『めぞん一刻』

ネコ エレクトゥス

第1話

 最近日本でばい菌扱いされている東京。その東京の中でも汚れたアパートに住んでもうすぐ4年。契約の更新が近づいた。別に引っ越してもいいのだが金もないし、今のこのご時世のこともあるし、まっ、とにかくめんどくさい。もうしばらくここに住むことになりそうだ(ところで、『めぞん一刻』の舞台となったとされる町は僕の住んでるところから自転車で行けるくらいのところにある。あの辺も駅前はだいぶ変わってしまった)。


 しかし4年も同じところに住んでるとだいぶ他の人の気の付かないところに気付くようになる。実はうちのアパートの階段のところには一か所内側に小さな穴が開いていて、そこに毎年アシナガバチのようなハチが巣を作っている。雨にもぬれず、天敵からも狙われにくいところをよく見つけたもんだ。そのハチが今年もやってきた。彼女があそこに巣を作っていることは僕だけの秘密。

 雨の日にミミズを見つけたので部屋にある鉢植えを耕させようと思って持ち帰った。それから数日たった朝、部屋にアリが行列を作っていた。何でそんなことになったのかと行列の先を見てみたらミミズの干からびた死骸があった。どうやら鉢植えの底から脱走して死んだらしい。それにしてもアリたちはミミズの死骸のありかをどうやって感じ取ったのか。そしてどの隙間から入れることを発見するのか。自然界は興味深い。しかしアリたちには朝食は外で食べていただくことにした。

 この間はアパートの入り口でちょっと変わったクモを見つけた。横に4センチほどのクモで、後で偶然分かったのだがアシダカグモという名のクモらしい。このクモはゴキブリを主食としているそうだ。ということはこのアパートにはゴキブリがたくさんいるということになる。ゴキブリが住みやすく、ゴキブリを食べるクモも住みやすい。まさに『めぞん一刻』と呼ぶにふさわしい。

 しかし考えるのだが、この『めぞん一刻』で一番奇妙な隣人は誰か?

 考えなくても答えは明らかだろう。僕自身。真向かいに新築のきれいなアパートがあるのだが、その向かい合った部屋に住んでる老夫婦に僕は気味悪がられているのが言われなくてもわかる。まっ、それでも『めぞん一刻』での生活は悪くはない。


 

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『めぞん一刻』 ネコ エレクトゥス @katsumikun

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