第33話

「と、言うことでフォルカウスだ。みんな、仲良くな」


「よろしく頼む」


「「待ってください!」」


 いつの間にか珠希の部屋にあてがわれていた4人がけの円形のテーブルに座っている珠希ハーレムの皆さん。珠希の目の前にミリーナが、右の席に美波が、左の席にはリリアが座っており、珠希の膝上にフォルカウスが座っており、がっしりと珠希に抱きしめられている。先程声を出したのは美波とリリアである。


 ちなみに、ルシフェラはまだ神と交信中である。


「も、もう五人目ですか!珠希様!いくらなんでも早すぎます!」


「そうだよ!それに珠希くんの膝上とか羨ましい!」


「ですです!」


 欲望に忠実な二人だった。


「ぬ、ぬぅ……?」


「こら、あんま睨んでやるな二人とも。後でしてやるから」


 フォルカウスが二人の眼光に怯えたところに珠希がフォローに入る。そして、先程から落ち着いたようにお茶を飲んでいたミリーナがフォルカウスを見た。


「私はいつ声を掛けるかと思ってはいたが……まさか逆に捕えられるとは」


「仕方なかろう。こやつの動きが我の予想を大きく上回ったのじゃから」


「なんだ、ミリーナは知ってたのか?」


「当たり前だろう。珠希くんのキスの後にそこの吸血鬼を受け取ったのは誰だと思っている。薄々そんな気はしていた」


 淡々と事実を告げるようにミリーナは言う。


「そうだ。後で私も君の膝上に乗らせてもらおうか」


 そう、淡々と………。










「相談?」


「おう」


 現在、魔王の間。玉座にてだらーんとだらけ切り、魔王の威厳なんてものはそこら辺の川に投げ捨てたオスクロルへ、珠希は相談を持ちかけた。


 それは、クラスメートをササッと救うための手段である。


 この世界に来てそこそこ経つが、まだクラスメートを六人しか救えていないことに危機感を覚えた珠希。目を覚ました朔良と美波以外の奴はエーテルの庇護下の元で不自由なく暮らしていると、この前稲村から聞いた珠希。


 そこで、珠希がこの前リリア達が珠希とミリーナの愛のシーンを見ていたことを思い出した珠希は、とある相談を持ちかけたのだ。


「お前、千里眼系の魔法使えるだろ?」


「えぇ、使えるわよ」


 よいしょ、としっかりと椅子に座り直したオスクロルは、ジェスチャーでこちらに来いと珠希へ送る。頷いた珠希はオスクロルの横まで来た。


「投映魔術って言うんだけど、こういう風に遠くの風景が映し出せるの」


 手を振ると、珠希とオスクロルの目の前に大体一辺が80センチの正方形が出来上がり、そこに映像が浮かび上がった。


「これは………」


 浮かび上がったのは、珠希ハーレムの皆さんの入浴シーンだった。


「………ほう」


「とまぁこんなふうに見ることが出来るわけ」


「あっ……」


 ガッツリと見ようと思っていた珠希だが、理不尽にもオスクロルに消された。


「ほーら。裸なら私がいつでも見せるから、その用件は?」


「………お前の裸うんぬんについては要検討ということで置いておくが、俺が言いたいことは、この投映魔術を使ってクラスメートを助けられないかと言うことだ」


「……なるほど?詳細は」


「オスクロルには負担をかけるかも知れないがーーーそうだな、大体一日に5人位のペースで、クラスメートが一人になった所を狙い撃ちしてやりたいと思ってる。オスクロルには、その投映魔術でクラスメートの周囲を見て欲しい」


「……ふーん?でも、これって万能じゃないわよ?正確な位置とか分からないとまずその場所を映せないわ」


「正確な場所なら俺の魔眼で調べられる」


 珠希の瞳が蒼く光る。オスクロルはその瞳から珠希の決意を感じ取った。


(……いいわ。いいわねその視線……ゾクゾクするわ)


 ペロリと唇を無意識のうちに濡らすオスクロル。


「……いいわね。どうせなら一日で終わりせましょうか。それに、1人2人くらいだったら珠希くんでも問題ないわね」


「……ありがとう」


「お礼はいいわ。あなたのクラスメートを救うことは、この戦争を終わらせることに1歩近づくことが出来る。そのためだったら、私が普段溜め込んでる魔力とかどんどん持っていきなさい」


 オスクロルは立ち上がって、指を口に入れてピューと笛を鳴らした。すると、2人の目の前に魔王12幹部である魔物代表のフェンリルが姿を表した。


「……!」


「おっと……覚えててくれたのか」


 珠希を見た瞬間、嬉しそうに近づいた顔を押し付けるフェンリル。しっぽもものすごい勢いでブンブンブンブンブンブン振っていた。


「念の為、フェンリルも連れていきなさい。フェンリル、姿を珠希くんの肩に乗るくらいの大きさになってもらえるかしら」


 フェンリルは頷くと、目を閉じる。すると、徐々に体が小さくなり、3mほどあった隊長が30センチまで縮んだ。


「おぉ……お前、そんなことも出来たのか」


「……!!」


 嬉しそうに珠希の周りを走るフェンリル。珠希はフェンリルを捕まえ、抱っこした。


「短期決戦よ。ササッと終わらせて、明日珠希くんは一日中私の好きにしてもらうわ!」


「………うん?」


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