第三章
第31話
「…………ん?」
魔王城を珍しく1人で歩いていた珠希。最近では城で働いているメイドにも顔を覚えられ、すれ違う度に手を振られニコニコと魔性の笑みを浮かべられ、年上の魅力に毎回毎回ドキドキしている珠希。
いつもだったらリリアとかリリアとかリリアが珠希に引っ付いているが、今日はなにやら
最近珠希に骨抜きにされているルシフェラの方も、なにやら魔王12幹部である
ミリーナと美波、ついでに咲良は今回、咲良の回復魔法を覚えさせるように訓練をしている。
最近はなにやら全員忙しく、1人で過ごす時間が増えている珠希だが、ここ最近、珠希を見つめる謎の視線に辟易としていた。
(………そこ!)
バッ!と視線を向けるが、一瞬の影が見えるだけで、姿、形は捉えることが出来ない。
「珠希様?大丈夫ですか?」
「いや………うーん?」
そばにいたメイドが、心配そうに珠希へと近寄る。そして次の瞬間、怪しくペロリと唇を湿らせた。
「おつかれでしょうならーーー今晩、私の部屋でたっぷりと癒して差し上げましょうか?」
サラッと背中に抱きつき、耳元で甘く誘惑をする。
一瞬ブルりと身をふるわせ、甘言に身を任せようとしたが、流石に既にもう四人に手を出しているため、流石に自重した。
「非常に魅力的だが……流石に遠慮しておこうか」
「あん……もう、珠希様のいけず」
くるりと回転して、背中に抱きついているメイドをちゃっかりと正面で抱きしめた。
「これで我慢な」
そして自重はしたが残念ながらそれほど理性の壁が高くなかった珠希。額に口付けをして優しく抱擁を解いた。
「あふぅ……珠希様……」
「それじゃあ」
メイドに手を振って少々足早に立ち去る珠希。そして角を曲がった瞬間に、壁へズルズルと寄りかかってしまった。
(………まずい)
最近、元々壁が低かった理性がさらに低くなってしまい、誘惑に耐えきれなくなってしまっている珠希。誘惑するメイドもメイドだが、既に珠希は七人とワンナイトラブを過ごしており、それがまたさらにワンチャンを狙っているメイド達が珠希を誘惑するというちょっとしたループとなっていた。
男として羨ましいのか羨ましくないのかよく分からん状況に陥っていた珠希だった。
「…………大変そうね」
「………オスクロル」
床からニュッと、豊満な上半身だけを出した状態で現れたのは、この城の主であり、魔王軍を統べている魔王オスクロル。
流石のオスクロルを珠希(主に理性)を心配して態々魔王の間から顔を出したのであった。
「まぁあなた、顔はいいし、性格も優しいし、悪魔とサキュバスにモテそうな顔はしているから……」
「なんだその悪魔とサキュバスにモテそうな顔って………」
「とりあえず、私の部屋に避難しなさい。おいで」
「………済まない。甘えようか」
差し出された手をにぎりしめる珠希。次の瞬間には、いつぞやお世話になったオスクロルの部屋へと転移していた。
真っ先に目を引くのは天蓋付きのどでかいベッド。前はゆっくりと見る暇がなかったが、また改めて見ると、そのでかさに一瞬目が釘付けになった。
「………うおっ!」
「はーい、いらっしゃ~い」
オスクロルに手を引っ張られ、なすすべもなくベッドへ連れていかれる珠希。そして、後頭部になにやら柔らかいのと接触した共に、オスクロルは珠希の頭を撫でた。
「……最近、眠れてないでしょ?」
「………まぁ」
それもこれも毎回珠希を誘惑する嫁四人に理性が完膚無きまでに崩れ去っていくので、毎夜毎夜悶々な夜を過ごしている。
「今はゆっくり眠りなさい。貴方は、魔王軍の勇者なのだから」
「………オス、クロル…」
オスクロルに優しく頭を撫でられた珠希は次第に目を閉ざしていった。
「……さて、と」
オスクロルは珠希撫でている手とは逆にの手を振るった。
「………あの子は何を考えているのかしら」
その目に映るのは、吸血鬼の少女だった。
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