みのかわはいで
爆心地までの距離は手を離せば届きそうな天と点に近い間となっている。高い山肌の頂に燃える炎が燻り焦がしていく、その新しき陽の、陰に隠れた真新しい心臓を抜かれた夥しい遺体を見た。
渋滞するバイパスへ続く銘々樹海の園、表には飽きのこないひなげしの花畑と誰かが埋もれたような曼珠沙華、奥には竹林が鬱蒼と。触り触りと鳥の肌撫ぜ浸けるような、今、かぐや姫の満ち足りた月が熟れていた。
滲み出す漆黒の星空を洩らしては蕩けゆく盆の月。空は白々しく開けていく、そうして天の道は厳かに海岸線を創り出し魅せた。
ほど止る熱波が地を焼くように皆を呑み込んで魂の器は決壊し血の底から溶岩を吹き出させる。断末魔の畝りに乗せ、土壌をもそめる死蝋の群れが域を籠める。
操られた時に代わる代わる、帰りたいと泣いていた 私 はどこかへ、ふらりふらりと引き寄せられる。そうして萎びた山の中腹まで気付けばそこへ底へ。今まで照りつけるような陽の光が燦燦と背を焦がしていたというのに、もう光も届かない。
此処に引きずられた人が伸びていくさまを、覆う、逆さまのひまわりが嗤っている。狂った至極色彩が鮮やかに薄れていく、磨り硝子の向こう側に滔々、遠くと置くは。
求めていたのだろうか、泣いてしまいそうな面を秘す。
蛆虫涌いた畜生の無惨な面が、凪いだ水面に、私を生めて、轟く。滝のような汗に蕩けていく、之は誰の脚だろうか。
眼球が破裂した悼み、稲光が怖くて端々が逆剥くと知って。否が応でもこんな日があり。どうでもいたたまれなくって、這いずりながら逃げ出しては迷子。してやったりの深淵に飲み込まれていく。
そこには狐面で終われる、櫓の淵をくるくると踊り明かすは宵の盆の廻り。歌い踊れ呑めや喰えやの喧騒が、ただ粛々と執り行われる、提灯の列に誘われてしまった。
私たちはここにかえってくるのだと、悟ってしまった魂の現れ。
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