二話 まあ、ひとまず状況把握…

〜初心者の街〜


「うーん…ハッ!ここが、異世界というものなのか!?」


「そうさ、ここが異世界。俺らはちと山の方に降りちゃったみたいだけど。そそ、俺に対してはタメ口で良いからな。その方が話しやすいだろ」


「そうだな、そうするよ。ていうか、カーマ。下半身薄いじゃん」


「勿論。背後霊というのはこういうもん。一つ言っておくと、俺は戦えない。お前に攻撃系の能力の殆どを授けたからな。あ、それとさっき突き飛ばしたけど何も痛くなかっただろ?」


「本当だ全く痛くない…しかも服装が違う!?」


「ああ。服装はあんなボロボロじゃあ色々とダメだし、俺の仕込んだやつを着せてみたんだが…どうだ?」


「いつの間に…でも、結構動きやすくて良い感じだよ。ところで、さっきから頭の上に表示されてるけどこれ何?」


「これか?これは…初期ミッションだな!」


「初期ミッション?」


「おっ、早速ミッションが来てるな…ん?クッ、職業 無職(笑)」


カーマはケラケラ笑った。


「何かおかしいのかよ」


「お前無職だったのか?生前、普通学生なり何なりあるだろうよ…でも、かなり山奥に住んでいたならそれもそっか」


(さっきまで笑ってたのにもう冷静になってやがる)


「で、ミッションの続きと…おっ!」


!!パーティーメンバーを作れ!!


「だってさ」


「だってさ。じゃなくて、どこ行ったら良いかとか何か無いのか?」


「ん〜、グラテナとかいう機械か何かがあったんだよな。ギルドに」


「ギ.ル.ド?」


「ああ、そこで色々できる。パーティーメンバーを募集したり、職業登録したり、その他諸々。いわゆる冒険者たちの交流場所っていう感覚で良いと思うぞ」


「職業が無い状態じゃ何も出来ないから登録がまず必須だと思うな…よし、行ってみるか」


「お前、瞬間移動できるんだから慣れるために使ってみたらどうだ?」


「どうしたら使えんの?」


「ただ単にこう、場所を念じるだけ。やってみな」


「こうか?」


目を瞑って場所の名前を念じてみた。


ビューン




「ん〜、うわ!本当に瞬間移動できてる」


「瞬間移動は制限ついてるから使いすぎ注意な」


「何回まで使えんの?」


「一日三回。それを超えると服だけその場に残る仕組みだぜっ」


カーマが親指を立てながら笑顔で答えた。


(辛すぎる。気をつけなければ…)




〜ギルド〜


ガチャッ


ドアを開けると人で賑わっていた。


「店員さ〜ん!注文良いすか?」


「マンバのウィスキー一つよろしく!」


「姉ちゃん、これ三つ欲しいんだけど?」


「は〜い!…ただいま!」


食堂の方は凄く忙しそうだ。


「え〜っと、職業登録は…あの、すみませ〜ん」


「は〜い!」


「あの、職業登録ってどこにありますか?」


「あっ、職業登録の方ですね。こちらへどうぞ〜」


ギルド内のお姉さんに場所を案内してもらった。


「このグラテナに触れてください」


「えーっと、どれどれ…」


俺がその機械に手を近づけたその時…


カブッ!


目が青白く光り、噛みついてきた。


「イタタタタタタ!ってあれ?痛くない」


「あっ、驚かせてしまってすみません。グラテナというのはご自身の手を噛ませることによって能力などを検知するんです。一応モンスターですが痛みは全く無いようにしつけたのでご安心ください」


(一応モンスターなんだ。モンスターをしつけるなんて凄いな)


「モグモグモグ…」


腕を甘噛みしている。


キュイーン!


「検知できたようです…なんと、素早さと攻撃力が大幅に特化しています!ですが、体力が…」


「HP…1だ、と…」


「HP低すぎだろ(笑)防御をバッサリ捨てた攻撃タイプってところかな(笑)」


カーマがまたケラケラ笑った。


「でも、攻撃力と素早さが高いので一応このような職にはなれますよ〜」


と、自分が就くことの出来る職の内容を見てみた。


(せめて、得意なことが関連してくる冒険職の方が良いな。俺は小さい頃から走る、木に登るなどが得意だから素早いのだろう。それで、よく分からないけど攻撃力が高いことを踏まえると…)


(俺がなることができるベストな職はし.の.び…)


「なら、この忍って職に就きます」


「忍ですか〜良いですね、貴方にピッタリの職業ですよ」




〜ギルドの外門〜


「登録終わったけど、カーマは俺以外には見えないのか?さっきからお姉さんも存在自体気づいてなさそうだったし」


「そうだな。実質ゴーストみたいなもんだからな。後々作るであろう、ユウの仲間には見えるようになる。まあ、そうで無くても見える例外もいるけど」


「へ〜、自然と仲間には見えるようになるのか。後はパーティーだな。もう夕方だしパーティーは明日にしようかな」


「それも良いだろうな」




〜はじまりの山〜


「で、今日はどこで寝るんだ?寝床とかあるのか?」


「しまった。忘れてた」


(ウソだろ…)


「どこで寝ればいいんだよ」


「そんなこと言われてもなあ…想定外の話だし」


カサカサ…


木の茂みから音が聞こえる。


「…気のせいか」


カサカサ…


「今度は上の方から…」


ヒュン


「…ん?」


何かを感じたので振り返ってみた。


「ガー!」


目の前に現れたのが突然すぎて、獣のような声に聞こえた。


「ギャアアアアアアアアア!!出た、獣だ!!」


一目散に逃げた。


「お〜い、待ってくれ。オイラは悪いやつじゃねぇ〜」


キキー!


急ブレーキをかけた。


「ん?カーマ、一旦戻ろう」




気持ちが落ち着いてからしばらく経ってから、その黄髪の少年はライキと名乗った。


「オイラは鬼のライキ。驚かせてしまってすまなかったな」


「鬼?」


「そうだ。雷を操りしこのエレクトロンが俺の武器だ!」


背中に背負っていた金棒を俺に見せた。


「ちょっと触っても良いかな?興味がある」


「良いけど…ちょっとま…」


「ああああああああ!」


ビリビリ…ビリ


「ああ、すまない。俺以外の奴には感電するんだ、この金棒…って、気絶してんじゃん」


「ユウ、しっかりしろ。しょうがない、復活魔法使うか…」


カーマが魔法を発動させると、俺は目が覚めた。


「初日で死にかけんなよ。手間かけさせやがって」


「ごめん、カーマ。ところで、ライキはなんで俺らについてきてたんだ?ストーカーか?」


「んな訳ねえだろ。ちと、仲間探しをしていたのさ。そしたらちょうどパーティーメンバーを探しているって話していたからさ」


「えっ、まさか俺が、ミッション内容見ている時からどこかにいたのか?やっぱストーカーじゃん」


「な、何故そのような結論に、なってしまうんだよ、そもそも、家がこの森の奥に、あるから、それで…」


ストーカーと再び言われたのか、戸惑いながらも事情を話してくれた。


「家が近くだったのか、それなら早く言ってくれよ」


「言おうにも、タイミングが無かったんだよ」 


「それで、ライキは本当にパーティーに入ってくれるのか?」


「そりゃあ勿論、でなきゃここまで粘らないし。今後ともよろしく頼む!」


「こちらこそよろしく、ライキ」


「で、後ろの奴は誰なんだ?」


「この俺が見えるってか。俺はカーマ。よろしくな」


「カーマが見えるのは例外を除いて、俺と仲間だけらしいんだ。だから、俺とライキは仲間になったってこと」


「パーティーに入れたなら良かったぜ〜お礼と言っては何だが…ユウ、寝床無いんだろ?狭いけど家泊まっていきなよ」


「良いのか?」


「仲間=友達。友達を家に招くのは普通のことだろ」


「寝床が無いのが唯一のピンチだったんだ。助かるよ、ありがとう」




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