第35話

「………ぐぬぬ……」


「ふふっ……はぁ……可愛いわね……」


 16時間後。日付が変わると同時に珠希を拉致し、目覚めたらオスクロルに膝枕をされていたという謎展開からやっとこさ脳内が回復した後、珠希は約束通りオスクロルの好きなようにされている。


 現在、その豊かな胸に珠希は顔を埋めているーーーいや、埋められている状態だ。逃げないようにがっしりと後頭部をしっかりと抱きしめ、地味にサキュバス特有の技である精力譲渡トランスファーもしっかりと使われ、徐々に精力も取られていっており、珠希は既に唸るしかオスクロルに対抗出来ていない。


「フフっ……実はね珠希くん。私も、珠希くんのことを狙ってたんだ」


 ピクっ、と珠希の体が反応する。普段、どちらかと言えば喰う方に回っている珠希だが、今は完全に、ライオンと一緒の檻に入れられた仔猫とかしていた。


「私の処女はじめて……あげるから、ねぇ、珠希くん………私もお嫁さんにーーーー」


 この後、オスクロルにめちゃくちゃ搾り取られる珠希だった。









(………色んな意味で地獄だった)


 快楽地獄、絶頂地獄、オスクロル可愛すぎ地獄等など、様々なことがあった。


 精力が無くなってもオスクロルが今まで夢で溜め込んできた精力を使って珠希の息子を無理やりにでも臨戦状態にしたり、めちゃくちゃキスマーク付けたり。


(……これで六人目……俺いつか背中刺されない?大丈夫?)


 異世界嫁五人、地球嫁一人の大家族の主となってしまった珠希。オスクロルに至っては戦争終わったら魔王なんて退去して珠希とずっと一緒にいるという可愛らしい発言を頂き、胸を射抜かれた珠希。


 年上の存在にめちゃくちゃ弱かった。


(……それに)


 珠希が現在悩んでいることは、この戦争が終わったあとにどうするか。


 オスクロル曰く、元いた地球に帰ることは可能なのだという。それが珠希を悩ませる。


 地球あっちにも、こっちにも大切な人を残してしまったジレンマ。それに、珠希には向こうに残してきた雫の件もある。


(………あーあ。地球と異世界を繋ぐゲート的なものがあればなぁ!)


 珠希は腕を組んで切実にそう思う。それなら自由にこっちとあっちを行き来できるのに。


(そんな便利なのがーーーーーーーん?)


 無意識の家に珠希の頭に上書きオーバーライドされていく知識。なんと魔眼が自ら主の思い願いを汲み取り、勝手に検索してしまった。


「…………まじ?」


 珠希の頭に焼き付いたのは、『|異世界転移の境門《

 ワールドホルダー》』の魔法陣だった。


 早速部屋へ戻り、みんなに相談することにした珠希。


「ふむ………異世界同士を繋ぐ鍵……か」


 しかし部屋にはミリーナしかおらず、後は出かけていたらしい。クラスメートを全員救ったのだ。最終決戦の前にみんな色々なところに顔を出しているのだろう。


「あぁ」


 珠希は机の上に魔法陣を描き、起動させると、魔法陣の中から全長10センチほどの銀色の鍵が出てきた。


「早速使ってみたいと思うのだがーーー」


「あぁ。私も気になるから立ち会わせてくれ」


「ありがとう」


 珠希は立ち上がり、鍵を虚空へと突き刺す準備をする。ミリーナは何が起きても珠希とはぐれないように、しっかりと左腕を絡めとった。


「………行くぞ」


 ガチャり!と鍵を捻ると、鍵を中心に虹色のドアが出てくる。鍵から手を離し、恐る恐るドアを開くと。


「………あら?」


「………ふぇ?」


 そこは、珠希の実家であるレズビアン専門店であるバー兼うっふんあっはんのお店のカウンターだった。


 そして、そこに居たのは二人の女性。カウンターにて客に酒を提供してるのが、年齢と見た目が一致していない巷では美魔女と呼ばれている珠希の母親。神楽潔子かぐらきよこで、そのカウンターにて泣きながらお酒を飲んでいる客がーーーーー


「珠希くーーーーん!!!」


「ふぐっ………」


 レズビアンなのに珠希に特別な感情を与え、また、珠希の大切な人であり、童貞はじめてを捧げた人生の師匠。


 そう、速水雫はやみしずく本人である。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

もうそろそろこの物語も終わりかぁ………自分でもなんでこんなに長く続いてるか分からない作品だけど、愛着湧いたなぁ……。


一応完結後別の方でアフターストリーや、SSを書く予定ではあります。

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