第一章〜

一話 さあ、異世界生活へ!

「ユウ〜こっちに来て〜」


「ほーい」


俺はユウ。この森で姉と2人で暮らしている。


親は?って思うかもしれないけど、俺たちはそもそも親の顔を知らないんだ。


おばさん曰くここに赤子が捨てられていて、そこで拾ったらしい。


そんで、自分の子のように俺たちを大事に育ててくれた。


俺が13歳の頃、自立して二人で暮らすことにした。住まいは手作りのツリーハウス。自分でも言うのはアレだけど、結構器用なんだ。


えっ、食べ物はどうしているかって?


それは、おばさんやこの辺の村に住んでいるおばちゃんやおっちゃんが農家だからおすそ分けしてもらっている。


その他は色々工夫して道具を作って釣りとか狩りとかしている。まっ、そんな感じ。


「で、姉さん、何すれば良いの?」


「見て見て!こんなにたくさん釣れたんだよ!今からこれらの魚を焼くから、枝集めを手伝って欲しいの」


「分かった、これぐらいの大きさのを集めれば良い?」


落ちている枝を拾って聞いてみた。


「そう、そんな感じで良いわ」




一時間後〜


「よいしょっと。これだけ集めれば大丈夫だろ」


「じゃあ火、つけるね」


ボ〜




「う〜ん!美味し〜い!ご飯って自分で苦労して採るとその分だけ美味しく感じるのよね〜」


「うん、めっちゃ美味い!」




でも、そんな楽しい日々もあまり続かず…4年が経ったある日、突然…俺の姉さんが亡くなった。原因は、ヒグマの襲撃による大きな傷らしい。


余りにも現実を受け止めることが出来なかった。それでも俺は前を向いて生きよう…と思いながら、毎日色々頑張っていたんだが…


メシメシ…ガタッ!


「アッ…」


グキッ


姉さんが逝ってから一年後…


(あ〜あ、やってしまった。まさか、自分で作った家が原因で死ぬなんて…)





「ん…ここは?」


目を覚ますと異空間のような場所にいた。


「やっと起きたか」


「…誰だ!?」


その男は高身長(180センチはあるか?)に赤黒い髪に赤いロングコート、黒の首飾りををしていて左目が髪で隠れている。


「驚かせちゃったか?俺はカーマ。闇神かつ早くして死んだ人を異世界へ転移させる者。お前、名は何と言う?」


「…ユウ」


「そうか。ユウ、どうやらお前は、ツリーハウスの床が割れて、そっから落ちて。着地したかと思いきや、下に木があっただけで一歩進んだらまた落下して首を折ってしまったようだな。更に顔面から落ちたせいで、おまけに右目を失明したようだ」


(普通に、家の床が割れてそこから落ちたで良くないか?)


「で、俺はどうなるんだ?」


「安心しろ。長く人生を歩めなかったものは異世界へ無理矢理でも連れて行くことになっている。そこで優雅に暮らしてくれ。いわゆる異世界生活だ」


「異世界生活?なんやそれ」


「説明しよう!異世界生活とは簡単に言うと魔法なんかを使ってモンスターをポカポカポカー!ってやっつけるような人達が沢山いる所で生活することだ。モンスターや魔法があるっていうのが現代と違うだけでそれ以外は大して変わりはないと思うぞ」


ジェスチャーをしながら俺に説明してくれた。


「ポカポカって…モ、モンスター!?」


「ああ、危険なモンスターだ」


「やだ!もう、死にたくない!あんな痛みもう味わいたくないんだが!」


急いで逃げようとしたが、あの世だからか先に進んでも何も見えない。


「やっぱ皆、最初は同じこと言うんだな〜…大丈夫。流石に無防備な状態で連れて行ったらイチ○ロだろうな。だが俺は闇の神、一応ちょっとした力は伝授できる」


「じゃあ、俺にその力を分けてくれると」


「その通り。まあ、俺がユウに授ける能力は主に三つ。シャドウハンド、ドレインスラッシュ、瞬間移動だ」


カーマが眼鏡をかけてパワーポイントを出し、説明し始めた。


「おお、かなり強そうな攻撃。後右目がチカチカするんだけど、これは…」


「あ〜、目が失明したままここに来たから、後遺症的な物がそのまま残っている感じだな。俺の目を共有するよ。オッドアイだし、かっこいいだろ」


そう言うと、指パッチンをした。すると…


パチン


「あ、見えるようになった。でもまだ少しぼんやりしているような…」


「もういっちょ失礼」


パチン


ファサッ


「うわっ、髪が伸びた!?い、色も!?」


カーマが再び指パッチンした直後、髪の毛が目が隠れるほど伸び、黒髪だった髪も銀髪になった。何気に色々と親切にしてくれていたのでここから敬語で話すことにした。


「全く見えない。片方だけでも切ってくれません?後、何故伸ばして銀髪に?」


「わりい、左目だけ見えるようにしておくよ」


パチン


「また、髪型が変わった…ところで髪色を変える理由は何かある感じで?」


「一つは目を復活させる際、そのままだったらなんかグロいだろ。目を共有したとしても二日ぐらいはぼんやり見える程度で、完全にはくっつかないからな。後は…まあ、俺のチョー勝手な偏見だけど髪が黒や茶色はなんかピンとこないんだよな。異世界の人は日本の人とはちと違った感じだからさ。そのうち慣れてくると思う」


「だから、右目がまだぼんやりするのか」


「あ、そうそう。俺もついでについて行く。まあ、実体そのものが行くのではなく背後霊的な存在で行かせてもらうがな」


「なんでですか?」


「なんで?そりゃあ誰も無しじゃ生きるの難しいだろ。いつもはサポーターのような者をついて行かせて相手が生活に慣れたら帰ってくるって感じだが、普通に俺もそっちに行きたいって前から思っててさ、次の死者が来たらついて行こうという計画にピッタリ一致した感じ。つまり偶然さ」


「あ〜、言われてみれば納得いくかも」


「じゃあ早速出発!」


「いってら〜」


「行ってきま〜す…て、何でだよ。お前が行かないと俺も行けないんだが」


「天国って選択肢は?」


「お前まだ、そんな所に行きたがってるのか?楽しみがねえなあ。天国は一応言っとくが、なーんにもねえぞ。毎日寝るだけで遊び道具なんかもないから退屈なだけ。楽しいことなんかありゃしない。異世界は楽しいぞ。ここだけの話、可愛い子もめっちゃいるからな」


パワーポイントでまたまた説明をし始めた。


「マジか!…いやいやいや、理性を保とう。ま、異世界に興味は出てきたかも」


「そうこなくては。じゃあ今度こそ楽しい異世界生活を楽しんでくださいな!」


「待ってください、その世界にいろんな人を呼び出すってことは何かしら目的とかはあるんじゃ…」


「おっと、すっかり忘れていた。まあ、このパワポを見てくれ」


そう言うと、再び眼鏡をかけてさっきとは違ったパワポを用意した。


「今から転生させる世界は、魔王と8体の幹部がいる世界だ。肝心な目的はというと、できたら魔王討伐をよろしくって感じかな。あっ、そうだ。もう、俺が授けた能力は伝授してあるからここで練習していくと良い。ここは異空間だから何をしても壊れない。ま、とりあえずこの人形に攻撃してみな」


「よーし、えいっ!」


ザシン!


右手から斬撃が出た。


「お〜、こうやって使うのか。ならついでに…」


「!シャドウハンド!」


ドッカーン!


「お〜、凄まじい威力。でも、少し重いな。頑張ってはみるけど、余り期待はしないでくださいよ」


「流石に今から行く初心者の街には強敵なんていないから安心してくれ。さあ、異世界へ出発だ。この穴から落ちてくれ」


カーマが指を差したところに穴が空いた。


「何これ?」


「異世界に続く道だ。ささっ、落ちてくれ」


「いやいやいや、俺さっき落ちたばっかなのに更にトラウマ植え付けるつもり!?」


「そんなこと言わずに、ほいっ!」


背中を押された。


「うわあああああ!」


「よ〜し、俺も…ヒャッホー!」












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