第29話
「…おはようございます、神田様」
「えっ………」
ローガルデ戦域より、珠希によって救出された神田朔良は目が覚めた途端に、メイド服を着た見知らぬ人がいたので、びっくりして、目を開いたと同時に、今までの事を思い出していた。
(そうだ……私、急に異世界へ連れ去られてそしてーーーーそし、て?)
朔良の記憶では、首に狂化の首輪をされた所で止まっている。幸いかどうかは分からないが、何人もの兵士に陵辱された記憶は残ってなかった。
(あれ………記憶、が……)
「……お困りの中、失礼しますが、体に不調などはありませんでしょうか」
「えっ……と、多分ない、です」
「そうですか。それは良かったです」
と、
「神田様がお目覚めになったので、これより客人を連れてまいります。あまり無理をなさらずにしていてください」
「は……はい………って、え?……消えた……?」
瞬きをした瞬間に、メイドさんの姿が消え、困惑する朔良。そして更にそこへ追い討ちを描けるように客人ーーー美波と珠希が現れた。
「朔良ちゃん!」
「み、美波!?」
もっとも、朔良には美波しか見えなかったが。
珠希の力を借りて転移した美波は、そのまま朔良へと抱きついた。
「朔良ちゃん……ふぇぇ……良かったよぉ…!」
「え?み、美波…?ちょ、……え?だ、誰か説明をーーーーー」
「……それは俺からさせてもらおう」
「ーーーー誰だっけ?」
珠希はコケた。
「…………んー。何となく……本当は2割くらいしか分からないけど、何となく分かったよ。ありがとう、神楽くん」
その後、何故か自己紹介をし、「あー!あなたが美波がお熱になってた珠希くんー!?」となった後に、これまでのことを説明した。これまでのことは、さり気なく質問を交えた結果、覚えていないと判断した珠希と美波がアイコンタクトをして、諸々なことは話さずに、人間軍と魔王軍の関係だけを説明した。
「さて、神田には急には悪いが、これからオスクロルーーー魔王様にあってもらうようになっている」
「うん、分かっーーーって、え?まおう、さま?」
「あぁ、ちょいと失礼するな」
珠希は、布団を剥がして、朔良の膝裏と背中に手を伸ばして、持ち上げた。
「え?ちょちょ!神楽くん!?どうしたの!急にお姫様抱っこなんて、私恥ずかしーーー」
「マリウスじゃなくて悪いが、少し我慢してくれ美波も捕まれ」
「はーい!」
「ちょ!?美波!そんな大胆になって私嬉しいよ!後なんでそこで小野くん!?」
珠希は美波が後ろから抱きついたのを確認してからオスクロルのいる部屋へと転移した。
突然の光でびっくりした朔良は、咄嗟に珠希へと抱きつく。一瞬の浮遊感の後に、光が収まったのを確認すると、先程居た部屋とは違うとこだと気づく。
「……え、私……今ーーー」
「オスクロル、連れてきたぞ」
「お疲れ様、珠希くん。エーテルちゃんもいるわ」
「お久しぶりです、珠希様」
「あぁ、久しぶり」
「ちょ!ちょっと!?私まだ色々と困惑してるんだけど!後あそこの超可愛い美人さんと超エロい美人さんは!?」
「とりあえず座れ」
有無を言わさずに、朔良のために用意された椅子へ優しく座らせられる朔良。予想外にも紳士すぎて若干胸がときめいた。
「………いた方がいいか?」
「当たり前でしょ!」
訂正、胸の高鳴りが少し収まった。
「……コホン、神田朔良さん、だったかしら?」
「は、はい!」
同性でさえ、魅了してしまうオスクロルの美貌と声。そして、なんかよく分からないオーラのせいか、朔良は緊張し、背筋がピーン!と伸びた。
「私がオスクロル。この魔王軍の1番上ーーまぁ魔王なんて呼ばれてるわね」
「は、はい!魔王…ってええええ!」
朔良は、こんな美人さんが魔王なの!?という驚きと、魔王って禍々しい感じじゃないの!?という驚きの悲鳴を上げた。それを見て珠希かまウンウン頷いた。
(分かる。俺も最初はそう思った)
「そして私が元お姫様のエーテル・カリオンといいます。よろしくお願いしますね」
「はい、お姫さーーーーえええええ!」
二度目の悲鳴。それを聞いてクスクス笑うエーテル。
どうやら、ちょっと意地悪をしたようだ。
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他にも『声しかしらない嫁さんと本当に付き合う』や『俺と聖剣と神獣と……』や『夫婦以上恋人未満なカンケイ』、絶賛連載中です。
個人的に1番面白いと思っているのは『俺と聖剣と神獣と……』です。(主人公が)チートなしの努力譚となってます。多分。自分ではそう思ってます。
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