第61話:中間テスト「俺はお前と友達でいるかどうかを悩むわ」
さて、あれよあれよと相坂との勝負が見事決定してしまった。
相坂はこの学校ではすでに有名人である。転校してから数日と日が経っていないのにも関わらず、女子生徒の間ではファンクラブなるものが存在しているらしい。
彼に詰め寄られ、耳元で愛の言葉を囁かれたその日には落ちない女はいないとか。なんだ、そのスキル。
結局のところ、俺は相坂の仕掛けてくる勝負を受けたつもりはなかったのだが、その相坂のファンクラブなるものが俺と相坂とのやりとりを見ていて、すぐに噂を広めてしまったらしい。いい迷惑である。
俺は相変わらず、相坂に何か恨みを買うようなことをしたことなど思い出せもしなかったし、心当たりもなかった。
しかも、その勝負がいつの間にか成立していたのは、テスト前日のことである。
朝登校し、教室に入った時、橙火に言われて初めて知ったのである。
「あんた、なんでそんな変な勝負引き受けたの?」
「はい?」
寝耳に水。とはまさにこのことである。
詳しい話を聞くと俺が相坂とこの学校、星城学園のNo.1イケメンの座をかけて戦うことになっているらしい。
すごくツッコミたい。
まず、俺はイケメンを自称したことはない。
それに別にイケメンでもない。なのになぜ俺がそんなものの座をかけて戦わねばならんのだ。不戦敗でいい。
そうしたいのは、山々だが、これまた以前の球技大会のように負けたら相手の言うことを聞くという訳わからん賭けをさせられそうになっている。勘弁してくれ。
名前:
年齢:16歳
基礎能力
筋力:374
体力:403
精神:374
知能:334
器用:436
運 :26
エクストラ
ステータス:LV.4
┗ スキル成長補正:LV.3
料理 :LV.6
┗ 焼きそば職人:LV.3
裁縫 :LV.4
掃除 :LV.6
武道 :LV.5
┣ 弓道 :LV.5
┣ 空手 :LV.4
┣ 柔道 :LV.4
┣ 剣道 :LV.4
┣ 合気道:LV.5
┗ 居合道:LV.4
音楽 :LV.5
┗ ピアノ:LV.5
球技
┗ バスケ:LV.6
称号
ロリコン
シスコン
パンツハンター
エロ伝道師
テスト前日。
俺は自分のベッドに横になりながらすてーたすをオープンする。称号に関しては悪意しか感じないが、まあいいだろう。
基礎能力がどれもこれもかなり向上している。初期の頃に比べたら凄まじい成長だと思う。しかし、その一方であまり自身の体に対する変化の実感が湧かなくなってきたようにも感じる。それに数値も上がってはいるのだが、伸びが悪い。最近はどれだけ、筋トレとかを頑張っても数日頑張って、「1」上がるとかになっている。
伸び悩みというやつだろうか。下がってはないからいいんだけど、もう少しパラメータを上げるために頑張ってみるか?
とは言うものの今の俺は、ステータスを上げることに対する目標がない状態である。これを上げてどうなりたいのか。どんな大人になりたいのか。それがないのである。
これが初めて発現した時は、クラスのみんなを見返してやる!と息巻いていたのだが、その目標もある程度達成できてしまったように感じる。最近はクラスのみんなにもよく話しかけられるようになったしね。
いっそ、なにかのプロでも目指してみるのもいいかもしれない。今更だが。ピアノとかも誘われてるしな。
俺は、うつ伏せだった体を横に傾けた。
そんなことより、明日はテストだ。相坂との勝負もあるし、とりあえずは頑張ろう。
昔はテストの点数もそんなに良くなかったけど、知能パラメータがこんなに上がっているおかげ、最近は勉強への理解も早い。
だから、勝負のことは置いておいても楽しみであった。
俺は、そのまま漠然とした将来への不安を少し、胸に抱きながらゆっくりと目を閉じ、眠りに落ちた。
◆
中間テストは、英語、数学、国語、物理(生物)、化学、地理(日本史)、世界史の7教科である。物理と生物、地理と日本史は選択制である。
(※作者の学生時代の内容のため、現代の高校の科目とは内容が少し異なるかもしれません。国語って現代文と古文で分かれてたっけ?忘れました......)
今回の勝負なるものはこの7教科の総合点で競うことになる。テスト後、学年の総合順位が張り出されるのである。
俺の前回の期末テストの順位は344人中、268位である。なんとも微妙。ちなみに前回の総合1位の覇者は、橙火だったりする。あの子、マジですごい。そして2位は荻野である。なんだか、最近絡みないけど大丈夫だろうか。少し、心配。
そして肝心の相坂だが、奴は未知数だ。でもテストで勝負を仕掛けてきたあたり、頭はある程度いいのだろう。
そしてテスト一日目。今日は、国語と数学のテストである。
まずは国語。
2学期に入ってから、より真面目に授業を受けるようになったし、理解力もあがったため、嘘のように現代文も古文もすらすらと解けていく。「この時の作者の気持ちはどれか」なんて問い、昔なら「知るか」と匙を投げていたが、今なら。
分かるっ!分かるぞ!お前の気持ちがっ!!
そういった感じで国語のテストを終えた。
それは数学も同じであった。昔ならすぐに計算の途中でペンが止まっていたが、今は止まること知らず、すらすらと紙の上を心地よく、黒鉛が滑っていく。
そうして俺のテスト一日目は終わった。会心の出来だったのではないだろうか。とは言っても俺もやはり分からない問題は多少あった。知能が上がっても全てを完全に理解できているわけではないのだ。
結局、その後のテストも同じようにいつも以上の実力を発揮できたと言っておこう。二日目、三日目とようやく全てのテストを終えることができた。
「終わったー!!そして死んだ」
「ははは、ドンマイ、白斗。それにしても、ようやくだね!柚月はどうだった?」
「まあまあできたかな。今回は結構自信ある」
「おお、すごいねー!勝負のこともあるし、後は結果待ちだね」
今現在、テストを終えた俺は、白斗と桃太とお疲れ会と称し、ファミレスで駄弁っていたのであった。
テストの出来を言い合う。これって素晴らしいね!今まで友達とこんなことしてこなかったものだから感動ものだ。
白斗は元々、勉強の方はできないようで今回もダメだったらしい。ちなみに前回の順位は343位。すごくね?下から2番目だぜ、お前?
そして桃太はと言うと、白斗とは違い、かなり頭が良い。前回の順位も27位と圧巻の二桁の高順位である。
「そういえば、勝負の件だけど勝ったら、何要求するか決まった?」
「まだ勝ったと決まったわけじゃないけどな......というか、別に俺は相坂に望むことなんてねえぞ?」
「まあ、確かにな。言うことを聞くって言ったて男に望むことなんてなんもねえな」
そこで先程まで机に突っ伏していた白斗が話に入ってくる。
「女子だったら、〇〇とか××とかできるんだけど......」
「なんてこと言うだんだ、お前。ピー音入ってるぞ」
「なんのことだ?まあ、でもお前と相坂だったらありかもな。どっちも見てくれいいからなぁ。結構、それはそれで女子受けいいかもしれん。どっちが受けで、どっちが攻めか。みたいな?」
おえっ。勘弁してくれ。相坂は兎も角、俺はないだろ。
「うーん、悩むなぁ。でも俺的には柚月、お前が受けだな。お前が相坂に乱暴にされているところが見てみたい」
「俺はお前と友達でいるかどうかを悩むわ」
こんなアホな会話、学校の連中に聞かれたらややこしいぞ。そんなことを思っていたら、後ろから気配がした。
「あれ?柚月さん!」
「っ!」
俺の背後から姿を現したのは、紫と桜の二人組だった。
二人もテスト終わりの打ち上げだろうか。そういえば、うちの学校の制服を着た連中が周りには多い気がする。
「あ、お友達とご一緒でしたか。あの.......よかったらご一緒してもよろしいですか?」
「ゆ、紫!私......」
ん?桜が何やら慌てている様子。どうしたんだ?と思ったが、なるほど。普段、俺と自然に接しすぎて忘れてたが、桜は男の人が苦手だった。そもそも触れないらしい。あれ?なんで俺には触れるんだ?
「あ、桜ちゃん。そうですね......ごめんなさい......」
「う、ううん。やっぱり、大丈夫。こういうのも慣れていかないとダメだから。柚月、いいかな?」
「ああ、俺は構わないけど......」
俺は横目で正面に並んで座っている白斗と桃太を見る。桃太は笑顔で「大丈夫」と言っているが、白斗はポカーンとアホヅラをしていた。大丈夫そうだ。
「二人とも大丈夫みたい。よかったらどうぞ」
「じゃあ、お邪魔します......」
桜が俺の座っている場所と机の間を膝がぶつかりながらも通る。そして俺の隣に座る。
ん?
「じゃあ、失礼しますね」
そして次に紫が桜とは逆、通路側の俺の隣に座った。
二人は自然と俺の両隣に席をキープし、俺は女子二人に挟まれる形となった。
なんだこれ?
───────
いつもお読み頂きありがとうございます!
カクヨムコン用の新作を公開しました。
よろしければそちらもお読みいただけますと嬉しく思います。
一応二作あるんだけどね......
異世界の方は、まあいいや、うん。
すてーたす!みたいな、ちょいSF要素?入ったラブコメがお好きな方はこちらも気に入っていただけると思います。
『最高の花嫁をもう一度!〜幸せの絶頂期からなぜか青春時代へと戻った俺は最愛の彼女と再び結ばれるために奮闘します〜え?こんなにモテるなんて聞いてない!!』
https://kakuyomu.jp/works/1177354055009390676
ちょい、タイムリープもののラブコメです。
是非、よろしくお願いいたします!
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