」
「!サンダクラウド!」
「よし。まずはユウをここに乗せて…よっこらせっ。さっ皆、乗ってくれ」
「分かりました」
ヒュイ〜
…ってなことがあって今なんとか生きてる感じ。本当に周りの空気が重くなるなんてな。自分でも驚きだ。】
「今回は、二人のおかげで助かったわ〜。ありがとな」
「どうってことないわよ。それより、ウルフにトドメを刺したのはカナなんだからカナを褒めてあげてよ」
「いやいや、そんな…大したことないですよ。ユウを下敷きにして死なせてしまいましたし…」
遠慮気味のカナ。
「俺ら二人じゃ勝てそうにないやつにトドメを刺したんだぜ。そりゃすごいことだろう!その強い魔法に自信持てって」
「強い…私の魔法が強い!?」
ギュッ!
そう言った途端俺に飛びついてきた。
「そんなに私の魔法を褒めてくれるだなんてユウだけですよ!ありがとうございます!」
褒められるのが嬉しすぎたのか、俺に抱きついてきた。
「お、おい急に抱きつくなって。うわっ!」
ドテッ
転んでしまった。
「カナったら、ユウと会ったばかりなのに随分と気に入ったようね」
「何故そんなことが分かるんだ?」
「ほら、見てごらん。あの子、自分が気に入った人だと、あんな風に上機嫌になるのよね」
「確かに、出会った時と明るさが全然違う…てことはオイラが話しかけた時は対応が変わったりすることもあるってことか?」
「それは無いと思いたいけど…まあ、もうパーティーメンバーなんだし後々馴染んでくると思うわ」
「二人とも、そこで突っ立ってないで助けてくれよー!」
「…あんたは貴重な存在なんだからその関係壊さないようにね〜」
「それ、どういう意味…おい、カナ。ひとまず帰るぞ。夕飯の時間になる」
「〜♪」
全く聞いていないようだ。
「あの二人仲がいいのねえ…」
「後々……恋人同士になったりして…」
近くの席にいたお年寄りの女性らがボソボソとつぶやく。
(そ、そんなことは…)
「ユウ、ちょっと照れ焦ってるわよ(笑)」
「本当だ(笑)これは、まだ見ていたい光景だな(笑)」
「いつ終わるんだよこれ〜!」
実を言うとちょっと嬉しい気持ちが込み上げていた。
ニコッ
カナは微笑んだ。
二時間後〜
「あ〜、しがみついたら中々離れないし、力案外強いし、ヘトヘトだよ」
「まあ、一番年下なんだし多めに見てあげてよ。ね、ユウ」
「でも、最低限のことはしてくれても良かったじゃないか〜、助けてくれよ。まあ、ギルドに銭湯あったのは良かったけどさあ」
「まあ、オイラの家風呂ないからどっちみち銭湯入る予定だったし」
「助けて欲しかったんだったら一番近くにいたカーマに助けてもらえば良かったじゃない」
「え、俺!?俺が悪いのか!?」
「冗談よ。私達も悪かったけどあの光景、珍しかったからね。ちょっと興味が湧いてしまってね」
「ほら見なよ。カナはかなり上機嫌だ。スキップしてるぜ。魔力が高まっている気配が凄くするぜ」
「ふん、ふふーん♪」
カナは鼻歌を歌っている。
「なら、あの状態を極力保つわよ。魔法がいつもより強くなるかもしれないし」
「…そうだな、そうしよう」
ライキの家〜
「お邪魔しま〜す。案外広いじゃない。狭いっていうのは嘘ね…さて、ライキ〜ちょっと夕食作るの手伝わせてもらえる?」
「ああ、良いけど飯作りに自ら手伝おうとするなんて珍しいじゃないか。面倒な仕事だから、任せときゃ良いのに」
「アタシも、ある程度料理はできるのよ。小さい頃に色々と作ってたからね。協力してこそ仲間ってものでしょ。で、今日は何を作るの?」
「今夜は、これだ!今日討伐した報酬で買ったマッディアの肉とこの野菜を使ったメインを中心に作ろうかなって。名付けて、ベニソンサラダとでもしておくか〜」
「!ベニソンサラダ!美味しそうな名前ね」
「なあ、俺たちは手伝わなくて良いのか?毎回料理作らせて手間かからせちゃってるからさ」
「大丈夫だ。それにユウには俺らに適したクエストを毎回選んでくれているし。それだけでも十分ありがたいことだ。ま、カナやカーマとくつろいでいてくれ」
「あ、ありがとう。なら任せるよ」
「そうそう。外で遊んできても良いぜ。この辺りの森は今の時期になるとホタルが現れるんだ。この辺りはモンスターが出ない結界が張られているから夜でも安心だぜ」
「ホタルですか!?本では読んだことあったのですが、この辺りにいるなんて初めて知りました…あの、ユウ。良かったら一緒に見に行きませんか?」
「ホタルかあ、俺も最近日本の方で見てなかったし久しぶりに見るのも良いかもな。よし、行くか。カーマも一緒にどうだ?」
「すまんが、復活魔法の反動で疲れてしまってヘトヘトだ。二人で行ってきてくれ」
「俺が死んだせいか。なんか悪いことしたな。じゃ、行ってくるわ」
「ご飯出来たら呼ぶから、すぐ帰ってきてよね」
「そこの突き当たりにある水溜りで見れるぜ」
窓から覗いて指で場所を教えてくれた。
「ありがとう。美味い飯、期待してるぜ!」
「気をつけてね〜」
「さあて、今から飯を作っていくんだが。まず、このエプロンを着用してくれ」
「分かったわ」
「お、結構似合ってるじゃん」
「そ、そう?ライキも似合ってるけど(汗)」
「そ、そうか?(汗)」
「まずは、肉ね…これぐらいで良いかな?」
「もう少し多くても良いかも。あの二人の分も考えると拳四つ〜五つ分が良いかな」
「なるほどね、じゃあもう少し多く…さて、野菜はどれにしよっかな〜」
「色々あるけど、サラダだしみずみずしいのが良いよな。すると、この辺りの野菜かな」
「レタスにキュウリにニンジン……沢山あるわね」
「じゃあ、ソニアは野菜の方を頼む。俺は肉とそれのソースを作るよ」
「オッケー。それで、ソースは何を使うの?」
「アレルギーとかなければいいけど、何にしようかな?」
「ちなみに、アタシはタマネギが苦手なのよね…切ったときの目に染みるやつトラウマでしか無くて…」
「大根は?おろしにする予定だけど」
「それならいけるわ。おろしてソースに入れちゃいましょう!」
「あの二人はどうだろう?」
「大丈夫よ、あの二人なら文句言わなさそうだし。大根ならカナ食べてたし、ユウは死んでもカーマがいるし」
「お前、ユウの扱い雑すぎだろ…」
「嘘嘘、事前にユウに食べ物の好き嫌いとかは聞いてあるから」
(安心したぜ。てっきり俺の料理ミスで一日に二回も死なせるのか!?と思ってしまった)
「よし。なら、まず肉にしっかり火を通さないとな。よしソニア、火をつけてくれないか?」
「任せて、このダガーは炎を操ることができるダガーだから一瞬よ。それっ!」
シャキン!、シャキン!
「よし、もういいだろう。って聞いてる?」
「まだまだ!しっかりだからね……」
ボン!…
「…ゲホッ、ゲホッ。肉は無事だけど、オイラの顔が真っ黒だ…」
「次は、野菜を切るわよ!」
キラン…
「わあああ、よせっ!…」
一方、ユウたちは〜
ボン!…
「な、なんだ!?」
「ライキの家の方から聞こえましたけど、何かあったのでしょうか?」
「ま、まさか、キッチンを黒焦げにしちゃったとか…」
「そんなわけ……あるかもです」
「だろ。やらかしてないといいけど…」
「あの二人のことですから、任せましょう。ソニアはおっちょこちょいなところありますが、ライキがしっかりしていますし。話変わりますけど、ライキはあの角を曲がると大きな水溜まりがあってそこにホタルが…と言っていましたが、本当にいるんですかね?」
「今の季節的にいるような感じはすると思うんだけどな…ん?曲がり角から川の流れるような音がする。行ってみよう」
5分後〜
「あったぞ、大きな水溜まりだ」
(いや、池か?直径10メートル弱はあるんじゃないか?)
「でも、肝心のホタルが見当たりませんね。一体どこにいるんでしょうか…あ、あれは!見てくださいユウ、斜め上方向です!」
「斜め上…本当だ、ホタルだ。でも1匹だけっておかしくないか?」
「よく見てくださいよ、少しずつ増えてきてますよ!」
「お〜めっちゃ増えてきてるじゃん。お、ちょうどいいところに大きな切り株がある。ここに座るか」
「そうですね」
切り株に腰掛けてからしばらくすると……
「うわ〜これがホタルですか〜……あっ、手に乗ってきましたよ。見てください!」
手に乗ってきた初めて見るホタルをマジマジと見つめた後、笑顔で俺にホタルを見せてきた。
「どれどれ…小さくて可愛いらしいな。それにしても、ホタルはやっぱ癒されるな〜俺も久しぶりに見てワクワクしているよ」
「このホタル、家では飼えないですかね?ソニアに見せてあげたいです」
「うーん…飼えないことはないだろうけどソニアに見せたら帰してあげたほうがいいと思う」
「そうですよね、ソニアに見せたら自然に帰します。その方が、ホタルにとって、最も最適なことですしね」
「よく我慢できたな。偉いぞ」
「なっ、私を子供みたいな感じで扱わないでくださいよ〜!ちゃんと、帰そうと思えば帰せますから!(でも、褒めてもらえるのは嬉しかったですけど……)」
「ん?どうした?」
少し顔が赤くなってたので聞いてみた。
「い、いえ。なんでもありません!」
「ふーん。じゃあそろそろ帰るか。夕飯出来てる頃だろうし」
「は、はい」
「二人とも〜ご飯出来たわよ〜」
「ああ、今そっち行くよ」
「お帰り〜ホタルどうだった?」
「ソニアに見せようと思って持って帰ってきました!これです!」
「……」
「ソニア、どうかしましたか?」
「む、虫〜!」
「あ、逃げてしまいました」
どうやら、ソニアは虫が苦手なようだ。
「ライキ、なんとかしてよ。アタシ、虫ダメなの!」
キッチンの隅から顔を出してこちらを睨みつけている。
「仕方ねえな〜カナ、このビンに入れてくれるか?」
「あっ、はい」
カチャ
「ふう、そんなに虫が嫌いなのか?ソニア」
「足が6本あるし、気持ち悪いんだもの!」
「すみません、まさか虫嫌いだったなんて」
「いいのよ。アタシも突然すぎてパニックになっちゃっただけだから」
「まあ、いきなりだったからな。虫嫌いの人が突然虫を見せられたらそういった反応になるのは仕方ないことだ。見てごらん、ホタルが光ってるぞ」
「この状態ならアタシでも見ることができるわ」
「このホタルは雷や日光などの光を吸収して自分の光へと変換させるちょっと変わったホタルなんだぜ。緊急の際はこのホタルを防犯用に1匹飼っている家庭もあるんだ。しかも電気を作ってくれるから家庭の電気代も節約できる。まあ、うちはオイラが魔法で電気を起こせるからあまり必要ないんだけどな」
「なるほど〜でも、今は緊急じゃないし逃がす方が最適じゃないか?」
「それはそうだな。今は平和だ、だからホタルも沢山いただろう?昔は危険だらけで希少生物だったらしいぜ。まあ、先に逃がすよりも飯できてるし暖かいうちに食べようぜ」
「今日の料理はなんですか?良い匂いがします〜」
「ジャジャーン!アタシとライキ特性、ベニソンサラダ!一応ご飯も炊いてあるから好きに食べてね〜」
「お〜!美味そう!今日の報酬で買った鹿肉、もう料理になったのか!?早いな〜」
「じゅるり…」
「カナ、よだれ垂れてるわよ」
「だって、こんなに美味しそうな料理見たらそりゃあよだれだって垂れますよ!食べなくても美味しいって分かりますもん!」
「それでは、手を合わせてください!」
パチン
『いただきま〜す!』
「これは、こうやって肉をレタスで巻いて…ジャジャーン!美味しそうでしょ?」
「おっ、俺もそれやってみよ…よし、できた。モグモグ……う、美味すぎだろこれ!ご飯がすごく進むぞ!ソースが甘辛くて美味い!」
「それ、オイラが追加報酬でもらったスパイスとソースに大根おろして入れたんだよ。ステーキソースに近いかな。そして、隠してタマネギを入れてある。どうだソニア。これなら食えるか?」
「えっ、これタマネギ入ってたの?全然気づかなかった。これなら全然いけるよ。ていうかタマネギいつ切ったの?切ってるところ見てなかったんだけど?」
「あ〜、ソニアが肉切ってる時夢中になってる横でみじん切りしてた」
「そうだったのね。理解したわ」
「ていうか、カナはずっっとレタス巻き鹿肉にがっついている。大好評だったようだな〜」
「モグモグ……そりゃあそうでふよ!美味ひふぎて毎日これでも良いでふ!」
口に手を当てながら、これでもかというぐらい口の中で頬張って喋っている。まるでリスのようだ。
「つまらせないように気をつけてよね」
「てか、さっきから思ってたけどライキはなんでそんな全体的に黒がかってるんだ?」
「あ〜、ソニアが炎のダガー使って切ったら、肉が焦げそうだったんだ。それを止めようとしたら俺が黒煙にかかって真っ黒になった。まあ、大丈夫だから安心してくれ」
「あ〜、そういうことか…」
(予想通りだった)
とある視線を感じたので振り返ってみた。
「なあ、カーマがこっちをずっと見てくるんだが…」
「カーマ、起きてたんだ」
「見てしまうのも仕方ないだろ。少し過眠とって、起きたら美味そうな夜ご飯があるんだぞ。俺だってそんなに美味いんだったら食ってみたくなるよ〜」
「いいだろ〜俺らだけが食えるのさ〜」
「く〜、ますます食いたくなるじゃねーか〜!」
『アハハハハハ!』
皆、ニコニコしながら夕食を楽しんだ。
食後〜
「は〜、美味かった!最高だ〜」
「ふわ〜あ。眠くなってきたからオイラはそろそろ寝るわ〜そのホタル、ランプ代わりに使ってくれ。明日逃がすから。おやす〜」
『おやす〜!』
ライキは奥の部屋に行って就寝した。
「で、皆は起きている感じなのか?」
「まだ眠くないというか。何かしたいというか…」
「何かしましょうよ。面白いゲームみたいなの」
「ん〜、じゃあ指スマって知ってる?面白いかどうかは分からないけど」
「へ〜何それ?面白そう!どうやってするの?」
「まずこうやって指をこの形にする」
「それから、それから」
「それでジャンケンで勝った順から指スマの言葉の次に今ここにある指の数から好きな数字を言って、上げた指の本数が一致すれば片手がなくなってどっちの手もなくすことができれば勝ちっていうゲーム」
「ゆびすま…初めて聞くゲームですね。ライキにも明日、教えてあげましょう」
「カーマもよければ一緒にどうだ?」
「じゃあ、ありがたく参加させてもらうぜ」
「まず、じゃんけんからだな。せーの」
『じゃんけん…ポン!』
俺以外全員パーだった。
「はい、ユウ一人負け〜笑」
「ついてないなあ〜」
『ジャンケン…ポン!』
「やったー!さて、アタシからね。指スマ…」
10分後〜
「指スマ2!」
「指スマ1!」
「ユウが1抜け私が2抜け。まだカーマとソニアが一騎打ちしてますよ。今何ターン目でしたっけ?」
「確か、50は軽く超えてる」
「次のターンにかけるわ!必殺、渾身の指スマ…1!」
出た指は2だった。
「くそ〜、外した…」
(指スマってこんなゲームだったっけ…)
「俺のターンだな。行くぜ!必殺、ダークオブ指スマ…2!」
「なっ、やるわね!ここからよ!」
更に30分後〜
「なかなかやるわね」
「そっちこそ、やるじゃねえか」
「流石にこんなに勝負が決まらないってことなんてあるんですか?」
「指スマでこんなに長引いたことなんて無いぞ。しかも、先に寝たライキよく寝れるな。こんなにはしゃいでいるのに…ふぁ〜あ。俺ら先に寝るぞ〜」
「分かったわ。アタシはこの勝負が終わるまで寝ることは許せないわ」
「どういうこだわりかは分かりませんがおやす〜です」
『おやす〜』
(今日も大変な一日だったな。明日はどうなるのやら)
翌朝〜
カンカンカン…
「朝だぞ〜起きろ〜」
フライパンをフライ返しで叩きながらライキが呼びかける。
「ふわぁ〜おはよぉ〜」
俺より先にソニアが起きてきた。
「かなり眠たそうだけど昨日いつまで起きてたんだ?目の下にクマができてるぞ」
「昨日、ユウが教えてくれた指スマっていう遊びに集中していたらカーマと一騎討ちになっちゃって…それで、なかなか決着がつかなくて…」
「へ〜、ゆびすまか〜今度オイラも混ぜてよ」
「おはよう〜」
「あ、おはよう。ユウ、ゆびすまっていう遊びがあるんだって?今度教えてくれよ〜」
「まあ、それならお安い御用なんだけど。なあ、ソニア。昨日のやつ、結局どっちが勝ったんだ?」
「え〜っとね〜」
【「くらえ〜闇の一指!」
「そうは、行かないわよ!指スマ3!」
「なぬっ!」
「同点ね。勝負はここからよ!」
「もちろん、負けてたまるもんか!」】
「…ってな感じで、全く決着がつかなかったのよ」
(何それ、逆にすごいんだが)
「おはようございます、皆さん」
「あ、おはようカナ。今、昨日の指スマの決着について話してたんだ」
「結局どちらが勝ったのですか?」
「それがね、決着がなかなかつかなくて、二人とも寝落ちしそうになっちゃってね。とりあえず明日ねっ。てな感じで一旦中断したんだけどこのままだと決着がつかない気がするのよ」
「だからといって、諦めたわけじゃないからな」
「お〜カーマ。いつの間にそこに」
「さっき起きたところだ。それで、今日は何をする感じだい?」
「この前ソニアがよく通っているって言ってたお店に行こうと思うんだ」
「へ〜、魔道具店か。良いとこ狙うじゃねえか」
「私がよく使う魔道具とか売っていましたか?この前は無かったので…」
「最近販売開始したって言ってたから売ってると思うよ」
「じゃあ、今日はそこに行って買い物するか。強敵ムーンウルフを倒したから報酬がいつもより多いんだ」
「こっちよ、ついてきて」
砂埃を起こして全速力で走っていった。
「あ、おーい!待ってくれよ〜!」
「…はあ。私が案内します。ついてきてください」
「そうさせてもらうよ」
スタタタタタ
「あれ、遅いわね。まっ、いいか」
店の前〜
「やっと来たわね。遅いわよ」
「音速のお前についていけるわけないだろ…」
「あっ、そっか。ごめん、忘れてたよ」
(自分が音速なことを忘れていたのかよ…)
「それで、ここはリナさんっていう店主さんがお店を開いているんだ〜魔道具の他に魔法のことにも詳しい人なのよね」
「私も何度かお世話になりましたね」
「お店の雰囲気良いね。いかにも魔道具が売っているっていうのが凄く感じるよ。まあ、まずは初対面ってことで挨拶しないとな」
カランカラン
「リナさーん、いつもの頂戴!」
「はい、分かりました。こちらですね…」
「店主さん暗くないか?」
斜め下ばかりを見ているリナさんに違和感を覚えるライキ。
「俺もそう思う…リナさん、何か変なものでも食べていないですよね?」
「はい、何も食べてませんよ。実は私……魔王軍幹部の一人なんです!」
ドヤァとした顔でこちらを向いた。
「なんだって!?」
シャキン
俺とライキは武器を構えた。
「さあ!私を倒せるものなら倒してみなさい!……と言うとでも…」
「ストーップ!」
「あわわわわ!」
バタン!
リナさんに向かってソニアが飛び込んでいった。
「ゑ?」
リナさんは、ゆっくりと立ち上がってこう話した。
「はあ、はあ。幹部の一人なのは事実です。ですが、私は魔王軍の仕事を放棄していますので。普段は一般の冒険者の味方なのでご安心を。裏切ったりなどは絶対にしませんので。なので、龍も八体中七体の解放で大丈夫なんですよ…」
息切れしながら話してくれた。
「ごめんね、勘違いさせちゃって。リナさんは魔王軍の幹部なんだけど何も襲って来たりしないから安心して。いつも、初めてのお客さんに対してドッキリ対象でこんな感じの雰囲気出してるけど。いつもはこんなんじゃなくて明るい感じの人だから…もー。いつもドッキリ対象のやつ、やめてって言ってるのに!」
「フフフフフ…」
「フフフフフ…じゃないわよ!」
「あわわわわわ!」
バタン!
また、リナさんに向かって飛び込んでいった。
「今なんて。龍?解放?」
「ユウ、冒険者なのに龍を知らないんですか?この世界の龍というのはですね、まず八匹の龍がいましてそれぞれいろんな役割があるのですが……」
「それが、魔王軍と何か結びつくんですか?」
「それが、魔王軍の幹部達が一人一人それぞれの龍を暴走させ、危ないことになっているんです」
「じゃあ、今はどの龍以外は暴走しているんだ?」
「水の龍、ハイドロドラゴン以外は暴走しています。ハイドロドラゴンはマリーナという街で祀られている龍ですね」
「マリーナ…また機会があれば行ってみよう…ところで魔王軍の仕事をしていないのはどうしてなんです?」
リナさんがカウンターテーブルから頭を出して周りをキョロキョロ見渡した後、ゆっくり上がってきた。
「はあ、はあ。魔王様ととあるお話をしまして…論破を」
「なら、どうやって…」
「はあ、はあ…聞きたいですか?」
息切れしながらニコッと俺に微笑んだ。
「お願いします」
ここからリナさん本来の明るい口調と姿に変わり、さっきまで長かった髪の毛が短くなった。
「そうですね〜魔王様と、とあることで口論になっちゃいましてね…………って言って論破してやりました。魔王様泣いてましたね(笑)」
ニコニコしながら話してくれた。
「こ、怖い…」
ソニア以外皆、青ざめてしまった。
「さっきからずっと気になってたけど、リナさん服装変えた?」
「あ〜…実は少し太ってしまいまして…服の種類やサイズを変えてみたんです…」
「ふーん。だから、初めて会った時はまな板だったのがふっくらしたのね」
キョロキョロ(汗)
目が泳ぎながら少しずつリナさんの顔が赤くなっていった。
「あの、リナさん」
「は、はい!?」
急に呼ばれたのでリナさんは少し高い声が出てしまった。
「リナさんって元はそんな話し方なんですか?」
「そうですよ〜怖がらせてしまいましたか?」
「いや、オイラは大丈夫、だった…か、な」
ライキは冷や汗をかいている。
「怖かったのがバレバレだぞ、ライキ」
「怖がらせてしまったのであればすみません。それで、このボムでしたね。後は…」
「この魔道具はなんですか?」
気になったのか、とっさに商品の詳細を聞こうとするカナ。
「この魔道具はですね、飲むと攻撃魔法の威力が30分間だけ急上昇(一個につき三倍の威力)します〜こちらはですね〜……」
リナさんもカナに対して丁寧な説明をしてくれている。
「買っていきましょう!ユウ、これら全て買って良いですか?」
目を輝かせながら魔法瓶をこれでもかと抱き抱えてお願いしてきた。
「まあ、今日はお金があるし良いよ」
「ありがとうございます!」
「ところで、ユウさんの後ろにいらっしゃるのは…」
『見えるの!?』
「はい、私は人間の姿をしてますが、ゴーストとアンデッドの遺伝子を持ってますから。左右にあるこのソウルを使うことで人以外でも見える感じです。その他にも特定のモンスターや人の居場所なんかも探し当てられますよ」
「だから、ドアの前からでも初めてののお客さんかどうかが判断できたってことか〜」
「そういうことです」
「ありがとうリナさん。また来ます!」
「またいらしてくださいね〜」
「さてと、もう昼過ぎ!?早いな」
「まあ、起きたの午前の10時ぐらいですからね」
「さて、どうしますか?皆さん」
「どうかしたの?ユウ」
「強敵が出てきた際、HPが1の俺は別にいいんだけどヒーラーというものが必要な気がするんだ」
「うう、私が回復魔法さえ覚えていれば」
「そんなに自分を責めなくても。二人とも友達仲間欲しいだろうし」
「それは、そうだけど…」
「一旦ギルドに行ってみるか?」
「ですが、今募集してしまった際、寝る部屋がないですよ」
「そうだな、うーん…」
「アタシ、友達が増えればいいだけだし。強敵が出るようならヒーラーの友達に連絡するし大丈夫よ」
「な、ならいいんだが」
「まあ、今のところ大丈夫だって。幹部ほど強い奴が来ない限りだけど」
「あ、それフラグ」
「大丈夫、滅多に起こらないって」
「それも、フラグ」
二度もフラグを立ててしまったライキ。
「よし、後何かすることあるか?無いなら、クエストに行くっていうのはどう?」
「それもそうね。行ってみましょう!」
ギルド〜
「クエスト、クエスト〜」
るんるん気分で良い感じのクエストを探すソニア。
「ねえ、これなんかどう?アタシ達も前よりある程度強くなったわけだし、難易度がムーンウルフと同じぐらいなら勝てるんじゃない?」
「試してみるか、何事にも挑戦してみるのも大切なことだしな」
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