【最新刊発売記念!新章1巻試し読み大増量!】厨病激発ボーイ/藤並みなと
原案・れるりり(Kitty creators)、著・藤並みなと/角川ビーンズ文庫
厨病激発ボーイ
第一章 放て! おれのサーチライト 第一話
「きた……っ!」
転校初日。新しいクラスメイトたちの前で私が
同年代の男子と比べたらかなり
Tシャツとジーンズのラフな服装。
「どうした、野田?」
担任教師に
いや、そんなわけないでしょ。あからさまに何かあるよね?
席についてからも、野田君はじっとこっちを見ている……。
まずは自己
好きな色は水色。好きな花は
わけあって五月の半ばという
皆神高校は、自由な校風が人気の進学校で、最近全面改装されたという校舎はどこもかしこもピカピカして気持ちがいい。
制服自由校だから、みんなどんな格好をしてるかと思ったけど、
前の学校で着ていたセーラー服に、ミントグリーンのカーディガンを羽織って登校してきた私は、同じような服装の子がたくさんいることに、ひとまずホッとした。
悪目立ちはしたくない。地味でいい。
気の合う友達と平穏無事に高校生活を過ごしたい、というのが私の最大の願いだった。
──さて、野田君である。
説明したとおり、私の外見にさほど
そしてあの時、私はみんなの前で名前を言っただけだった。にもかかわらず、あの
いったい何が『きた……っ!』なんだろう?
その後私が指示された席について、授業を受けている間も、ずっと野田君からの視線は感じていた。
転校生という立場上、クラスメイトたちからの
かすかに上気した
一度思い切って見つめ返したら、ニッと
でもその後も、熱視線が注がれ続けているのがわかった。
何? なんなの?
☆★☆
二限目の後の中休み。
私はすることもなく
五月の空は
今日この時間まで、私はまだ
まあ、クラスでもだいたい仲良しグループとかできあがってる時期だもんな……みんな、
自己紹介の時にもっとちゃんと笑えればよかったかもだけど、生まれながらの
しかも、昨日からものもらいで右目に眼帯とかつけてるし。とっつきにくい
思い切って、私から周りに話しかけてみる? でも、引かれちゃったら
ぐるぐると思い迷っていたら、不意に後ろから声をかけられた。
「こんな時期に転校なんて珍しいね~」
きたー! 救いの手。ありがとうございます!
大事なファーストコンタクト、下手な対応はできないぞ。
「そうなの。親の仕事の都合で……」
かすかな
「右目、どうしたの?」
「ものもらいになっちゃって」
眼帯に
「そうなんだ~。早く治るといいね。私は、
ふわふわの長い
菜々子ちゃん……
心の中ではファンファーレが鳴り
もっとフレンドリーに笑えたらいいんだけど……この強固な表情筋が
「そうそう、新しい学校で不安だろうけど、なにかあったら言ってね」
「ね! 仲良くしよう。私の名前は……」
よかった、みんな
気さくなクラスメイトたちの態度にホッとしながら、簡単な自己紹介を
「大和!」
なんとなく向けた視線の先、
そこから野田君は
シュートは、一歩も動けないキーパーの左上へ
おお……カッコいい。
私はどちらかといえば運動は苦手。あんなふうに活発に
「すごい上手だね。野田君ってサッカー部なの?」
感心しながら聞いてみたら、菜々子ちゃんは「ううん」と首を横に振った。
「野田君はスポーツ
そうなんだ~、不思議。なにか事情があるのかな?
会心の笑みを浮かべてガッツポーズをする野田君に、さっきパスを出した金髪の男子が
えっと、彼は確か野田君の前の席に座ってた覚えがあるけど……。
「あの男子は?」
「
へえ……幼馴染み。
派手な金髪にやたらとヘアピンをつけてて個性的だけど、イケメンだな、高嶋君。
芸能人なみに整った顔立ちで、背もすらっとして高い。
白シャツにベスト、チェックのボトムス、とスクール風の私服をおしゃれに
私とは人種が違う感じだし、チャラそうだから好みではまったくないけど……野田君も可愛い顔してるし、二人でいるとかなり目立つ。
そんなことを思って眺めていたら、不意に野田君が振り返り、まっすぐにこちらを見つめてきた。
また、私を見てる!?
「……なんか野田君、ずっと瑞姫ちゃんのこと見てるよね」
「うんうん、もしかして、
菜々子ちゃんたちの言葉に、へ? と
「そんなことあるわけないって」
自分の顔面レベルはわきまえている。
「えー、ありえるありえる。瑞姫ちゃん可愛いもん」
いやいや菜々子ちゃんのが可愛いよ、と本心から思ったけれど、お世辞の言い合いっぽくなるのは
「それにしても、野田君も高嶋君も二人ともモテそうだよね」
「…………」
「…………」
「…………」
話題を変えるつもりで何気なく口にしてみたところ、それまでニコニコと話していた女子たちはなぜか無言でいっせいに視線を
……ん……?
その後の授業でも、しょっちゅう野田君と目が合った。自意識
なんで私のことをそんなに見てるの? 前にどこかで会ったことがあったりする?
よっぽど聞きに行こうと思ったけれど、野田君は休み時間はいつも前の席の高嶋君とだべっていた。
なるべく地味に
☆★☆
そして、昼休み。
お弁当を
席を立って、菜々子ちゃんの方へ駆け寄ろうとしたところ──気が
ひやっとした次の
「
少しだけかすれた、まだ声変わり前の男子の声が耳元で聞こえて、一瞬
野田君!?
「う、うん、ありがとう」
お礼を告げると、野田君は口元をほころばせたけど、すぐに
「大事な話がある」
それだけ言うと、私の腕を摑んだまま、歩き出す。
え? え? ええ?
「の、野田君?」
私は混乱したまま、無言の野田君に引きずられるように教室を後にした。
☆★☆
連れてこられた先は、人気のない屋上だった。
野田君は私の腕から手を
心臓がいつになくドキドキと高鳴っている。
さっぱりわけがわからないけど、もしかしてこの
──「もしかして、一目惚れされちゃったとか?」
菜々子ちゃんの声が
……でも、好みは人それぞれっていうし……。
息をのんで立ちすくむ私を、熱を帯びた
「──待ってたぜ、ピンク」
…………………………は?
「ピンク……?」
意味が
「予感がしてたんだ。この高校で、運命の五人の戦士が
キラキラと
運命の戦士? ヒロイン? は? なに?
ぽかーんとしていたら、新たな声がその場に
「落ち着け、大和。転校生がびっくりしてるぞ」
くくっと
「おまえも来たのか、イエロー」
「イエロー!? 俺イエローなの!?」
いたって真面目な顔で呼びかけた野田君に、高嶋君がぎょっとしたように目を
「ああ、ピンクに会った時に気付いた。
「いや、せめてブルーだろ! イエローってお笑い担当のデブのイメージじゃん。こんな天下のイケメンつかまえてイエローはないって!」
野田君に全力で
「あー、解説すると、大和はヒーロー番組とか
…………はああああ?
なんじゃそりゃ、と
「ピンクの得意
「と、得意技なんかないし! というかピンクじゃないから」
思いっきりドン引きしながらきっぱり言うと、「なに……!?」と野田君がショックを受けたように顔をこわばらせた。
「まだ目覚めていないってことか……」
「まだもなにも一生目覚めることはありません!」
「
グッと親指を立てて
話が通じない……。
えーと、つまり野田君が朝からずっと私を見つめてたのは、仲間が来たと思ってたからなの? 顔が赤かったのは、興奮のため?
…………アホだ。どうしようもなくアホだよ、この子。
野田大和の正体は──こじらせちゃってパンパカパッパッパーンな
「しかし
親指の
いや『組織』って何。何を言ってるか本当に意味不明なんだけど。
「……よし」
やがて野田君はぱっと顔を上げて私の両肩に手を置く。
「今日からおれがボディガードとして、なるべくピンクの
「結構です! ちょっと、高嶋君、この子なんとかして」
助けを求める私を、高嶋君はスマホをいじりながら「無理」とあっさり切り捨てた。
「今は
「デートって……ゲームしてるだけじゃない」
高嶋君のスマホからは、
「この時間が空良ちゃんとの愛を
画面の美少女キャラを見つめてにへらっと相好を
なんという
それから、フッと不敵な
「いくら俺がイケメンだからって
……うわ~。いろんな意味で本当に、残念だ……。
「と、とにかく、私はこれで! 早く
「待て、ピンク! 一人は危険だ。
「
教室に戻ると、菜々子ちゃんたちの姿はなかった。
仕方なく自分の机でお弁当を広げた私のすぐ横で、野田君と高嶋君もそれぞれパンとお弁当を食べ始める。……これじゃ周りから見たら一緒に食べてるみたいじゃないか。
「ピンクの好きな食べ物はなんだ?」
「……
「
「
「イエローといったら好物はカレーだろう。今日からカレーにしろ」
「
半眼で抗議していた高嶋君は、自分のお弁当から卵焼きをつまみ、ふっと口元をほころばせた。
「今日は
千夏? と首をかしげる私に、「智樹の彼女だ」と野田君が教えてくれる。
「なんだ、彼女いるんだ」
彼女の手作り弁当とは、このリア
思わず
「当然だろ。そろそろ増えすぎて困ってるくらいだ」
「何人もいるの!?」
うわ、最低……とドン引きした私に、高嶋君は悪びれることなく
「みんなそれぞれに
なんか変わった名前交ざってるな……って外国人まで?
「いつか
ゴミを見るような気分で
「全員二次元キャラだから」
……うわあ……それはそれでドン引きだ。
「正妻は空良ちゃんだけどな。空良ちゃんは
なぜか
「食後は三人で決め
「やりません」
「やらないし」
話しかけられて無視するわけにもいかず答えていたら、ご
やれやれ、とため息をついていたら、いつのまにか教室に戻ってきたらしい菜々子ちゃんに、「瑞姫ちゃん」と呼びかけられた。
「野田君たちと仲良くなったんだ~。よかったね」
ほわわんと
仲良くなんてしてないよ!? たまたまお昼は一緒になったけど……そう弁明しようとしたところで、野田君が満面の笑みで割り込む。
「ああ。ピンクはおれたちの大事な仲間だ!」
野田君の声は無駄に良く通り、教室中に
クラスメイトたちがざわっと
「ピンク……?」
「野田たちの、仲間……」
「一緒に弁当食べてたしな」
「え、聖さんもあっち系の人だったんだ……」
クラスメイトたちの
ぎゃー、やめてくれ!
「違うの、これは野田君が勝手に──」
「ほら、みんな、
先生、
「中庭
「……!?」
こうして誤解を解く機会を
いやだー。こんな痛い人たちと一緒にしないで……!
この日から、「
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