四話 仲間ができて…

〜ギルド〜


俺達のテーブルに来たのは、かなり若い見た目をした美少女と俺より少しお姉さんのような見た目の美少女。どうやら俺たちのパーティーに入りたいらしい。あまりにも美人だったため、かなり緊張している。


「えーっと、まず自己紹介の方からお願いします」


まだ緊張がほぐれていなかったため、少し棒読みになってしまった。


「まず、魔法使い?の君から」


「私はカナと申します。ニホンという国に興味がありまして…職業は貴方が仰る通り魔法使いです」


「えっ…なあ、カーマ。ここって他の国とかを知っている人とかもいるのか?」


小声でカーマに聞いてみた。


「まあ、魔法使いだし。魔道書庫、いわゆるお前の世界での図書館みたいなところで色々調べてるんじゃね?」


「へ〜…じ、実は俺、日本から来たんだ」


「え〜!そうなんですか!?後で色々、ニホンについて教えていただいても良いですか?」


「もちろん、俺でいいなら」


「ありがとうございます!」


礼儀正しいし、俺のメンバーに入るには勿体ないぐらいだ。


「で、次は赤髪の君」


「アタシはソニア。職業はハンター。カナの幼馴染でアタシ達もちょうどパーティーを組もうとしていたところだったの。そこでたまたま同じぐらいの年代の人がパーティーを募集しているのを見て、来たってわけ」


「なるほど〜でも、ハンターってどんな職なんだろう?狩りでもするのかな?」


「うーん、アタシの一族の能力なんだけど、アタシの一族の素速さは音速なの。これを有効活用してモンスターに気づかれないように倒すのよ」


「音速!?す、すげ〜。あっ、俺らまだ自己紹介していなかったな。俺はユウ、職業は忍。で、こっちは鬼のライキ」


「よろしくな」


「それで俺の後ろにいるやつは闇神のカーマ」


「俺が見えるのならばパーティー成立のようだな」


「これからよろしく」


「よろしくね!」


明るげにソニアが言った。




〜次の日〜


昨日はお金に余裕があったので、ギルドでお風呂に浸かり、二階にあるそれぞれ一人一人部屋に分かれてそこで一泊した。


「おはよー」


「おはようございますー」


皆、次々に起床しギルドの一階に集合した。


「なあ、ユウ」


「ん?どうした、ライキ」


「起きて早々だが、仲間も増えたことだし、そろそろ狩りに行こうぜ」


「狩り?…あ〜、クエストのことか」


「カナ達はクエストに行ったことは…」


「一応ありますが、大した腕の者では…」


カナは自身を卑下しているようだ。


「何、弱小冒険者の雰囲気を出しているのよ。カナはね、大体の魔法は使える優れた才能の持ち主なんだから」


カナの肩に手を置きながらソニアが話した。


「ほー…それはいわゆる、優秀な魔法使いってことかな」


カナは軽く下を向き、褒められたのか顔が少し赤い。 


「よーし、クエストに行ってみますか!」


『お〜!』




〜大草原〜


「ウー……」


(あんな所に暴走したオスのシカがいる。あれはマッディア。土や泥のマッドと怒り狂うのマッド、さらにシカのディアーが合わさった独特な名前。名前の通り土属性らしい。こいつらが今の時期畑を荒らすので討伐依頼がされていた…ゲッ。あんなところにムーンウルフもいるんだが…気付かれないようにしよ…)


「前とは違って、二人も増えたし流石にムーンウルフも倒せるだろ」


ライキが言う。


「それフラグなんじゃ…」


「ウー!!」


「うわっ、こっちにシカが突進して来ているぞ!」


「どこ、どこにいるんだよ!?」


「!?ライトニングハンマー!?」


慌てて撃ったのか別のところに雷が落ちた。


「しまった、外した!」


「さーて、アタシの出番のようね」


ソニアは剣を構えた。その後…


シュン


「きっ、消えた!?…いや、猛スピードで走ったのか!?」


「ただいま〜」


「エッ、いつの間に」


「ちょっと見てて〜」


ポチッ


ソニアは持っているボタンを押した。


ドガーン!


マッディアの周辺が爆発した。


「爆発した!?…一体、何を使ったんだ?」


「ふふーん、これはブレイズボム。火属性の爆弾ね。爆弾だから火属性しか無さそうに思うかもしれないけど、他にも水だったり風だったりその他にも色々あるのよ。この起爆スイッチに全て対応していてね、これを押すと爆発する仕組み。これらは、とあるショップで買ってるんだ〜」


「いろんな種類があるのか〜今度それを買っているお店、教えてもらっても良いかな?凄く気になる」


「クエストが無い日とか、暇な時に案内するね」


「ありがとう」


「なあユウ、お話のところすまんがこっちから大ーきくて黒ーい影が近づいて来てる気がするんだが気のせいか?」


ジト目のカーマが呼びかけてきた。


「カーマ、何かいるのか?…ゲッ」


自分の真後ろにムーンウルフが現れ、目が合ってしまった。


「アオ〜ン!」


「これは…ひとまず皆俺に捕まってくれ!」


「えっ、なんでよ」


「いいから早く!」


ビューン




「なるほど、ユウは瞬間移動ができるのね。理解したわ」


「一旦、茂みに移動したものの、どうする?」


「今は夕方だ、夜になるとウルフはあり得ない程強くなる。だが、こんな所でオイラ達も負けられねぇな」


「そうなんだけど、どうすれば…」


「私の魔法を使いましょう。遠距離の敵には魔法が一番です」


「そうだ、それがあったな。ところで、魔法はどんなものが使えるんだ?」


「大体は使えるのですが相手は闇属性…なので光属性が有利ですかね」


「なら、その光魔法でお願い」


「分かりました」


カチャ


カナは杖にあるダイヤルを回し、光のポーションをはめ込んだ。


「これで光属性の攻撃ができます。いきますよ!」


「!ブライトブラスト!」


木の間から不意打ちで放った。


ズババーン!


(す、すげ〜!魔法、初めて見た)


「アオーン!」


「やっぱ、一撃では倒れないか…」


すると、ウルフの姿が変化した。


「何っ、青い炎を纏っていて尻尾が九つ…九尾の状態か!?」


「なんだ、それ…」


「話してる暇はない、とにかくやばい状態だ」


「そうはいきませんよ!もう一度」


「ブライト…」


「待て!」


「どうした、ライキ」


「一つ言い忘れが…ムーンウルフは日没以降になると光属性の攻撃を全て吸収するんだ。もうすぐ夜になる。そろそろ、その効果が発動してもおかしくない」


空を見上げてみた所月が出始めていた。


「やばい、月が出てきた。なら、ひとまず俺らで足止めしよう」


「分かったわ」


「おう」


「カナ、一旦光攻撃は中断だ。他の属性でお願い。俺達三人でウルフの足止めをする。魔法を放つ際、瞬間移動するから遠慮なく放ってくれ」


「分かりました。なら、私の得意属性…風属性でいきますね!」


そう言うと光属性ポーションを外し、風属性のポーションをはめ込んだ。


「カナが準備している間に…」


「!ドレインスラッシュ!」


ザシン!


「痺れろ!」


「!イナズマハント!」


ジリジリ…


「動く範囲に制限をかけるわ」


「!ブレイズサークル!」


「これで逃げられないはず。今だ、カナ!」


ビューン


「いきます!風の刃よ!」


そう言うと風の刃が沢山出てきた。


「!ハリケーンブレード!」


ザシン!、ザシン!、ザシン!…


風の刃がウルフに襲い掛かる。


ヒュールルルル!


風魔法の影響か、風が強くなってきた。


「これ以上強くなれば俺らが飛ばされそうだ…」


「大丈夫。こういう時はこの姿勢だ」


ライキがしゃがんで独特なポーズをした。


「こ、こうか?」


「そうだ」


「ふ、二人とも!変なことしてないで、カナを見守ってあげてよ!」


「これは、れっきとした強風に耐える姿勢だぞ」


「そんなわけ…」


「やってみろよ」


「…どれどれ…お、案外楽だわ」


三人とも同じ姿勢で強風を凌いだ。


「…だろ」




そんな茶番はさておき、魔法を放ってウルフにダメージを与えたカナはというと…


「はあ、はあ。どうでしょうか…」


「グルルルル…」


バタッ


「ムーンウルフを倒したのか…」


「やった~!」


「待て、何か来るぞ!」


ライキが言った。


ボボボボボーン!


「さっきの人魂!道連れ攻撃か!?」


「…なら、一か八かこの聖水を。えーい!」


ギュイーン


カナが投げた聖水が人魂を吸っていく。


「はあ、はあ。何とか勝てましたね。吸収性能の聖水を持ってて良かったです。これは開けるとまた出てしまうので持って帰りましょ…う?」


『ん?』


「…なんですか、三人揃ってそのポーズは」


『……あっ』


(お恥ずかしい…)




「間一髪だったな。カナが聖水を持っていなかったら危ないところだった。ありがとう」


「変なもの買っておいて良かったです」


「ライキもありがとう。教えてくれなかったら道連れを食らってたよ」


「どういたしまして。今日は大変だったな。ささっとギルドへ行って報酬もらって俺の家に帰ろうぜ」


「まあ、みんなお疲れさんってことだ。もちろんカーマもな」


「まあ、俺は何もしていないけどな」


「…よし、ギルドに戻ろう」


「おう」


ポチッ


「あっ」


『あっ』


「は?」


『はあ…』


ライキが何故か草原にあったスイッチを踏んでしまった。


ボン!


スイッチが大きなバネに変化した。


「これって…」


ボヨーン!


『うわああああ!』


「もー、なんであんな所に罠があるのよ!」


「一件落着かと思いきや…なんで踏んだんだよ」


「そんなの言われても気づかないだろ、あんなの」


「フラグ、しっかり回収しましたね」


『いーやあああ!』




スタッ


「おっと」


ガシッ


「あぶねえ…」


ズボッ


「アフッ!」


俺は木の上に着地し、ライキは木にぶら下がり、ソニアは顔が葉っぱに埋もれていた。


「うわあああ!」


「ん?…あわわわわ!ウッ!」


ガシッ


なんとか、カナを落とさずに済んだものの…


「お姫様抱っこ…」


(何、この罪悪感…)


「う、うーん。ん?」


キラキラ…


(そんな、「私を助けてくれたんですか?」みたいな目でこっちを見るな…周りの空気が重くなるだろ…)


メキメキ…ボキッ!


「あっ」


ドテッ!


『えっ!?』











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