【俄翊】
全てを失った後に未だハリのある紫陽花の首を刈取り、井戸から汲み上がる桶にひた飾る。それは残酷な人の欲で造られた、ひとときの艷に覚え要る。そう、君のことすら鎮めて殺りたいと。
淡々と、思い乍。
下界から齎されたモルフォの籠を撫で、広がるは広大なアオと土色の眼差しが、網膜に焼き付いて片時も離れない。羽の傷んだ蝶は欠羽のカケラを奪われた、ただ少しばかり身じろいだように。切り取ったのは自らであって、胸に仕舞われ、揺れる真鍮の泪と在る。
こんなこと続けてはならないのだ
息を潜めて生きて
だがみなみな気付かないふりをしているだけ
寝静まったばかりの春の嵐の奥、名残おしい妖艶な華はもうとって変わる。
もうすぐに梅雨も上がり、薄明の明けが白々しく、葉上に空蝉を置き、今に思考を引き戻す夏が顔を出す。
やすむいとまもなく、忙しない軌跡となり。この世をすべらかに監視する月と陽は囁きて詠う。
「私はもう眠れない」と亡者は嘆き交す。夜を待ち侘び、くらやみに抱かれるときを待ち焦がれて。この空いたそらに喰らわれて逝きたいと。
しかしあれはいつのことで、これは現実であるのだろうかと、殻に籠ったマイマイは紫陽花に寄生を繰り返す何時時も。
じとりと絖る道が、這い回る蒼葉に痕を遺した、今も。
痛々しい若葉の瑕は、視界を滲ませるけれど、泪など枯れ果てたのかも知れない。助けを乞いたくとも、声ももう奪われ、らくにあげれない、この思いを掃けるとこは無い。
一生身に纏う澱のイロハ。
くすんだ群青が行進する、小川のせせらぎが途切れ途切れに促す。雨雫が木漏れ日を輝かせるまで。あと少しだけの猶予をいただいで、此処に要る、あおいそらが、イドの底に現れ続けている。
紫陽花の首を水面に浸す、マイヨシゴト
それは予のつらであるから、決して見ないように。
覆われた蓋の奥底で蠢く、余白を喰らうものたちが
翔くときまで「どうか気づかないで。」
*
【俄翊】ガヨク
俄、にわか
翊、たすける/明くる日/翌日/鳥の飛ぶさま等
*
――さんには「全てを失った後に」で始まり、「私はもう眠れない」がどこかに入って、「どうか気付かないで」で終わる物語を書いて欲しいです。(#shindanmaker.com あなたに書いて欲しい物語3)
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