厨病激発ボーイ 青春症候群
第一章 魔王?襲来 第一話
今日から高校二年生に進級する私、
ぽかぽかと暖かい日差しに、
──キイイイーーッ!
何事かと目を向ければ、道路に飛び出した
危ない……!
とっさに「能力」を解放し、車は子猫を
子猫はサッと歩道に移動し、そのままどこかへ
車も、ほどなくして何事もなかったかのように、走り去っていった。
はあーっと思わず、深いため息が
聖瑞姫、十六歳。
好きな色は水色。好きな花は
一時期は、自分が異質であることに傷ついて
どんなに
色々あったけど、またこの学校に通い続けられることになって、本当によかった。
チラチラとピンクの花弁が
「しゅっしゅっしゅっしゅっしゅっ……てやぁー!」
そんな声を漏らしながら、歩道
背中部分に「来たれ! ヒーロー部」というダイナミックな文字が書かれたダンボールの、上部から頭を、左右から
彼こそ、私に居場所を作ってくれた立役者なんだけど……どうしよう、ちょっと仲間と思われたくない……。わずかにためらっていたところ、ふと彼がこちらに気付き、その
「ピンク! おはよう」
響き渡った声に、ピンク……? と不思議そうな顔でこちらに注目してくる生徒たちは、まだ彼の言動に不慣れな新入生だろうか。
私は
「野田君、その
「おれたちもいよいよ二年生、決戦の日が刻々と
額や首筋に玉のような
ダンボールの前面には、「I am a HELO」と書いてあった。また
ヒーローに
私たちが通っている
野田君はレッドを
もちろん、私が本当に「能力」をもっていることは話していないんだけど、私が時期外れの転校生だったことや初対面の時にものもらいで眼帯をつけていたこと、厨二っぽい名前をしていることなどから、仲間
最初は
「あんまりのんびりしてると
チリンチリン、とベルが聞こえて
「おお。おはよう、イエロー!」
「
「ごめん、里桜って誰?」
「あれ、まだ
「ところで聖、セーラー服やめたのか?」
「うん、あれは転校前の制服だったしね」
進級を機にリニューアルした私の新しい制服風ファッションを見て、「いいじゃん」と
「
待ち受けにした『
色々と残念な男子二人とともに校門を
えーと、私は……2‐Cだ。野田君と高嶋君も去年と同じC組みたい。
「うがああああっ、
まるで暴れ回るように動く
ことあるごとに
「野田……大和か。俺はブラックではない……竜翔院、凍牙だ……クッ!」
「苦しいのか、ブラック!」
野田君も、わりと
「おれに何かできることはあるか!?」
「フッ……俺は借りを作らない主義だが……今日ばかりは仕方、あるまい。貴様の光の力とやらを、俺に貸せ……!」
「よし、任せろ! はあああああああ!」
中村君の右腕の周りに両手をかざし、気合いを込めて
「ぐおおおおーー!」
「きええええーー!」
生き物のように動く右腕を必死に
やがて、ふっと眼鏡男子が
「ブラック! しっかりしろ、ブラック!」
「ハアハア……なんとか、危機は
「
「フン……だが俺は、竜翔院凍牙だ……」
息を乱し、
えーと、本日の
「ほんとあいつら、進歩がないよね」
「人のこと言えんのか?」
ため息交じりの皮肉っぽい声と、ややハスキーな低音美声が聞こえて横を見上げると、見知った長身の男子二人がすぐ近くにきていた。
ブラックコーヒーの
その
「おはよう、九十九君、厨君」
「おはよう、聖サン、ついでに高嶋。──同じクラスだね」
そう、今年は九十九君も同じ2‐Cになったのだ。他にはアリスちゃんと
「うん。これからは教室でも、よろしくね」
「なんだよ『ついで』って。でも、よかったな~、九十九」
「念願の同クラだな」
「っ……ハア?」
ニヤニヤしながら肩と背中を
「一緒になれて、よかったね」
「……!」
思わず
「……これ、気付いてないんだよな、聖……」
「だろうな……てか、高嶋は気付いてたんだ?」
「そりゃ見てたらわかるだろ。大和と竜翔院はどうか知らないけど」
「何話してるの?」
「気にするな。そーいえば厨は何組?」
「2‐A。中村と一緒だな」
なんなんだ……と首を
「これでヒーロー部全員集合だな。新ステージでも地球の平和のため、全力で戦い抜こうぜ!」
野田君、お願いだからもう少しボリュームを落として……!
新入生がめっちゃ見てるよ~。
☆★☆
うちの学校では本校舎の四階が一年生、三階が二年生、二階が三年生の教室というように若いほど階段を上らされる仕組みになっている。四階ってけっこうしんどかったので、進級してよかった、と一番思えるのは、この点かもしれない。
ちょっと学内でのステイタスが上がった感じ……教室の階層は下がってるんだけど。
「瑞姫ちゃん。一緒ですわね」
2‐Cの教室に入ると、
「うん、
「こちらこそ。野田君、九十九君……た、高嶋君も一緒なんて、予想外でしたわ。どうかクラスメートに
私に向けていた笑顔から一転して、こわばった表情でそんなことを言ってしまうアリスちゃん……なんの因果か好きになってしまった高嶋君を前にすると、ツンツンしてしまうのは相変わらずみたいだ。
「そんなこと言ってこの人、クラス発表見た時は大喜びしてたよ」
アリスちゃんと一緒に生徒会に所属している、ブラコンの眼鏡男子だ。
「景野! そ、それは
「あと西園寺さんって去年の前半休みがちだったせいか同学年ではわりとぼっちだから、仲良くしてあげて」
「貴方に言われたくありません!」
景野君、いつのまにか
「……まー、せっかく同じクラスになったんだし、二人ともよろしくな。つーわけで景野、『アイライブ!』やってみないか?」
高嶋君、布教に
ガラリと
初めて見る、若い先生だ。新任かな?
サラサラの
派手さはないが知的な印象を
「初めまして。この2‐Cの担任をすることになった、
「今年の三月に大学を卒業したばかりの新任ですが、
人当たりのいい、やわらかな笑顔で話す様子を見て、よかった、いい先生に当たったかも……とホッとした。
「担当は物理ですので、理系志望の人たちは授業も一緒になりますね。──それでは、今から出欠をとるので、今日は
あ、
出席番号順に名前が読み上げられていって、高嶋君も九十九君も野田君も、特に問題を起こすことなく
「──聖瑞姫さん」
「はい。去年は1‐Cでした。部活はヒーロー部と園芸部に入っています。よろしくお願いします」
教室をサッと見回しながらそう言って、先生の方に視線を
それまで
まるで、
けれど、え、と思った時にはもう、そんな気配はどこにもなくて、先生は
「ありがとうございます。次──」
何、今の……気のせい、かな……?
昼休み。出席番号順で野田君と私が前後ろの席だったので、高嶋君や九十九君、アリスちゃんに景野君の四人も私たちの周りにきて、
「昨日が入学式だったんだよね。生徒会役員は出席したんだろう? 見どころのありそうな一年生はいたかい?」
九十九君の質問に、「見どころ……?」とアリスちゃんが小首を傾げる。
「なんでもいいよ。何かやらかしたとか、目立ってたとか……」
「そういうことでしたら、一番目立っていたのはドレスを着ていた子ですわね」
ドレス!?
「ゴスロリってやつだね。しかも
景野君の
「思わず名前調べちゃったよ。『
「へえ……ゴスロリ、いいよな。どっちかっつーと俺はメイド服のがいいけど。空良ちゃんのメイド服回はもうもう
「それにしても、おれたちもいよいよ
焼きそばパンにかぶりつきながら、野田君が言う。
彼は下手したらまだ小学生って言っても通用しそうだもんね……確かに不思議な感じだ。
「末永い平和を
「え、ヒーロー部ってオレたちの代で終わりじゃないの?」
「そんなわけないだろう! おれたちは
どんだけ
「そのためにもまず、ヒーロー候補生となる新入部員をたくさん呼び込もう。今日の放課後は新たなミッションに向けて作戦会議をするぜ!」
立ち上がり、
張り切ってるなあ……。
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