第32話
「……んっ」
珠希は意識が覚醒していくのを感じ、目を開けた。そして、視界に映るのはーーー
「おはよう珠希くん」
喋る胸ーーー失礼。これでもかと盛り上げたオスクロルの胸だった。
(………相変わらずデカイな)
1回ぐるん、と横に回転してからオスクロルの膝から降りて上半身を起こした。
「……ありがとうオスクロル。よく眠れた。ぶっちゃけ毎日その膝で眠りたいものだな」
「あら、おねーさんの膝がそんなに良かった?」
「あぁ」
「そう?なら、たまになら珠希くんに貸してあげてもいいわよ」
「是非頼もうか」
やはり自重という言葉がこれ程信用出来る男がいるのだろうか。この男、自分の欲に正直である。
オスクロルにお礼言って部屋から出た珠希。自分にあてがわれた部屋へ戻る途中に、やはり感じる人のーーーいや、厳密には人ではないが、感じる誰かの視線。
今の珠希はぐっすりと寝てまともな思考ができるため、今回はこの視線の主を突き止めることが出来る。
珠希は魔眼を発動させてからとある魔法の知識を願い、過去まで遡った魔眼が、主の願いを叶えられる最適な知識を脳へ
廊下を曲がり、すぐさま魔法を発動。
珠希の体が、背景と同化し、姿が見えなくなった。
その名も
なお、珠希も願ったことがあるが、理由が嫌いな給食を食べたくないからという理由である。
サッ、曲がり角に隠れた珠希。角を曲がった瞬間に視線は消えたので、多分透明化したことは気づかれてはいないと思うが………。
数秒後、影が角から現れた。
(……コイツは)
「………むぅ?」
珠希の目の前で首を傾げるオレンジ髪の少女。その正体は魔王12幹部の1人である
そう、珠希の血を吸って見事な返り討ちにあった魔王軍のキス被害者その3である。ちなみにだが、言わないでもわかってると思うが、その1がリリアで、その2がミリーナである。
「……むぅ?おかしいのう……確かこっちに曲がったはずーーーー」
「確保」
フォルカウスが目の前を通った瞬間に、後ろへ回り込んでステルスを解除。そして後ろから抱きしめた。
「なっーーーお、お主!?」
珠希に抱きしめられたと分かった瞬間、分かりやすく頬を赤らめるフォルカウス。
「はい連行」
「ぬお!?」
そして二人は珠希の部屋のベッドの上へと転移し、フォルカウスは為す術なく、ベッドへ押し倒された。
「お、お主!?いくらなんでも手を出すのが早すぎーーーーー」
「少し黙ろうか」
「むっ……んっ……」
珠希はフォルカウスの唇を塞ぐと、珠希の目が紅く光る。
それは、
「ふっ……んちゅ………んん……」
時間が経つ事に、珠希の魅了にやられてどんどん瞳がとろりとして行く珠希。
(………悪意はなしか……じゃあなんで俺を見ていたんだ?)
こんな状況でもキスをとおしてフォルカウスの心を覗き込む。
(……謎だ……本当に謎だ……)
「はぁ……んっ……はぁ、はぁ……」
魅了も解除され、ベッドの上で荒く息を吸うフォルカウス。勘違いしてはいけないが、事後ではない。キス後である。
「はぁ……お、お主……ちょっとは手加減というものを知らんのか……」
「知らんな。お前がめんどい手を使ってきたのが悪い」
「むぅ…………」
不満そうに唇を尖らせるフォルカウス。キスをしているうちに、フォルカウスの心情がわかってしまった珠希。
そう、なんとフォルカウスもミリーナと同じく、キスで堕ちたクチである。しかも血を吸ったあとなので尚更悪かった。
吸血鬼の吸血行為はとても神聖な者。それは吸血鬼が生涯大事にすると誓ったものとだけ行うものであり、フォルカウスはそれを軽視していたため、興味本位で珠希の血を吸った。
それが不味かった。吸血鬼は良くも悪くも、血を吸った後は感情が高揚し、簡単なことにも流される。フォルカウスは特異であったため、その振り幅は殆ど無かったが、珠希のキスによって無理やりに引き上げられ、いわゆる、なんちゃって吊り橋効果みたいなものが出来上がったのだ。
つまり、簡単に言うと、珠希に惚れました。ので、ずっと話しかけるタイミングを伺ってましたということである。
でも、珠希がこちらを向くと急に恥ずかしくなり、ついつい物陰に隠れてコウモリに変身していたのだという。
「………で、フォルカウス。お前はどうされたいんだ?」
「……あう……えっと……」
珠希がフォルカウスへ近づくと、分かりやすく狼狽える。それを珠希はとても可愛いものと感じた。
「その……お、お主に……我の体を……その、たくさんたくさん弄って欲しーーーーんむっ!……んっ、ちゅ、……んんっ……」
この日。年上のギャップにやられた珠希が五人目を増やしました。
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いくらなんでもハイペース過ぎない?珠希くん。
ちなみに透明人間のくだりの願いは作者です。
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