オラトリオ暗渠

オラトリオ暗渠


瞼の裏の薊の咎といつまでも追いかけっこする

流されたリボンの行方を探す道すがらの

どくだみを踏みつけては馨る、脳の芯がひたひたに擽るもの

甚振(いたぶ)られる頭上の笑みにすら透過光が酔ってふらふら

浅縹に遷る空蝉と向日葵を掬いたいので

冷たい夏の艶首を水槽の柩に侵している

濡れ羽色の簾が狐面を隠しながら恥じらいながら

腐りかけた花環を指先で覆う、目先の常々が肌を指す

誰かが落した片方だけの足首から先が泳いでいた

凍り付いたカンカン照りのおひ様の気紛れによって

君はこれからも閉じ込められ続けるのだろう

選別された雑草唄の忌み子の名をひけらかして戦(そよ)いだ

すみっこに転がる胚芽を血眼になすりつけても誑(たら)仕込む

膨らんで膿んだこの我儘の末、留目螺子のイカレタ天獄にて

感情線から飽いた口へ、漏れ出た豊穣の忌み子

地平へと汚物が垂れ流されていきます

たかが胡蝶がただしく生きて

そして誰かを犠牲にして殺りたい

そういう世界、お年頃の路地裏の未知で

青の今生が、今、さらにバイパスを伝ってないていく

   慟哭ばかりを取り除いては

美しく散った輪廻のように

レクイエムが聞こえない夜

序曲は静粛に四季を描いては燦燦と、由々しく準える死期を

横たわるは命の終わり、未来の始まりに誰であろうと必ず尽く

その陽に届くと云う、何時から引き裂いた背骨に添って下した呪いの填

重しに翔けて栄えた風羽根をも、地に足を降ろしても尚、悩ましく罹る

こめかみを摘まむものは時の海鳴りとも生きざまとなり

誰が為の頭上の冠、編みこまれた時の磔。瞬ぎて風と猛れよ

彼方に被さる藁胞子はきっとマンホールの奥底へ

雨宿りを繰り返すひとびとは明日の行く末を見ようとはしないから

死んでしまうための僕ら。誰が頭上に頂くのだろうか。

てのひらの蕾には虎眼石の填(はま)る痴情、名無しの明日の月が朱く昏く

渦巻状の首から先を化石達に注ぐ、

未来を除いた精子のような言葉たちは呻るばかりで

運命は楽譜にもなりえない

円形音楽堂の解体現場にて、湯切り口の膣はしまりなく

産卵列車を逃したオタマジャクシは孵るに至らず

唯、返る、還る、無く、亡く

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