戯(そば)へ

気道から漏れた息が遺棄場所を求めていた

障子の奥の隅にでも影を選り集めて

何でもない日々がどうでもいいように

失せていく塵と誇りです


棄てられたパンプキンパイ

ダンゴムシの食卓に足が饐える

もう長い間放置されていた

葡萄色のシリコン爪に雪下のラメを植えて

なにもみえやしない

ただやわらあたたかさだけが侵蝕していく


教科書通り図書館未満の影日向に腰を下ろし

同じように息をして歳をとるように願い

非周期彗星

ひとさしの指で準えたように

ニンゲンの心模様は迷宮入りでしかなくて

違いなどありはしないはずの肩羽を擁いては

棘もないのに不透明な

傷もないのに雷雲は奔り

えらく腐って見える表皮を捲れば

それぞれの人生が描かれた

まっしろな模造紙が幾重にも重なっている


くしゃくしゃに折られたオンブバッタの栄華

何色だっていいじゃないか

塗り潰してしまえば

もう思い出にしまえるから

転んだつま先から無尽蔵に湧いていった

日照雨。ずぼらの手慰みにも額縁におさまる

淡水に足を浸して生まれ変わり

鱗が落ちるように涙も流れたらいい

真空管に棲みついた幽霊を追って

このレコード盤とともに汚泥を廻れば

舞台裏に転がしたA級玉は贋作だけど

もう離れない 放したくない


私はかわいく泣けませんし黒猫にも成れない

そのときどきを、わらいあえればいいですね

くすぐったい程度の猫じゃらしを以て 

私という傷跡を残したいものです

唯できるならば。

頬に残った涙の痕を辿りながら

あなたを知った気になってる


#詩コン 触

佳作いただきましたありがとうございます



そばえ そばへ【戯▽へ】

①たわむれること。あまえること。

②〔「日照雨」とも書く〕

ある所だけに降っている雨。かたしぐれ。

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