第34話
「それじゃあ、始めようか」
オスクロルは先程までのお姉さんモードから魔王モードへと入れ替える。
「ミリーナには悪いが、直ぐに狂化の首輪の解除の準備をしてもらおう。結構なハイスピードになるからエルフをたくさん連れてくるように伝える」
オスクロルが何やら空中に魔法陣を書くと、ピッ、と指を弾くようにしてどこかへ飛ばす。
「今ミリーナにここにエルフを集めるように送った。珠希が一人目を救出する際には全員集まっているだろう。珠希、クラスメートはここに連れてくるように」
「分かった」
「よし………それでは始める。ハイスピードに、そして気取られないようにやりなさい」
「お前も、頼んだぞ」
珠希は肩に乗っているフェンリルの首を撫でる。フェンリルが嬉しそうに珠希に身を寄せた。
「それじゃあ行くぞ、一人目はーーーーーーー」
「よっと。28人目。頼むぞ」
「お任せ下さい」
近くにいたエルフに、人間軍の王城からかっ攫ってきた女子を渡す。
彼女を救う際に、少し戦闘になってしまった珠希は額に流れる汗を袖で拭いた。
(……危ない。危うく連絡をされる所だった)
フェンリルが上手く処理してくれたが、あと数秒遅かったら城全体に連絡が行き渡り、まだ救ってない珠希と特に仲良しだった五人の監視が面倒くさくなる所だった。
「大丈夫か?」
「問題ない……後はあいつらか……」
残るクラスメートは
性格も、趣味も、部活動も何もかも違う六人組。しかし、何故か意気投合し、気づけば仲良くなっていた五人。何の因果かは知らないが、この五人だけ監視の目が多い。
(………ま、関係ないな)
転移したと同時に
(………今!)
監視の目が少し離れて瞬間に、兵士たちの共通の死角となる場所に転移すると同時に
次、二人目の康太ではフェンリルが活躍。倒れる場所が悪く、危うく珠希の姿を見られる前にフェンリルが強制的に意識を落とし、無事に康太を回収。
三人目、四人目と大輔と淳也を無事に回収。
(………湊)
残りは湊一人となったが、湊だけやけに他のやつよりも監視の目が多い。どうやって行くかな……と攻めあぐねていると、オスクロルが珠希の肩をトンっと叩いた。
「我も行こう」
「……いいのか?」
「あぁ、少しは頼りにしてくれ………と言うよりもそろそろ働かないと……」
魔王の本音が飛び出たオスクロルだった。
「……それじゃ、何をするか知らんが、頼んだ……危険なことはするなよ?」
「安心しろ。男だったら我は負けん」
オスクロルの手を握り転移する。
「……っ!な、なにやーーーーーー」
珠希達が堂々と現れ、敵意を向ける兵士。しかし、それも一瞬のこと。オスクロルをその目に映した瞬間、兵士たちは固まった。
男を魅了するためだけに存在しているかのようなオスクロルの美貌、スタイルに兵士たちは見蕩れてしまったのだ。
「………………」
「へぎゃ!?」
オスクロルが下衆な目で見られていると感じ取った珠希は、少しのイラつきから
「………珠希、何故一度雷魔法を掛けた?」
「………別に」
「………嫉妬か?もしくは嫉妬か?やだぁ~珠希くん、もしかして私の体が見られてるって感じて嫉妬しちゃった?」
珠希が嫉妬してくれたことに嬉しくなったオスクロルは、魔王モードを一気に解除した。
それに対する珠希の反応はーーーー
「~~~っ!とっとと帰るぞ!」
湊を抱えあげた珠希は真っ赤な顔でオスクロルの腕を引っ張って帰還するのだった。
魔王城に帰還した珠希は湊をエルフへそのまま引き渡すと逃げるように転移し、姿を消した。
「………フフっ。可愛い反応……ま、今は逃げても明日一日、珠希くんは私の自由だけれど………フフっ」
「………どうした?珠希くん。そんな無言で私の胸に顔を押し付けて……んっ、嬉しいが、くすぐったいからもう少し加減を……んっ」
そんな珠希は癒しを求めてミリーナへ抱きついた。
珠希、貞操(存在しない)の危機(?)まで、残り16時間。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます