第一章 繁忙プレパレーション! 第二話
「──それでは、第一回体育祭実行委員会を始めます。実行委員長はわたくし、生徒会長の
黒板の前の司会席で
「副委員長の、
皆神高校では、体育祭と文化祭は生徒会
会長の右隣には書記のアリスちゃん、副会長の左隣には会計の景野君。ヒーロー部は会議室でロの字形に並んだ机の、黒板を前にして左奥の辺りに
ちなみに、初回の会議には応援団の団長副団長も参加するらしく、野田君たちもすぐそばに座っていた。つまり、全員参加だね。
「まずは競技について決めようと思います。用具の準備やタイムキープの観点から、基本的には昨年と同じにして、希望があれば
参考資料として配られた去年のプログラムには、『
「おれが考えたやつだ」と野田君が小声で
「その件だが、俺から提案がある」
不意に私の隣の席からすっと挙手したのは、お
「中村君、なんですか?」
「去年とまったく同じでは芸がないからな……新たに考案してみたのだ。これが、そのリストだ」
そんな言葉とともに配られたプリントを見ると、『
「風立ちぬ……ポール・ヴァレリーですか? これは、いったい何の文書なんですか?」
「体育祭の開会式から閉会式までを、詩的に表現し直した
フッ、と誇らし気に説明する中村君。……種目名を全部
昼に
「『
「百メートル走」
「『
「障害物競走と借り物競走」
「『
「玉入れ、パン食い競走、綱引き」
「レゾンデートル……! 〈存在理由〉を意味するこの用語をあえて〈
「わかるか、莉々夢=シュテルリーベ=ナイトメサイヤ」
ガタッと興奮したように立ち上がった莉夢ちゃんと、ガシッと
直後、「
「なん、だと……!?」
「何の競技かわからないので、プログラムの意味を成しません」
あまりにも真っ当な理由で切り捨てると、「さて」と朝篠宮会長は何事もなかったかのように一同を見回した。
「昨年、別の高校の体育祭でですが、借り物競走の際に借りたものが破損するトラブルが発生したという報告がありました。同様のトラブルを
ざわ、と会議室内が
借り物競走……結構盛り上がる競技だから、なくなっちゃうのは残念だけど……。
「
はあっとため息交じりに、そんな発言をしたのは九十九君。ちょっと、言い方……!
「リスクがある以上、対策なしに続行するわけにはいきません」
「リスクがない競技なんてないでしょ。走れば転んで
「
「じゃあ、こういうのはどう? 『借り物』じゃなくて、条件に合う人を連れてくる『借り人』競走にする。去年もそういうお題はあったけど、今年は人限定にするんだ」
……なるほど、それはありかも!
「確かに、連れて行くのが人なら、
朝篠宮会長は
「今年は借り人競走に
宝塚副会長の問いかけに、「ありませーん」「賛成~」という声が飛び
ニヤリ、と笑みを浮かべる九十九君。ちゃんとアイディアがあるなら、あんな突っかかるような言い方せずに最初から提案すればいいのに……ハラハラするなあ。
「競技について、他に意見はありませんか?」
「はい」と挙手をしたのは黒板係をやっていたアリスちゃん。
「毎年『マスゲーム』は不評なので、
だいたい運動ができなかったり、走りたくない子たちが集まって行われる組体操のようなものなのだけど、やる側も見る側も別に楽しくない
「生徒全員が、何かしら参加する機会を設けるための種目だったと思いますが……」
「全員参加種目なら大玉送りがあるし、なんでも無理に参加させる必要ないよなあ」
「マスゲームって練習が
「集団演技
高嶋君、九十九君、厨君の発言に、他の実行委員もうんうんと
「それでは、マスゲームの代わりの種目を何にするかですが……」
「二人羽織はどうじゃ!?」
鼻息
「それは競技として成り立つのですか?」
「うむ、最初は
同性限定、のところだけやけに力を込めて説明したぞ……むしろいかがわしいことしか考えてないでしょ、絶対!
「食品を
「はい、コスプレ競走!」
今度は高嶋君だ。
「具体的に何をするんですか?」
「最初は普通の競走で、途中に
「体育祭は
「はい!」
続いては虎之助君。
「トマト祭り! どっかの国であるらしいぜ。トマトをひたすらぶつけ合うんだ。参加者はみんな真っ赤に染まって、まるでド派手な
「却下」
ヒーロー部、
その後しばらく意見を
「そちらの一年生は何かありませんか?」
会議室を見回した朝篠宮会長が、ずっと静かだった右側の長机のグループに話を振る。
数人の生徒たちが
「スウェーデンリレーはどうですか?」
「スウェーデンリレー……」
ってなんだろう?
「走者にバトンを繋ぐごとに
首を
「はい。オレの中学でやってましたけど、注目度の高い種目でした」
「いいかもしれませんね。他に何かよい案がなければ、こちらで一度決を採りたいと思います」
新種目は賛成多数でスウェーデンリレーに決定した。
「他に何か、変更したい種目などはありますか?」
「はい!」と勢いよく手を挙げたのは野田君。
「玉入れだけど、
「移動式……というと?」
「籠を相手のチームの誰かが背負って
おもしろそう、という声があちこちから上がり、これも採用された。
おお、野田君なのにわりとまともな発想でビックリ……!
「それから、競技についてじゃなく体育祭全体についての提案がもう一つあるんだが……」
「なんですか、野田君?」
「いつも赤組と白組に分かれているが、今年はパワーアップさせて光組と
「
うん、いつもの野田君だ。
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